1.正統なDNAを継ぎながらも新しさに満ちる
オーデマ ピゲ
「CODE 11.59 バイ オーデマピゲ オートマティック」(280万円)
2019年に誕生した全く新しいコレクション。正面から見るとラウンドウォッチだが、ケースサイドから見ると立体的。これはラウンドケースの間に、八角形ケースを挟み込んだものだ。八角形ケースは1972年に同社が発表した「ロイヤルオーク」にて生まれ、現代まで同社のアイコンとして受け継がれるもの。このスタイルを新作コレクションに取り入れることで、オーデマピゲのDNAコードを継承するのだ。
しかも新作コレクションでありながら、3針モデル、クロノグラフ、トゥールビヨンなど幅広いラインナップを備えているのも極めて異例だった。ここで紹介するのは最もシンプルな「オートマティック」だが、他のどのモデルも素晴らしい魅力に満ちている。自動巻き、18KWGケース、ケース径41mm。
2.深い知性にアクティブさをプラスした逸品
A.ランゲ&ゾーネ
「オデュッセウス」
310万円
1845年に創業したドイツの名門ブランド、A.ランゲ&ゾーネは、職人による手作業を重んじており、その知的な佇まいに惹かれる人は少なくない。基本的にプレシャスメタルのドレスウォッチのみを製作してきたが、2019年秋に驚きの展開が待っていた。「オデュッセウス」は、レギュラーモデルとしては初となるSSケースを採用。ブレスレットも同素材であり、スポーティなルックスに仕上げている。
ケースサイドの突起は曜日と日付の調整用。防水性能は12気圧を確保しており、アクティブな毎日に対応する。かつてない新作は、ランゲの歴史に新たな1ページとなるのだ。自動巻き、SSケース、ケース径40.5mm。
3.スタイリッシュさを増したステンレススチールの素材感
ベル&ロス
「BR05 ブラック スティール」
55万円
航空計器をそのまま腕に乗せるという大胆なコンセプトから生まれた「BRシリーズ」は、2005年にデビュー。それまでの“ミリタリーウォッチ=武骨”という常識にくさびを打ち込むファッション的なルックスで、高い評価を得る。新作「BR05」は、航空計器の流れを汲むBRシリーズの“角形×丸形”のデザインコードを継承しつつも、ケースとブレスレットを滑らかに連続させることで、都会的な雰囲気を加えた。
SS素材にはヘアラインとポリッシュで仕上げ分けることでメリハリのある輝きを演出し、腕元を華やかにまとめる。ケースサイズも直径40㎜に抑えているので、スーツにも似合うだろう。アクティブに生きるビジネスマンに使って欲しい時計である。自動巻き、SSケース、ケース径40mm。
4.画期的な機構で時計業界に革新をもたらした
ゼニス
「デファイ インベンター」
204万円
機械式時計は、ゼンマイがほどける力を回転運動に変え、歯車を回転させる一方で、脱進機とテンプによって回転速度を制御することで、正確な時間を刻んでいる。この脱進機とテンプという組み合わせは17世紀に天才学者のクリスチャン・ホイヘンスが考案したもので、その方式が現代まで使われている。
ところがゼニスはここをがらりと変えてしまった。時計前面に配置された「ゼニス オシレーター」は、約30個のパーツで構成されていた脱進機とテンプからなる調速機を、1枚のシリコンパーツに集約させたもの。ここが高速振動することで、歯車の回転速度をより正確にコントロールするのだ。しかもパーツが少ないので故障しにくく、メンテナンスも簡単になる。まさに次世代の時計の姿なのだ。自動巻き、Tiケース、ケース径44mm。
5.往年の名作がクォーツ式になって復活
アイクポッド
「デュオポッド」
7万7000円
実業家のオリバー・アイクとデザイナーのマーク・ニューソンが組んで生まれたスイス時計「アイクポッド」は、1994年にデビューするや、その前衛的なスタイリングであっという間に人気ブランドとなった。しかしマーク・ニューソンがアップルの仕事を手掛けるようになってからは、ブランドの活動規模が縮小し、近年は開店休業状態となっていた。ところが2019年に不死鳥のごとく復活を遂げる。
「クロノポッド」
9万2000円
コレクションは2種で、シンプルな2針とクロノグラフ。どちらもクオーツムーブメントを使用するが、もともとこの時計は、スタイルを楽しむもの。となれば、むしろこの価格設定が魅力となるだろう。なお、リ・デザインを担当したのは、ロイヤル オーク オフショアのデザインで知られるエマニュエル・ギュエである。クオーツ、SSケース、ケース径42mmと44mm。
>> [特集]2019年まとめ
(文/篠田哲生)
時計ジャーナリスト・篠田哲生(しのだ てつお)
男性誌の編集者を経て独立。コンプリケーションウォッチからカジュアルモデルまで、多彩なジャンルに造詣が深く、専門誌からファッション誌まで幅広い媒体で執筆。時計学校を修了した実践派でもあり、時計関連の講演も行う。
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