重いけれどタフな焚き火ギア「サンゾクマウンテン」【ガレージブランド名品図鑑】

【ガレージブランド名品図鑑】

ヤワなギアに辟易したキャンパーが手がけただけあり、とにかくタフで使い込むうちに錆びや傷で自分色に変わっていく。いかついけれどどこか繊細なサンゾクマウンテンの製品は、手にせずにいられない魅力がある。

sanzoku mountain
「心地いいキャンプを、そして心地よく焚き火を」をテーマにアイアン製品を開発。SNSで話題となり、2017年にブランド創設。どこか怪しい雰囲気を醸す山賊をブランド名に盛り込み、ほかにはない質実剛健さとユニークな商品名で席巻

 

sanzoku mountain 代表取締役 渡會誠治さん
少年時代に川遊びをしたくて友だちと近所の川に出かけてキャンプをしたのが原風景。「今はローカスギアのテントなどとにかく軽いモノを使っています。うちの製品はとにかく重いんで、テントくらいは軽くないとね」

 

■スキルを総動員して作り上げた他にはないギア

2010年ごろ、山ガールとともにULギアが注目されて以降、キャンプシーンでも長らく軽さは正義とされてきた。その常識を覆したのが2015年ごろのアイアンギアブーム。鈍く光る鉄製ギアは重厚感があり、無骨でワイルドさを演出できると多くのキャンパーが取り入れた。このアイアンギアブームを牽引したのが神奈川を拠点とするサンゾクマウンテンだ。

「いろいろなキャンプギアを使ってきました。けれども、丈夫だと評判のテントでもすぐに壊れるし、焚き火台だって熱で歪む。とにかく長く使えるものがほしかったんです。ないなら作ろうと思ったのがサンゾクマウンテンのはじまりです」

一般キャンパーには手を出しにくい金属の加工だが、幸い、渡會さんは溶接や板金加工など建築にまつわる技術をひととおり習得している。素材はステンレスやアルミではなく、ラフに扱っても破損の心配がなく、傷やうっすら浮いた錆びすらカッコイイ黒皮鉄。資材として扱いに慣れているうえ、比較的安価なのも都合がよかった。

くの字に曲がったランタンハンガー「ショック」、クワガタをイメージしたトング「ザリ」など名作は多いが、同社が生んだ革命的ギアは三角形の耐熱テーブル「デルタス」と、ストレスなく薪が入り直火のようにどこからでも炎がよく見える焚き火台「マウンコス」だ。

焚き火台を語る際、燃焼効率や組み立てやすさに終始しがちだったが、「マウンコス」は長いスリットがストライプ模様に見えるデザイン性の高さと鉄ならではの無骨さが同居した不思議な雰囲気で心をつかむ。炎をエンターテインメントに変える焚き火台の誕生だ。

「機械に通せば設計図通りに鉄板を切ってくれるので、いろんな図柄を作りました。ストライプや和柄のように繰り返す模様は簡単ですが、不規則な模様は手間がかかります。キャンプシーンを描いたときは大変でした」

一方、天板を三角形にした「デルタス」は、焚き火台をまたぐように置けるので五徳として使いやすく、焚き火台のそばに置くにも勝手がいい。

今後の展望は?という問いにニヤリとした渡會さん。

「最近、大型バイクの免許を取得しました。若い頃に取得し損ねて、ようやくね。やっぱり自分が使いたいモノを作るのがサンゾクマウンテンだから、次はバイクで運べるモノかな」

キャンプシーンを席巻したサンゾクマウンテンの次なる挑戦、その発表が楽しみだ

 

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