2列目の快適性が大幅アップ!トヨタ「シエンタ」【島下泰久の車事放談】

■機能や実用性が格段に進化した日本を代表するコンパクトミニバン

コンパクトカーの運転しやすさにミニバンの利便性をプラスしたトヨタ最小3列シートミニバンとして、2003年9月に登場した初代モデル以来、ファミリーに厚く支持されてきたシエンタがフルモデルチェンジ! 今回が通算3世代目となります。

「これまで以上に日本の家族の生活に寄り添い、安心、快適な毎日をサポートする」と謳う新型シエンタは全高こそ20mm拡大されているものの全長、全幅はともに先代と変わらず、いわゆる5ナンバーサイズをキープしています。同じトヨタのノア/ヴォクシーが新型で3ナンバーサイズに成長しただけに、日本の道路事情に最適な5ナンバーサイズの3列シートミニバンは、シエンタだけとなったのです。

それで責任感が高まったというわけではないでしょうが、新型はサイズはほぼ不変ながら機能性をより重視。ベルトラインを水平に近づけ、サイドウインドウをしっかりと立てたフォルムとしています。

一方、それでいてコンパクト感、親しみやすさを重視して、ボディは角を丸く落としています。先代ほど大胆ではないですが、確かにツカエて、かつ親しみやすいデザインとなりました。

 

■3列目のシートが2列目下にすっぽり

実際に中身を見ても、温かみのあるファブリックシート表皮のあるファブリックシート表皮に撥水、撥油、更には消臭機能までもたせた室内は、室内高20mm増、前後席間距離は80mm増とし、しっかり広さが増していますし、スライドドア開口部の高さも60mm増とされました。

▲使用される機会の多い2列目の快適性を向上。足もとのスペースだけでなく、前席と後席の温度の偏りを解消する天井サーキュレーターを搭載

さらに、天井サーキュレーターや後席サンシェードといった快適装備も追加。要するに、ミニバンにとって大事な2列目の快適性が、相当高められているのです。

そして3列目は、広くはないですが着座位置高めで座り心地は悪くなく、しかも折りたたむと2列シートの下にすっぽり収まるのがシエンタの特徴。3列目を常用するユーザーならば上級車を検討したほうが良さそうですが、時々使う程度だけど絶対にマストという人にとっては、この使用時、未使用時のバランスは唸らされるところでは?

ちなみに荷室も、高さが20mm増やされ、バックドア開口部高ささも15mm増やされています。地道な改良ですが、実はこれで27インチ自転車でもハンドルを付けたままで積み込むことが可能に。大きな荷室を求める人にもアピールしています。

▲ドライバーズシートの背面にはスマホのポケットが2つ、充電用のUSB端子(Type-C)も2つ装備されるなど、利便性もアップしている

 

■防音性が高まり会話も遮られない

ガソリンエンジン車とハイブリッドの前輪駆動と4WDを用意する新しいシエンタ。その走りは特に快適性が大幅に進化しています。一番効いているのは新採用だという高減衰タイプのルーフパネルシーラーでしょうか。要するにルーフのパネルとフレームの間に減衰効果のあるシーラーを使うことで振動、騒音音を吸収しようというもので、加速中も室内があまり賑やかにならず、会話が遮られないというわけです。

代を重ねるごとにミニバンとしての性能が進化してきたシエンタ。この3世代目はまさに必要なものは全部揃えているという感じですが、一方で機能性ばかり追求するのではなく、先代に続くトンガッたキャラクターも失っていなかったのは朗報と言えるでしょう。

実は初代の時代には一旦、あまり売れないからということで販売を終了したこともあるシエンタ。でも今や、その存在感は盤石と言って良さそうですね。

▲「アドバンストパーク」は、駐車場時などにハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジなどの全操作を車両が支援する(メーカーオプション)

>> トヨタ「シエンタ」

 

>> 【島下泰久の車事放談】

<取材・文/島下泰久>

モータージャーナリスト 島下泰久
厄年はとうに過ぎたが、ギョーカイにおいてはいまだ“新進気鋭”のモータージャーナリスト。多角的な視点を持ち、さまざまな事象を自分なりに咀嚼できるまで徹底的に調べ上げた上で原稿を書く。そのため文章が分かりやすいと各方面から引っ張りだこの存在だが、睡眠時間とプライベート、メンタルは日々削られまくっている神奈川県生まれの50歳

※2022年11月5日発売「GoodsPress」12月号128-129ページの記事をもとに構成しています

 

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