Z1、VMAXなど伝説的名車揃い!逆輸入バイクの歴史を振り返る

■750cc規制はなくなったものの…

▲1985年式ヤマハ「VMAX1200」(輸出仕様)

750ccオーバーの国内モデル第1号となったのがヤマハ「VMAX1200」。1985年から輸出されていたモデルですが、バブルの好景気もあってかなりの台数が逆輸入というかたちで国内に入ってきていました。その人気に応えるために国内仕様が導入されたわけですが、まだ出力の上限は100馬力という自主規制が存在していたため、最高出力は輸出モデルの145馬力に対して98馬力に抑えられ、高回転で1気筒当たり2つのキャブが動き出すVブーストシステムも非搭載とされます。このため、市場では逆輸入モデルが人気で、国内仕様を見下すような風潮すら存在しました。

▲2004年式ホンダ「CBR1000RR」(国内仕様)

排気量の自主規制が撤廃されてからも、最高出力の上限は規制されたままだったので、逆輸入車のステイタスは高いままでした。2004年に発売されたホンダ「CBR1000RR」は、輸出仕様は最高出力が172馬力なのに対して国内仕様は94馬力。約半分のパワーしかないわけですから、速さを求めるライダーは逆輸入車を選んだり、“フルパワー化”と呼ばれるカスタムに勤しんだりしました。

この最高出力の上限が撤廃されたのは2007年のこと。しかし、2008年式の「CBR1000RR」の最高出力は118馬力。まだ、輸出仕様とは大きな差がありました。これは日本独自の騒音規制と排出ガス規制によるもの。まだまだ、逆輸入車を選ぶ価値があったといえます。

▲2015年式ホンダ「RC213V-S」

そんな状況を象徴するようなマシンが、ホンダが2015年に発売した「RC213V-S」。MotoGPを走るワークスマシン「RC213V」に保安部品を付けて公道走行を可能にしたようなマシンで、2190万円という価格も話題になりましたが、このマシンも国内仕様の最高出力は70馬力という耳を疑う数値でした。レース用のキットパーツを組み込むと215馬力までアップするというギャップにも驚かされましたが、当時の騒音と排出ガス規制に対応しようとすると、そこまで牙を抜かなければならなかったということです。

ハイパワーモデルの足かせとなっていた騒音・排出ガス規制から解放されることになったのは2016年。この年から欧州で導入された環境規制「ユーロ4」に日本も足並みを揃えることになったからです。つまり、欧州仕様とは実質的に出力などの性能差がなくなったということになります。

▲2020年式ホンダ「CBR1000RR-R」

その証拠に、2017年発売の「CBR1000RR」の最高出力は輸出仕様と同じ192馬力となりました。そして、今年発売された「CBR1000RR-R」は何と218馬力。ちょっと極端なんじゃ…と思ってしまう数値です。

▲2020年式ヤマハ「YZF-R1」

そのCBRシリーズのライバルといえば、ヤマハの「YZF-R1」。こちらも先日、最新モデルが発表され、同時に日本での正規販売が復活しました。そう、実はこのモデル、2014年以降は正規モデルではなく逆輸入モデルとして国内では流通していたのです。

ちなみに、最後の国内仕様だった2014年モデルの最高出力は、国内仕様が145馬力に対して輸出仕様は180馬力。こういうマシンを購入する層は当然輸出仕様が欲しいだろうという判断があったのかはわかりませんが、販売はヤマハの逆輸入車を専門に扱うプレストコーポレーションという関連会社が行っていました。

ちなみに、2020年式の「YZF-R1」の最高出力は201馬力。当然、輸出仕様と同じ数値です。そして、このモデルの発表と前後して、プレストコーポレーションは役割を終えたとして25年に渡る業務の終了を発表しています。国内仕様と輸出仕様の差がなくなったことで、逆輸入車という存在が役割を終えたことを象徴するような出来事です。

*  *  *

国内規制が存在することによって価値が生まれ、一時期はステータスにまでなっていた逆輸入車。国際基準に合わせるかたちで規制が緩和されたことで、存在感がなくなってきたことは、ユーザーにとっては喜ばしいことなのかもしれません。ただ、ユーロ規制は年を追うごとに厳しくなり、今年導入される「ユーロ5」によって姿を消すことが予想されているモデルもあります。現在のハイパワー競争も、いつか終わりを迎える日が来るのかもしれません。

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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