日本に誕生した「ルート66」のアメリカンダイナー【狭小秘密基地拝見!】

■バイク&クルマ好きが集まる小さなアメリカ

石川さんが、満を持して開いたカフェの内観がこちら。

店名の「ARIZONA ROUTE66」は、彼が実際に何度かルート66を走っているうちに、特に心惹かれたのがアリゾナ州だったことに由来する。カフェ店舗の設計を依頼する際に、石川さんはルート66を特集した雑誌に掲載されていたダイナーの写真を見せて「こんなイメージに憧れている」と伝えていたのだという。ところがカフェを開業してから数年後、ひょんなことからその写真のダイナーの所在地が偶然にもアリゾナ州ウィリアムズという街だったと知る。

▲カフェの外観が忠実に再現された絵は、同じくルート66を愛するイラストレーター・GAO西川氏によるもの

「そのダイナーがどこにあるのか、当時は知りませんでした。ルート66は8つの州をまたいでいて全長が3700km以上もあるのに、たまたま店名にしたアリゾナ州にあったことに運命を感じましたね」

バッファロースカルが見下ろす吹き抜けの店内には、石川さんが長年買い集めてきたアメリカ雑貨が至るところに飾られている。カウンターの上には大きな一つ星のアリゾナ州旗。店主のルート66愛とこだわりに満ちた空間に、自家焙煎コーヒーの豊かな香りが立ち上る。

▲店内にもたくさんのミニカーをディスプレイ。シボレー3200に乗るようになったことをきっかけに、ピックアップトラック関連のグッズも増加中だ

そしてもうひとつ石川さんがどうしても実現したかったのが、壁一面に誂えた書棚だという。

「私はよく言うとモノ持ちがいい、悪く言うとモノが捨てられない性分なんです。この書棚には、これまで愛読してきた趣味の雑誌や書籍を揃えました。バイクやクルマ、アメリカンカルチャーが好きなお客さまに手に取ってもらって、昔を懐かしんでもらいたいですね」

古いものでは石川さんが高校時代に購読していた、53年前のバイク雑誌も並んでいるというから驚きだ。

▲知り合いの店から譲り受けたジュークボックスは、修理の末に現在も現役で稼働中。100円で2曲セレクトできる

現在は週末のみの営業ながら、コーヒー豆を自家焙煎したり、ハンバーガーのパテやスープなどの軽食もすべて一人で手作りしているというこだわりぶり。手先が器用で研究熱心なところは、都内で歯科医師として長年働いてきたキャリアが関係しているのかもしれない。

「歯科医と患者さんという関係ではあまりプライベートなことを話さないし、長年通っていただいても親しくなることはありませんでした。でもカフェのマスターとお客さまなら、初対面でも趣味のバイクやクルマの話で盛り上がれますし、仲良くなれるのがうれしいですね」

そんなマスターとの会話を楽しみに、次の週末も木更津の「小さなアメリカ」には、アメ車やバイクが集まるのだ。

ARIZONA ROUTE66
住所:千葉県木更津市真舟3-4-2
営業日時:土・日のみ(12:00〜21:00)
木更津市内の住宅地にありながら、ルート66のロードトリップ気分が味わえるカフェ。石川さんが歯のメンテナンスを手がける「White Horse Dental Office」も併設している

 

▼店内には石川さんが買い集めた雑貨がいっぱい

テンガロンハット、トグル付きバッグ、ガンホルダーなどの雑貨はアメリカでルート66を旅しながら買い集めたもので、カウボーイの質流れ品だという。手彫りで複雑な装飾が施されたサドルもアメリカで購入。このサドルの購入を機に石川さんも趣味で乗馬を始めるように。

※2024年2月6日発売「GoodsPress」3月号66-69ページの記事をもとに構成しています

>> 特集【狭小秘密基地拝見!】

<取材・文/中田美幸 撮影/山岡和正>

 

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