「昔は缶詰といえば、フルーツ缶や緊急時などの保存用という認識が一般的で、種類やカテゴリーも限られていました」と話すのは、缶詰博士として知られる黒川勇人さん。黒川さんが缶詰にハマるきっかけとなったのが4歳の頃だという。
「家族でキャンプに行った際に、湯煎して食べた五目飯の缶詰が美味しくて。ブリキの中にご馳走が入っていることに衝撃を受けた」のだそうだ。以来、缶詰に魅せられ、今日まで缶詰道を邁進してきたのだという。現在ではバリエーションはもちろん、味も格段にアップしている缶詰だが、そのターニングポイントとなったのが、 2010年に国分が発売した「缶つま」だと黒川さんは分析する。
「当時、業界では300円以上の缶詰は売れないと言われていたんです。ところが缶つまは、高価格だったのにもかかわらず、本格的な料理や味がウケて大ヒットしました」
さらに追い風を吹かせたのが、翌年に発売されたいなば食品の「タイカレー」だ。この頃から調理法や素材にこだわった“グルメ化”の波が到来する。
「100円前後とリーズナブルながら、タイの現地工場で作られた本場のクオリティが味わえるのは衝撃的でした。ロングセラー商品といえるので、お世話になった方も多いのではない でしょうか」と振り返る。
その後も世界初のスイーツ系缶詰「どこでもスイーツ缶」がトーヨーフーズから、ホテイフーズから唐揚げの缶詰が登場するなど、さらなる進化を続けている。
「2018年頃に訪れた『サバ缶』ブームはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。今では有名店とのコラボサバ缶が登場したり、ご当地ならではのサバ缶が販売されたりと、選択肢も広がっています」
一方で缶の素材をはじめ、パ ッケージデザインに凝ったものが登場するなど、商品棚を眺めているだけで楽しくなるような缶詰も多い。このように今後の進化から目が離せそうにない缶詰。
最後に改めて缶詰の魅力を黒川さんに伺った。
「ご馳走が詰まっているところじゃないでしょうか。お手軽で蓋を開ければ、すぐに美味しい料理が食べられる。それが一番の魅力だと思います」
缶詰博士・黒川勇人さん
1966年福島県生まれ。日本缶詰協会公認の缶詰博士として、TV、雑誌などさまざまなメディアで活躍中。著書に『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品 36』(講談社+α新書)など。https://blog. goo.ne.jp/hayatinocans