【素朴なギモン】柿の種にはどうしてピーナッツが入っているのか?

「それには諸説あるんです。ひとつには、東京の外国人向けホテルのバーで、おつまみとして柿の種とピーナッツと合わせてお出ししたという説があります」

なるほど。都会の高級なおつまみとして誕生したという説がひとつ。また、豆屋さんがピーナッツを販売する際、ピーナッツが湿気ないように柿の種やあられを混ぜたという説もあるそう。そして、地元で自然発生的にブームになったという説もあるのだとか。

「当時はおせんべいはすべて量り売りで、創業当時の亀田製菓でも、本社の近くに直売所があり、おせんべいや柿の種と一緒に、ピーナッツも量り売りしていました。その際、直売所で店番をしていた創業者の奥さんが、量り売りしていた柿の種にピーナッツを混ぜてみたら、お客さまに“食べ合わせがいい”と評判になったといいます」

確かに、一度食べればくせになる絶妙なマッチング! 柿の種を買うときはピーナッツも一緒に…となっても不思議ではありません。ピーナッツ入りの柿の種は案の定、好評を博し、売り上げは一気に倍になったそうです。そのピーナッツの比率も、現在の“6:4”に落ち着くまでには変遷を重ねているのだとか。

「当時の柿の種とピーナッツの比率は、重量で言うと“7:3”でした。1960年代は、ピーナッツは高級品だったんです。その後、お客さまからピーナッツをもっと入れてほしいという声をいただき、一時は“5:5”までピーナッツを増やしました。しかし不思議なもので、なぜか売り上げが下がったんです。やはりバランスがあるんですね」

過去 1977フレッシュパック柿の種

ピーナッツ入りとなった柿の種は、まだまだ進化を続け、1977年、食べやすい個包装の6袋入が登場。その頃の世の中はアウトドアブームで、さまざまなシーンに持ち運べる小分けパックは便利だと、また売り上げを伸ばしていきます。

もうひとつの転機になったのが、1988年から1993年にかけて、ドライビールが誕生したことによる“ビール戦争”。

「柿の種とビールの相性の良さから、ビール会社さんが販売促進でビールに付けたり、当社も“ビールに合う”などのキャッチコピーを使ったりした結果、それまではおやつとして認知されていた柿の種は、ビールのおつまみとして定着していきました」

この5年間で、柿の種の売り上げはなんと180%アップを遂げたそう。その後も2003年にピーナッツの製法が見直されるなどでさらに美味しさを追求し、50年以上の歴史を誇る定番商品に成長していきます。柿の種の方も、50年も経てば味は変わっているのでしょうか?

「誕生からずっと同じ味です。柿の種というものは、ピリッと辛くてツヤツヤしていて、中が空洞でカリッとしている。そこは今後も譲らず、守っていきたいところです」

販売中 38g亀田の柿の種ミルクチョコ

しかし柿の種は味を変えないからといって、挑戦しないというわけではありません。いつの間にか定番の仲間入りをしたチョココーティングされた柿の種など、コラボレーションなどで拡がったフレーバーのバリエーションは今や50種以上!

お土産亀田の柿の種とレギュラー 他 集合

ご当地シリーズもおみやげとして人気を呼んでいます。「柿の種はみなさまに愛されているお菓子なので、尖った味はなかなかできないんです」と言いつつも、ご当地シリーズは「みかん味」「たこ焼き味」「讃岐うどん味」など、なかなかパンチの効いたラインナップ!中でも和歌山県の「ぶどう山椒味」は再販されるほどの人気です。

米国 カメダクリスプス (1)

米国 カメダクリスプス (2)

米国 カメダクリスプス (3)

人気は日本国内にとどまりません。「亀田の柿の種を世界中の人に食べてもらいたい」という思いから、2008年にはカリフォルニアに「KAMEDA USA」を設立。2011年までは「KAKINOTANE」として販売していましたが、「Kameda Crisps(カメダ・クリスプス)」に改名します。

「お米はもともとヘルシーなイメージがあり、その頃アメリカではグルテンフリーがブームになっていたことから、2013年にカメダクリスプスをグルテンフリー化しました。グルテンフリー売場に置いていただけるようになったことから、健康志向の方のおやつとして広がりを見せています」

ちなみに日本のものより3倍ほど辛いそうです。

ギネス 20161102-2 082

「お客さまに新しい話題や楽しい話題を提供するのが使命だと考えています」という柿の種の挑戦はそれだけにとどまりません。2016年には発売50周年を記念し、50cm(正確には55.4cm)の世界最大の柿の種を作成!

ギネス 20161102 206

これは体積で通常品の約3000倍の大きさ! 11月2日、見事ギネス世界記録に認定されました。

「50年と言わず、100年続くお菓子にしていきたい」と熱く語ってくれた広報チームの平野さんのお言葉通り、大きな夢が形になったような柿の種です。

柿の種とピーナッツが出会って50年。これは人間で言えば金婚式!お祝いにふさわしい見事な記録ですね。

>> 亀田製菓

 


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あけちまりこ/ライター

編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。雑誌・ウェブ等で幅広く活躍し、寝る間もないほど売れっ子(になりたいと思っている)。趣味で株式投資をしており、日経平均が下がると表情がやや曇ります。映画と旅行とプロレスが好き。

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