ハードウェアとして全方位に進化したダイハツ「ムーヴ キャンバス」【島下泰久の車事放談】

■趣きの異なるふたつのタイプを設定しユーザー層の広がりにも対応

いわゆる軽ハイト系ワゴンの定番的存在であるダイハツ ムーヴの派生車種として2016年に登場したムーヴ キャンバスは、この6年間の販売台数、実に38万台とダイハツ自身の予想をも上回るヒットとなりました。人気のポイントは、まずはその愛らしいルックス。更には、それまでタントのようなスーパーハイト系と呼ばれるモデルでしか選べなかった両側スライドドアを、ハイト系として初採用したことも支持に繋がりました。

そんなムーヴキャンバスがフルモデルチェンジ! でも正直、見た目は「ホントに変わったの?」というくらい従来のイメージを踏襲しています。とは言え、よく見れば顔つきは洗練されていますし、サイドやリアのウインドウが寝かされて、従来よりもパーソナルカーらしさは強まっていますね。

最近はこういう新型車、多いですよね。要は変えるために変えるのではなく、愛されているのだから無理に違ったものに変える必要はないというわけです。

一方、予想以上に売れたということは、ユーザー層も幅広く見なければいけません。当初のイメージとしては母と娘の共有が打ち出されていましたが、実際は母と息子、父と娘といった組み合わせも多かったそうです。

▲明るいパステルカラーとホワイトのツートーンカラーが特徴のストライプス。インテリアのシートカラーもツートーンで、明るく優しい雰囲気を演出する

▲ムーヴ キャンバス セオリーG(スムースグレーマイカメタリック)

それに対応するのが、まずはデザイン。初代の延長線上にあるツートーンカラーの「ストライプス」に加えて、モノトーンで各部にクローム加飾をあしらった大人っぽい「セオリー」が設定されました。今回、メインで紹介しているのはコレ。雰囲気、ずいぶん違いますよね。

▲セオリーのインテリアは、シックで落ち着いた印象。単色のボディカラーにメッキモールの組み合わせのエクステリアと相まって大人の雰囲気を醸している

インテリアもブラウンとネイビーというこれまた洒落たコーディネートとされています。シート表皮は新開発のファブリック。そしてステアリングやシフトノブには本革が奢られるなど、軽自動車への先入観を覆す、上質な仕立てになっています。

 

■しなやかでコシのある乗り味に

そしてハードウェアでは、新たにターボエンジン搭載車が設定されました。特に男性陣は欲しがるよねと思いましたが、実は以前からユーザーからの要望、多かったそうです。トルクがあれば上り坂でエンジン音が唸ったりしないですからね。

▲今回のフルモデルチェンジで新たにターボモデルが設定され、走りもレベルアップ。セオリー、ストライプスのどちらでもターボをチョイスできる

基本骨格には大幅な進化を果たしたDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)が用いられ、50kgの軽量化も実現。電動パワーステアリングの戻り側の制御見直し、サスペンションのソフト過ぎない設定などによって、しなやかでコシのある乗り味が目指されています。実際、乗ってみて感じるのは、最近のダイハツ車では希薄だったしっとり上質なテイスト。それこそタントなどより背が低く、軽い分、素性がいいのでしょう。これなら酔いやすい人も大丈夫なはず!

▲「ホッとカップホルダー」

機能にも触れておきましょう。室内ユーティリティを高めているのは、42℃を2時間保つ「ホッとカップホルダー」。リアシート座面下に設けられた「置きラクボックス」は、荷物を持ったまま、片手で展開できるようになっています。この辺りのきめ細やかさはさすがです。

▲「置きラクボックス」

持ち前の使い勝手に磨きをかけ、ハードウェアとして全方位に進化したというだけでなく、ユーザー層の広がりに応えた新たな世界を提示した新型ムーヴキャンバス。きっと皆さんにとっても今まで以上に注目の1台になったのでは?

<取材・文/島下泰久>

モータージャーナリスト 島下泰久
厄年はとうに過ぎたが、ギョーカイにお いてはいまだ“新進気鋭”のモータージャーナリスト。多角的な視点を持ち、さまざまな事象を自分なりに咀嚼できるまで徹底的に調べ上げた上で原稿を書く。そのため文章が分かりやすいと各方面から引っ張りだこ存在だが、睡眠時間とプライベート、メンタルは日々削られまくっ ている神奈川県生まれの49歳

※2022年9月6日発売「GoodsPress」10月号128-129ページの記事をもとに構成しています

>> 【島下泰久の車事放談】

 

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