【2025年人気アイテム先取り予測】
時計を動かすエンジンである「ムーブメント」は、デザインと並んで時計選びの重要なポイントだ。ムーブメントの良し悪しは時計のクオリティに直結し、使い勝手にも大きな影響を与える。そのため、多くの名門ブランドはムーブメント開発に力を注ぎ、時計の進化を追求している。
こうした新型ムーブメントの開発には膨大な時間とコストがかかるため、ムーブメント自慢の時計はどうしても高価になる傾向がある。それでも、高品質でありながら手頃な価格を実現した、ムーブメントに自信を持つ時計も存在する。
ここで注意したいのは、必ずしも機械式ムーブメントだけが良質なムーブメントの“正解”ではないということだ。一般的に安価と思われがちなクオーツ式ムーブメントにも、技術的に優れたキャリバーは存在するし、オールドスクールな手巻き式ムーブメントも現代的に進化している。また、ユーザーの使い勝手を向上させるロングパワーリザーブ化や耐磁性能の強化といった機能も注目に値する。
結局のところ、“高品質なムーブメント”とは、ユーザーフレンドリーなムーブメントのことなのだ。時計選びでは、性能と使い心地を両立させたムーブメントに注目したい。
監修・執筆/篠田哲生
男性誌の編集者を経て独立。コンプリケーションウォッチからカジュアルモデルまで、多彩なジャンルに造詣が深く、専門誌からファッション誌まで幅広い媒体で執筆。時計学校を修了した実践派でもあり、時計関連の講演も行う。
【1本目】機能と美の融合。年差±5秒の超精密時計
シチズン
「ザ・シチズン AQ4091-56M」44万円
シチズンが誇る年差クオーツは、時間をかけて厳選された良質な水晶振動子を採用し、さらに温度変化による振動のズレを補正するため、ICにプログラムが組み込まれている。内部センサーが温度を監視し、正確に補正を行うことで、一年間の誤差はわずか±5秒という驚異的な精度を実現している。この高度な技術を、光発電技術「エコ・ドライブ」で駆動させている点も驚きだ。
高精度クオーツの最大のメリットは、正確な時間が常にわかることだ。忙しいビジネスマンにとって、一分一秒も無駄にできない場面は多い。そのため、「ザ・シチズン」は時間の価値を知る人々から高く評価されている。
しかし、「ザ・シチズン」の魅力は、単なる機能性だけにとどまらない。このモデルでは、土佐和紙を藍染めしたダイヤルを採用。光を透過しながらも、美しい表情を生み出す独特の質感が特徴だ。機能的でありながら、感性を揺さぶるデザインも楽しめる、まさに理想の一本だろう。
>> ザ・シチズン
【2本目】時計好きが唸る! 語れるポイント満載な1本
HAMILTON(ハミルトン)
「カーキ フィールド マーフ オート 38mm」13万6400円
機械式ムーブメントの実用性を大きく左右するのは、パワーリザーブ、つまり連続駆動時間である。駆動時間が長いほど、動力ゼンマイが発するトルクが安定しやすく、高い精度を維持できる。
さらに、長い持続時間を備えた時計であれば、金曜の夜に帰宅して時計を外し、休日を家でのんびり過ごしても、月曜の朝まで正確に時を刻み続ける。これは、ユーザーにとって大きなメリットとなる。
しかし、持続時間を長くするには、動力ゼンマイの体積を大きくする必要がある。そのため、人気のSF映画をモチーフにした「カーキ フィールド マーフ オート」に搭載される自動巻きムーブメントH-10の優秀さには驚かされる。
標準持続時間は80時間を誇りながら、ケース径は38㎜という好バランスを実現している。カレンダーのないシンプルなデザインながら、語るべきポイントが多く詰まった時計である。
>> HAMILTON
【次ページ】腕時計の出来栄えを左右する高品質ムーブメントが揃い踏み▶
- 1
- 2