■機能から生まれたヘビーデューティーなデザイン
2003年のデトロイトモーターショーでコンセプトモデルが公開され、2006年に北米での販売がスタートしたFJクルーザー。もととも北米専売モデルとして開発されたモデルですが、アメリカでの販売がスタートすると同時に日本でも大きな話題になりました。そして、専門店の並行輸入車が高値で取引されたのを覚えている人もいると思います。
社会現象と言ったら大袈裟ですが、この人気をトヨタは見過ごしませんでした。トヨタは急遽日本仕様車の開発に着手します。そしてFJクルーザーは2010年12月に日本で正式にデビューしました。
大きな丸いライト、“TOYOTA”と刻まれたグリル、ホワイトルーフなど、1960年に登場した40系ランドクルーザーをオマージュしたようなデザインは、流麗で都会的なデザインのクロスオーバーモデルが増えた中で、異質に感じるほど目立つ存在でした。ボンネットの横に北米仕様のアンテナを残したのはトヨタの遊び心でしょう。
FJクルーザーの大きな特徴である観音開きのドアはデザイン上のアイコンとしてだけでなく、ショートホイールベース&ショートオーバーハングによるオフロード走破性と利便性を両立させる重要な機能となっています。
インテリアで目を引くのが大型のシフトレバーとトランスファーのノブ。これは真冬に厚手の手袋を着用したままでも操作しやすいようにしたもの。ドアハンドルやヒーターコントロールパネルのダイヤルが大型なのも同じ理由からです。シートには防水・撥水ファブリックを採用。海やゲレンデで濡れたままクルマに乗っても、水や汚れをさっと拭き取ることができます。
これらのことからもわかるようにFJクルーザーの独特なデザインは機能から生まれたもの。だからこそ私たちは魅力を感じるのだと思います。
■デザインだけじゃなく中身も本格オフローダー
シャシーはランドクルーザープラド(120系)と同じ屈強なラダーフレームを採用。これはオフロードの走破性とオンロードの快適性を兼ね備えたもので、ショックアブソーバーもオン/オフ両方の性能を高めるためのチューニングが施されています。
パワートレインは最高出力203kW(276ps)、最大トルク380N・m(38.8kg-m)を発揮する4L V6ガソリンエンジンと5速ATの組み合わせで、駆動方式はパートタイム式の4WDが採用されました。
グレードは基本的にはモノグレードと捉えられますが、ドアトリムをボディと同色にしてクルーズコントロールを標準装備にしたカラーパッケージと、リアデフロックとビルシュタイン製モノチューブショックアブソーバーで悪路走破性を高めたオフロードパッケージも用意されました。
&GP的におすすめしたいのはタフな仕様のオフロードパッケージ。オフロードパッケージには、2012年7月に砂地や岩石路などの路面状況に応じてエンジンとブレーキを自動制御してステアリング操作のみで極低速走行できる“クロールコントロール”が標準装備されました。
■ボディカラーの変遷
FJクルーザーのもうひとつの魅力がカラーリング。プレミアムなクロスオーバーモデルだとパールやブラック、その他の色もシックな雰囲気のものが多くなりますが、FJクルーザーには見ているだけで楽しくなるような鮮やかな色が多数用意されました。
ボディカラーは一部改良でラインナップが変わっているので、ここでその変遷を追ってみましょう。
【2010年11月 デビュー時】
・ホワイト
・ツートーンイエロー
・ツートーンブルー
・ツートーンブリックレッドメタリック
・ツートーングレーメタリック
・ツートーンブラック
・ツートーンベージュ
【2011年8月】
※ツートーンブリックレッドメタリックを廃止
【2011年11月】
・レッドをレッドカラーパッケージに新設定
【2012年7月】
・ツートーンオレンジ、ツートーングレイッシュブルー、ツートーンセメントグレーメタリックを新設定
※レッド、ツートーンイエロー、ツートーンブルー、ツートーングレーメタリックを廃止
【2013年7月】
・ツートーンスモーキーブルー、ツートーンダークグリーンを新設定
※ツートーングレイッシュブルーを廃止
【2014年7月】
・ツートーンイエローが復活
※ツートーンオレンジ、ツートーンダークグリーンを廃止
【2017年9月】
・特別仕様車でモノトーンベージュとなるファイナルエディションが登場
こうやって並べてみると、ツートーンダークグリーンやツートーングレイッシュブルーはわずか1年しか生産されていない希少色です。ツートーンオレンジも2年間しか生産されていません。また、鮮やかなツートーンブルーは初期の頃しか設定がありませんでした。
このことから、何色のFJクルーザーに乗りたいかで、狙う年式や予算の組み方が変わってくることがわかります。
■中古車はプレミア相場が継続中
2021年8月現在、FJクルーザーの中古車は360台ほど流通しています。まだ探すのに苦労するというほどではありませんが、今後この数は間違いなく減少傾向になります。
また生産終了になってから中古車相場は上昇傾向にあり、高年式車は2020年の夏ごろから1年間で70万円程度上昇しています。2021年8月時点での価格帯は200万〜500万円。デビュー時の新車価格が314万〜332万円。走行距離が少ないものや年式が新しいものは新車より高いプレミア相場となっています。この傾向は当分変わらないでしょう。
流通台数が減ると価格がさらに高くなる可能性もあります。その意味でも欲しい人は条件のいい中古車が探しやすい今のうちに購入を検討することをおすすめします。
購入後にカスタムを考えるなら、あらかじめショップがカスタムしたものを探すのもあり。自分の趣味に合うもの、施したいカスタムがすでにされているものが見つかれば、購入後に自分でカスタムするよりお金の面でも手間の面でも楽ができます。
生産期間が短かったボディカラーの流通台数を見てみると、ツートーンダークグリーンは10台流通していて価格帯は300万〜400万円、ツートーングレイッシュブルーは現段階では流通していませんでした。2年間のみ販売されたツートーンオレンジは17台流通していて価格帯は250万〜330万円となっています。
FJクルーザーの中古車相場はまだ上昇傾向が続いています。突然価格が急上昇することは考えづらいですが、購入を検討している人は早めに決断することをおすすめします。
また、FJクルーザーは日本仕様が発売されるまでは並行輸入車が入ってきていました。最近では滅多に見かけることはなくなったものの、これからもたまに中古市場に出てくる可能性はあります。
並行輸入車はトヨタディーラーで整備を受けることができない、パーツ手配に時間がかかるなど、正規モデルとは異なる部分があります。左ハンドル車に乗りたいなど特別な理由がある人以外は日本仕様を買ったほうがいいでしょう。
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<文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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