【3本目】機械式腕時計の真髄を堪能。グランドセイコーが贈る「巻き上げ」の美学
Grand Seiko(グランドセイコー)
「SLGW003」152万9000円
機械式ムーブメントには、自動巻き式と手巻き式の2種類がある。自動巻き式のメリットは、着用している限りゼンマイが常にフル巻き上げ状態を保ち、安定したトルクを発揮できる点にある。
一方、手巻き式は定期的にゼンマイを手動で巻き上げる必要があるため、手間だと敬遠する人も少なくない。
しかし、グランドセイコーはこの「ゼンマイを巻き上げる」という行為に注目した。Cal.9SA4は80時間というロングパワーリザーブを実現しているが、その分ゼンマイを巻き上げる際の感触はやや重め。しかしながら、この重みが手巻き時計ならではの良好な操作感を生み出している。
また、ゼンマイの巻き戻りを防ぐ「コハゼ」というパーツには、山間部に多く生息する鳥「セキレイ」の姿を模しており、巻き上げ時にはセキレイがついばむような動きを見せる。このディテールが、操作に楽しさを添えている。このモデルは、ムーブメントを眺めながらゼンマイを巻き上げ、時計との対話を楽しむためのもの。手巻き時計ならではの深い味わいを堪能できる逸品である。
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【4本目】視覚で楽しむ時計の時間。ロンジン独自のパワーリザーブ機構が生む表情の変化
LONGINES(ロンジン)
「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」59万5100円
時計にはさまざまな付加機構が存在する。最も一般的なものはカレンダー機構だが、動きを楽しめる機構として挙げられるのが「パワーリザーブ表示」だ。
この機構は動力ゼンマイの残量を視覚的に示すもので、実用性だけでなくデザイン面でも重要な役割を果たしている。ブランドごとに設置位置やデザインが異なるため、ダイヤルの印象を大きく左右する要素にもなる。
本モデルは、二重回転ディスクを用いたユニークなパワーリザーブ表示を搭載している。外周にはムーブメントの残量を示す目盛りを配し、内側にはパワーリザーブインジケーターを配置して残量を正確に読み取れる仕組みだ。中央にパワーリザーブを配置することで、刻一刻と変化するダイヤルの表情を楽しむことができる。
搭載されたムーブメント「Cal.L896」は、モノクリスタルシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、約72時間のパワーリザーブを誇る高性能ムーブメントである。しかし、このモデルの真価は、その技術だけにとどまらない。精巧な機構が生み出す、常に変化し続ける一期一会のダイヤルの表情こそが、この時計を唯一無二の存在たらしめている。
>> LONGINES
【5本目】耐磁性&超ロングパワーリザーブを誇るオリスの新境地
ORIS(オリス)
「アクイスデイト キャリバー400 アップサイクル」63万8000円
1969年にセイコーが次世代ムーブメントとして発表したクォーツ式ウォッチは、時計業界に革命をもたらし、機械式ムーブメントは一気に時代遅れと見なされるようになった。そんな中、機械式時計の価値を信じ続けた数少ないブランドの一つがORIS(オリス)だ。
1904年の創業以来、手の届きやすい価格で良質な時計を作り続けてきたオリスは、クォーツ式に流されることなく、機械式時計にこだわり続けた。この姿勢は、「価格以上の価値を提供したい」というブランドの信念を如実に物語っている。
価格を意識しつつ汎用ムーブメントを多用する一方で、オリスはブランドのアイデンティティを体現する自社製ムーブメントの開発にも注力している。代表的なCal.400は、5日間のパワーリザーブ、耐磁性能、そして10年間のメンテナンスフリーを実現し、ユーザーにとって大きなメリットを提供している。
また、本モデルにおいては、収集された海洋プラスチックをアップサイクルし、美しいダイヤルとして再利用。環境意識とデザイン性を兼ね備えたこのモデルは、ムーブメント、デザイン、ブランドの理念が理想的に融合した時計といえる。
>> ORIS
<画像提供/CITIZEN、Grand Seiko、HAMILTON、LONGINES、ORIS>
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