■ガレージを構えたきっかけはロードキングでした
リモートワークや家族との時間。そんな忙しい日々の中でも、ゆったりと趣味に没頭できる時間がほしいもの。そんな時間にうってつけなのが、ガレージというスペースだ。好きなモノだけをギュッと詰め込んだ大人の秘密基地は、自分を肩書きのないひとりの男に戻してくれる。
ガレージの手前に佇んでいるのは、1965年製のフォード「ファルコンクラブワゴン」。青い車体の向こう側でゆっくりとシャッターが開くと、赤いフロアの上でクロームパーツが輝くハーレーダビッドソン「ロードキング」が出迎えてくれた。壁一面にあつらえた棚には、メイドインUSAのブーツや革ジャンが並び、壁には映画『大脱走』のポスターが飾られている。
そう、このガレージは、オーナーである伊藤さんのアメリカ愛が詰まった大人の秘密基地なのだ。
伊藤さんは「子どもの頃からアメリカの映画やアニメが好きでしたね。そこからブーツ、バイク、クルマなどのアメリカンプロダクトに惹かれるようになったんです」と話す。
このガレージ付き新居を構えたのは2009年のこと。きっかけはその前年に新車で購入したロードキングだったという。
「当時はマンションに住んでいたので駐輪できる場所がなくて。だからバイクを買うことで自らに背水の陣を敷いてガレージを作りました(笑)」
そのガレージで丁寧に整備・保管されてきたこともあり、ロードキングは購入から14年とは思えないほど美しいコンディションを維持している。そこに1年半前から仲間入りしたのが、青いファルコンだ。
直6/3.6Lの大排気量エンジンを搭載した往年のアメリカンワゴンは、3速マニュアル・パワステなし・エアコンなしという昔ながらの仕様。しかし、重すぎるステアリングも、夏は暑くて冬は寒いという少々過酷な車内環境も、彼にとってはこのクルマを駆る楽しみなのだという。
「冬は防寒対策が欠かせませんが、ステアリングが重すぎて運転してるうちに体が温まります(笑)。ドリンクホルダーがないからコーヒーを水筒に入れて持って行ったり、バイクやアウトドアと同じ感覚ですね」
アメリカからブーツを輸入・販売する代理店を営んでいる伊藤さん。展示会やアウトドアイベントに出展する際は、ファルコンに商品を載せて現地入りすることも珍しくない。アイコニックなファルコンの存在は、来場者からも人気だという。また、クルマやバイクのメンテナンスだけでなく、ブーツの手入れも伊藤さんが大事にしているガレージ時間だ。
「アメリカ出張のたびに現地のアパレル店や雑貨屋を回るのが楽しみで。早く自由に行き来できる時代が戻るといいですね」
出張で頻繁に訪れていたというポートランドに思いをはせながら、着古したTシャツでブーツを磨く伊藤さんなのだった。