「希少といっても、150GSという人気モデルに押されて2年しか生産されなかった不人気モデルなんですけどね(笑)」
元々は音楽好きで、レコードジャケットで見かけたベスパ憧れを抱くようになったという伊津美さん。18歳で解体業者から3万円で入手したベスパが彼のバイクライフの原点だったという。やがて自動車整備士として働くうちにスポーツライディングに開眼。ドゥカティやMVアグスタなど、イタリアンメーカーのスーパースポーツバイクを好んで乗り継いできたそうだ。
しかし今から3年前にそれらを手放し、引き換えに手に入れたのがこのビンテージのベスパ。峠やサーキットを好んで走っていた伊津美さんだが、いまは小さな愛車で三浦半島や房総半島の下道を巡るような近場のツーリングが何より楽しいと語る。
「現代のバイクって、当たり前ですけど寸分の狂いもなく設計されてますよね。でもこの時代のベスパって、よく見るといろんな所が歪んでいたりと、工業製品なのになぜかハンドメイド感がある(笑)。そのせいか走りや挙動が何だか生き物っぽくて、
そこがまた官能的なんです。下道をのんびりツーリングするのも楽しいし、タバコを買いに近所をちょっと走るだけでも気分が上がりますね」
そんなビンテージバイクだからこそ、こまめなメンテナンスの他にもう一つ伊津美さんが気を遣っていることがある。
「なるべくバイクが持つ世界観を壊したくないので、乗るときはシンプルでローテクなジャケットを着たり、ビンテージのヘルメットを取り寄せたりと、1950年代のクラシックな装いを意識してます。ちょっとコスプレっぽいかもしれませんが、あえて時代を逆行する楽しさを味わってます(笑)」
自動車整備士時代に板金や塗装の技術も修得し、バイクの整備はすべて自分で行っている。いまではその腕を信頼するべスパ仲間から、修理やカスタムの相談を受けることも多い。
「もっと広いガレージを作ればよかったです」と笑いながら、今日も充実した表情で伊津美さんはたくさんのビンテージベスパに囲まれている。
伊津美 淳さん
さまざまなスーパースポーツバイクを乗り継いで3年前にベスパ150VB1Tに原点回帰。あらゆる時代のベスパに精通し、オーバーホール・板金・塗装も自分で手掛けている
※2022年9月6日発売「GoodsPress」10月号104-105ページの記事をもとに構成しています
<文/GoodsPress編集部>
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