■プロボックス=プロのためのタフギア
カスタム例を紹介する前に、プロボックスとはどんなクルマかを軽く触れておきましょう。
2002年7月にカローラバンの後継モデルとして登場したプロボックス。車名が表すように、プロが使う箱型の道具として、他社のビジネスワゴンを寄せ付けない圧倒的な使いやすさから爆発的にヒットしました。ボディはバンモデルとワゴンモデルが用意されました。
特筆すべきは走行性能。後席を倒して荷物を満載にした状態でも、空荷の状態でも、安定した走行が可能。エンジンは小さく絶対的なパワーがあるわけではないのに、常用域でパワー不足を感じることがない。実用的な道具として、完璧な設計がなされています。高速道路を走っていると、たまに追い越し車線をかっ飛ばし続けているプロボックスを見かけます。このことからも安定感はわかるでしょう(真似しちゃダメですよ!)。
2014年8月、プロボックスは大きなモデルチェンジを受けました。トヨタはこのモデルチェンジを“マイナーチェンジ”として扱っていますが、安全基準への対応からプラットフォームをはじめ構造が変わった部分があったり、型式も変更されていることから、媒体によってはフルモデルチェンジとして扱うところもあります。
このタイミングで外観も大きく変更。マイナーチェンジの前後、どちらの顔がいいかは好みが分かれるところです。
【カスタム①】内外装をノスタルジックな雰囲気に!
ハイエースやランドクルーザーを多く扱う老舗ショップ“FLEX”では、2017年からランドクルーザー80、ランドクルーザープラド、ハイエースをリノベーションして販売するRenoca(リノカ)事業を展開しています。
どこか懐かしさを感じるデザインやカラーリングにカスタムしていることが特徴ですが、一般的なカスタムカーがFRPのパーツを交換したりボディの上にパーツを載せたりするのに対し、Renocaは鉄板(今回紹介するEURO BOXは補強入りのFRPボンネット)からオリジナルデザインのものを作っているため、ベース車両の面影を残しながらも、オリジナリティあふれるシルエットを違和感なく実現しているのが特徴です。
プロボックスベースのEURO BOX(ユーロボックス)は2021年1月に発売がスタート。発売前に公開された記事や、著名アーティストがInstagramにアップした写真がバズったので、このスタイルを目にしたことがある人も多いでしょう。
1980年代の欧州コンパクトカーを思わせる丸目2灯のライト、ブラックアウトした横ストライプのグリルは、懐かしさと同時に現代のクルマにはない新しさを感じさせます。グリルにさりげなく描かれた“Renoca”のロゴもいいアクセントに。
デザイナーは、昔の商用車がマーケティングなどにとらわれることなく進化したらどんな姿になるだろうということを思い描きながら作ったと言います。
Renocaは既にカスタムされて店頭に並んだもの以外にも、オフィシャルサイトのシミュレーターを使ってボディカラーやホイール、シートデザインを自分で選んだものを作ってもらうことも可能。
中古車をカスタムするのでベース車両により価格が異なりますが、平成30年式で走行5万kmの場合、参考価格が239万8000円とアナウンスされています。これなら手が届く人も多いでしょう。
シンプルで懐かしいのに、新しい。街から自然の中まで、風景に違和感なく溶け込むはずですよ。
【カスタム②】自分好みの色を選んで世界に一台だけのプロボックス&サクシードに!
大阪府富田林市にあるPapaMama CAR’Sは、初代トヨタシエンタ、シエンタダイス、ヴォクシー&ノアなど、トヨタのファミリーカーをカスタムして販売しています。
その特徴はボディカラー。外装を好きな色にオールペンし、それに合わせてインテリアやホイールなどをカスタムしています。ボディカラーは色見本から選ぶのはもちろん、好きな色をゼロから作ってもらうことも可能。たとえばお気に入りのカップを見せて「こんな色のクルマに乗りたい」とリクエストすることだってできるのです。
家族で便利に使えるファミリーカーをカスタムしているので、これまでカスタムとは無縁だった人が「人とはちょっと違うオシャレなクルマを楽しみたい」とお気に入りのバッグを選ぶような感覚でカスタムを楽しんでいると言います。
そんなPapaMama CAR’Sが最近力を入れているのが、プロボックス&サクシードのカスタム。
「パイクカーの日産 ラシーンが人気だったのを見て『四角いクルマをレトロな雰囲気にしたら多くの人に注目してもらえるのでは?』と思い、2016年頃からプロボックスとサクシードのカスタムをスタートしました」(PapaMama CAR’S 代表取締役 市口慎太朗さん)
プロボックスのカスタムは、アウトドアを意識したリフトアップにブラック塗装したスチールホイールとマッドスタータイヤで無骨な雰囲気に。オレンジ色のウインカーレンズがレトロな雰囲気を醸し出します。グリルのTOYOTAロゴがノスタルジックな雰囲気を強調。
インテリアはさまざまな見本から好きな色のシートカバー、フロアマットを選ぶことが可能。
ベース車の中古車価格により支払い総額は変わりますが、四角いライトの初期型なら120万〜180万円ほど見ておけば大丈夫とのこと。
「プロボックスは初めてクルマを買う人も注目しています。オーナーはクルマ以外に、家やファッションにもこだわっている人が多いですね。ぜひお気に入りの色を選んで豊かなカーライフを楽しんでください」(市口さん)
お客さんの中には、兄弟でプロボックス&サクシードに乗っている人もいるそうです!
■カスタムプロボックス選びの注意ポイント
プロボックスはバンを中心に中古車の流通量が豊富なので、ベース車探しに苦労することはないはず。ただ、もともとがビジネス用途で法人が所有していたものがほとんどなので、運転者は「自分のクルマ」という感覚をもたずに扱っていた可能性もあります。
そういう使い方にも耐えられるように開発されているので機関系の心配は少ないはず。でも荷室はガンガン荷物を積んでキズが多くついていることも。
購入時はそのあたりを中心にチェックして、納得できる状態かを確認しておきたいところ。購入後は荷室フロアにお気に入りの布やマットを敷いてアレンジするのもひとつの手です。
また、バンモデルのリアシートは決して広くないので、あくまで補助的なものと割り切ったほうがいいでしょう。
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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