■第3の素材・カーボンの登場
G-SHOCKの初代モデル「DW-5000C」は、ウレタン樹脂を使い、モジュールをケース内で浮かせる中空構造を採用。その圧倒的な耐衝撃構造で世界を驚かせた。1996年にはフルメタルケースで耐衝撃構造を実現した「MR-G」が登場。そして2019年、第3の素材カーボンを用いた新たな耐衝撃構造が誕生した。
裏蓋一体型のカーボンモノコックケースを採用する “カーボンコアガード構造”は、素材の特性を最大限に生かして、シリーズ最高レベルの構造強化と軽量化を両立。ファーストモデル「GWR-B1000」は、タフな航空ミッションに耐えうるパイロットウオッチであり、その理想に叶う完成度をこの新構造で実現した。
この高性能モデルを皮切りに、春以降、続々とカーボン採用モデルが登場。さらに昨秋にお目見えしたのが、カーボン積層ベゼルで軽量化と上質な外観を両立した「MTG-B1000XBD」だ。
カーボンシートとグラスファイバーシートによる積層模様が側面に浮かび上がるデザインは、斬新でありながら洗練された印象も与える。機能やデザイン面でもハイエンドに位置するMT-Gシリーズにふさわしい、新たな機能美を理想の素材カーボンを用いることで手に入れたのだ。
▼理想のタフネスを実現するカーボンの特性
●「硬さ」比弾性率が鉄の7倍
●「強さ」引張強度が鉄の10倍
●「軽さ」比重が鉄の1/4
●「熱変化に強い」急激な温度変化に対応
●「時間に強い」経年変化に耐える
●「変形に強い」寸法安定性が高い
■素材の革新で“36年目からの第一歩”を踏み出す
熱心なG-SHOCKファンであれば、2019年春モデルの登場前にもカーボンを部分的に採用したモデルがあったことを覚えているだろう。しかし、明確に “第3の素材” と謳ったのは、2019年4月に登場したカーボンコアガード構造採用の「GWR-B1000」シリーズから。そして、その後ラインナップを一気に拡大させた背景には「技術面での成熟がある」と、開発に携わったチーフエンジニアの牛山さんは経緯を説明する。
「G-SHOCKの特長である耐衝撃性能と防水性能を高めていく上で、カーボンが非常に有効な素材であることは以前から認識していました。これまで樹脂とメタルがケースの基本素材でしたが、軽さと強さという両者のいいとこ取りをしたのが、カーボンだと言えます」
タフネスウォッチにとって理想的な素材であることがわかった上で、加工技術を検討。ケースや耐衝撃構造というG-SHOCKの核で全面的に採用するために着々と準備を重ねた。
「過去のモデルでもベルトにカーボンファイバーのシートを挟み込んだり、樹脂ケースにカーボンを練り込んでいたりと、部分的に採用してきています。ただ、2019年登場したカーボンコアガード構造やカーボン積層ベゼルは、非常に高度な設計や加工技術が必要です。過去に部分的に採用してきたカーボンの技術を時間をかけて発展させ、高い完成度で応用できたのが、2019年春のタイミングだったのです」
■複雑な工程を経て完成するカーボン積層ベゼル
実際に「MTG-B1000」シリーズで採用したカーボン積層ベゼルは、非常に複雑な製造工程を要する。まずカーボンファイバーとグラスファイバーのシートを交互に重ねてプレス成型し、緩やかな曲面を出してから、加熱して焼き固める。さらにビス穴、リューズガードなどを順に削り出していき、細部の塗装やコーティングを重ねて、ようやく完成に至る。
「デザインの特徴である積層面をそれぞれ均一にするのが難しく、技術の確立には1年半ほどかかりました。カーボンは硬さがあるのできれいに削り出すのも難しい。カシオとしてはG-SHOCKにも精密機器としての正確さを求めるため、妥協せずに技術を高めてきたのです」
こうした苦労の結果、耐衝撃性能と軽さ、そして素材を生かした機能美あふれるデザインが完成。最上位ラインのMT-Gにふさわしい仕上がりとなった。
「G-SHOCKはいろいろな素材に挑戦するのも、ひとつのブランドアイデンティティです。2018年の35周年を経て、新たな第一歩をカーボンの採用で示せたのではと思っています。今後はさらにラインナップを拡充していきたいですね」
本記事の内容はGoodsPress12月号94-95、97ページに掲載されています
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(取材・文/高橋 智 写真/江藤義典 スタイリング/小孫一希)