■タフネスとCMFが一体となることでG-SHOCKは進化する
シーンを選ばず頼れるタフネスと、充実した機能。1983年の誕生時に世界を驚かせたふたつの特徴により、G-SHOCKは長く世界で支持されてきたが、近年はデザイン面でも独創性が目立ってきた。この流れを読み解く鍵となるのが、「CMFデザイン」という言葉だ。
Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)の頭文字からなるこの言葉は、プロダクトデザインの分野で長く用いられてきた考え方を示す。形状だけでなく、表面の付加価値も高めるべく、多角的にアプローチする手法として、欧米を中心に浸透してきた。カシオ計算機でG-SHOCKのデザインに携わる赤城貴康さんは、この考え方が「10年くらい前から日本でもよく用いられるようになってきた」と話す。
「おそらくiPhoneが発売された頃から、CMFをキーワードにデザインを考える動きが広まってきたと思います。G-SHOCKもこの頃から明確に意識し始めました。2008年にミュージシャン参加型の世界イベント『ショック・ザ・ワールド』を初めて開催し、色使いや質感にこだわったモデルを発表。これらが若い世代を中心に支持され、本格的に取り入れ始めたのです」
商品企画を担当する泉潤一さんも当時を次のように振り返る。
「G-SHOCKは幅広いモデルの集合体。樹脂やメタルと展開も多角的です。このCMFによりG-SHOCKブランドの独自性をより強め、世界中のファンに届けたいと考えたのです」
以降、表面デザインが次のステージへと進んでいくのだが、元々G-SHOCKは「CMFデザインの考えと通じる部分が多かった」と赤城さんは語る。
「タフネスに向く素材を開発したり、カルチャーになじむ色を使ったりと、昔からCMFデザインに通じる要素は多かったと思います。そこに新技術が加わり、多彩な表現が可能になりました。現在のG-SHOCKデザインにおいてタフネスとCMFは一体です。商品企画、外装開発、デザイナーが一体となって創作できる体制を作り、各モデルの特性を生かしたCMFデザインを取り入れています」
2019年からはCMFにS(=ストーリー)の考え方も加えた開発も進めている。商品企画で「コンセプトやターゲットをまとめ(=泉さん)」、「商品の背景やイメージ、過程などをデザインで表現する(=赤城さん)」試みだ。誕生から37年を経てなお進化を止めないG-SHOCKの今を理解する上で、CMFデザインは欠かせない要素なのだ。
【DESIGN THEMA:Color】
▼独自のカラーや着色技術で独創的なスタイルを演出
多彩な色の組み合わせで、常識に捕らわれないモデルを発表。メタルタイプではイオン化した金属を蒸着させる表面処理技術 IP(イオンプレーティング)で独創的な表現を実現している。
【DESIGN THEMA : Material】
▼先進の加工技術と素材選びで機能美を生み出す
樹脂に始まり、メタル、カーボンと新たな外装素材を採用して、タフネスを進化。同時にそれぞれの素材特性を活かしつつ、独自の加工技術を用いて、G-SHOCKならではの機能美を表現している。
【DESIGN THEMA:Finish】
▼高度な仕上げ技術を駆使して質感と存在感を高める
特にメタルタイプに顕著で、蒸着処理やDLCコーティングなどにより、実用性と上質さを両立。最新モデルにはレーザー加工を用いて、新たな表現にもチャレンジしている。
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取材・文/高橋智 写真/江藤義典
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