同じく「モンキー」の横型エンジン(元は「スーパーカブ」のエンジン)を搭載し、オフロード走行に対応していたユニークなモデルが、1982年発売の「モトラ」です。前後に大型のキャリアを装備し、アウトドアでさまざまな道具を積み込んで走れるマシンというコンセプトでした。エンジンの最高出力は4.5馬力ですが、トランスミッションは通常の3速に加えて3速のサブミッションを搭載し、登坂能力は約23度という走破性の高さを実現。今の「モンキー125」にも、こんな派生モデルがあったら面白そうですね。
横型エンジン搭載の個性派モデルという意味では、1981年発売の「モトコンポ」も忘れられない存在。小型自動車「シティ」に搭載できるバイクとして、同時に開発されたという逸話を持つモデルです。
四角い箱のような形状で、ハンドルを折りたたんでシートを収納すると、コンパクトカーのラゲッジスペースに収められました。最高出力は2.5馬力でしたが、重量が45kgしかないので近所の足としては十分ですね。こちらも現代の技術で作ってもらいたいところですが、今の法規では折りたたみ式のハンドルが認められていないのが残念です。
このエンジンを搭載したアメリカンも存在しました。1986年発売の「ジャズ」というモデルです。排気量は50ccですが、アメリカンらしい長く傾斜したフロントフォーク、ティアドロップ型タンク、クロームメッキのリアサスやバッテリーケースを採用するなど、本格的な作り込みが目を引きます。リアホイールは量産車としては日本初のミラードホイールにワイドなタイヤを装着するという、原付とは思えないほどの本格装備でした。50ccモデルが売れていた時代だったので、ここまで手を掛けたモデルが出せたのでしょうね。
「モンキー」系の4ストモデルのイメージが強いホンダですが、2ストの本格的なレーサーレプリカもリリースしていました。それが1987年発売の「NSR50」。水冷2ストローク単気筒のエンジンは、このクラスの自主規制値上限の7.2馬力を発生し、当時盛んだったミニバイクレースを席巻しました。もちろん、公道でも原付免許で乗れる“最速”モデルとして大人気。筆者が免許を取って最初に乗ったのもこのマシンでしたが、整備性が素晴らしく良かったことも印象に残っています。1999年に排出ガス規制によって2ストのナンバー付き市販車が姿を消してからも、「NSR-mini」の車名でサーキット専用車は販売が続けられたほど完成度の高いマシンでした。