コンパクトなだけではスマホと同じ。こだわり派の旅カメラとしては①精彩な写真が撮れる1.0型以上の「大型センサー」、②ボケ味を生かせ手ブレも防げる「明るいレンズ」③レンズ交換不要の「レンズ一体型」の3つの条件を備えたカメラを選んだ。
荷物を少なく、軽くしたい派の「高性能コンパクト」
レンズやセンサーのサイズなど、画質にこだわりながら、ポケットに入るくらいのコンパクトさで、ズーム撮影もしたい。そんなワガママな願望に応えてくれるのが、ソニーとパナソニックのコンパクトデジカメだ。
【とにかくコンパクトで高画質なら「ソニー サイバーショット RX100 Ⅳ」】
●コンパクトなポケットサイズ
●24-70mm相当F1.8-2.8の明るいズームレンズ
●4K動画撮影ができる(最長5分)
コンデジでは大型の1.0型センサーを採用する人気シリーズの最新モデル。W101.6×H58.1×D41mmのまさに手のひらサイズで、24-70mm相当F1.8-2.8の「ZEISSバリオ・ゾナーT*」を搭載。実勢価格12万円前後。
明るいレンズは、有効約2010万画素というセンサーの解像感を十分に生かせる。液晶モニターが上に180度、下に45度、角度を変えられるチルト式なので、自撮りも簡単。風景から記念撮影まで、納得の高画質を手軽な操作で得られる。収納式の電子ビューファインダーを搭載するため、日差しが強い時やじっくりと撮影したい時に重宝する。
価格は10万円オーバーのため手が出ない、という人もいるだろう。ほぼ同じサイズの歴代モデル、RX100、RX100ll、RX100 lll(いずれも併売されているため入手できる)という選択肢もある。個人的にはlll型以降の電子ビューファインダーと明るいレンズは必須だが、液晶モニターで十分という人もいるだろう。
また4Kは最長5分のクリップ動画であることも確認しておきたい。一方でスローモーション撮影ができるため、旅の思い出を新鮮な動画として残すこともできる。
実勢価格はRX100が4万4000円、同llが6万8000円、同lllが10万円前後。4K動画が撮れない、レンズが暗い、液晶モニターが固定、ビューファインダーがないなど、それぞれ最新モデルよりは機能的に劣るが、写りはひけをとらない。ソニーのサイトで比較することができるので、検討してみたい。
【ボケ味重視で万能型なら「パナソニック ルミックス LX100」】
●1型より大きな4/3型センサーを採用
●24-75mm相当F1.7-F2.8の明るいズームレンズ
●マニュアル撮影がしやすい
●4K動画撮影ができる
明るいレンズは24-75mm相当でソニーとほぼ同じスペック。有効画素数は1280万画素だが、最大の特徴は1型より大きな4/3型センサーを採用していること。レンズ交換式一眼カメラにも使われるセンサーは、よりレンズの特性を生かした柔らかく滑らかなボケ味が目を引く。画素数はこれで十分だと感じさせられる。実勢価格は7万2000円前後。
シャッタースピードや露出補正のダイヤル、絞りリングを備え、直感的にマニュアル操作を楽しめるところも、特徴のひとつ。
旅先で気になる被写体を見つけたら、自分なりの画作りを追求しながら、じっくり撮影できるのだ。ただしコンパクトさではソニーに及ばない。ポケットに気軽に入れて、というわけにはいかないだろう。
4K動画の撮影機能まで搭載している点にも注目したい。4K対応テレビが増えてきた今、旅の光景を高精細な映像で振り返るのは、それほど珍しくないこと。この小ささで一台二役をこなせるのは、ありがたいことだ。
高倍率ズームモデルなら、幅広いシーンを1台でカバーできる
手軽なスナップショットやポートレートだけでなく、遠方にある景色もダイナミックに撮影したいのなら、やはり高倍率ズームモデルに注目。
最近は400mm相当で撮影できるモデルも珍しくなく、デジタル一眼+同等の望遠レンズの組み合わせと比べると、コンパクトさは圧倒的だ。それでいて明るいレンズや1.0型以上のセンサーを搭載するなど、実に使い勝手がいいカメラに仕上がっている。
【高倍率ズームが欲しいなら「キヤノン パワーショット G3 X」】
●24-600mm相当F2.8-5.6ズームレンズ
●防塵防滴仕様のボディ
●外付け電子ビューファインダーを装着可能(別売)
有効画素数約2020万画素の1.0型CMOSセンサーと高倍率ズームレンズを組み合わせたモデル。高性能コンパクトとして長く支持されてきたGシリーズらしく、最新の高性能エンジン「DIGIC6」を採用し、解像感やノイズの少なさが際立った写真が撮れる。
また、操作感覚は一眼レフのEOSシリーズに近いため、キヤノンユーザーは使いやすいと感じるだろう。実売価格は電子ビューファインダーなしで9万円前後。
ズーム撮影時に被写体がフレームアウトしないようサポートするという、高倍率ズームモデルならではの機能に加えて、防塵防滴仕様であることも特徴。アウトドアレジャーや登山などに使うなら、この機種が候補となる。
ただし電子ビューファインダーは別売となるため、じっくり撮りたい人は電子ビューファインダー付き(10万円前後)購入したほうがいい。
【じっくり撮りたい、4Kも撮りたいなら「ソニー サイバーショット RX10 Ⅱ」】
●24-200mm相当F2.8ズームレンズ
●4K動画撮影、スローモーション撮影が可能
●電子ビューファインダー内蔵
●防塵防滴仕様のボディ
24-200mm相当とズームは他機種に劣るが、全域F2.8の明るさは捨てがたい。どのズーム位置でも絞りを気にせずに撮影できる。電子ビューファインダーを内蔵しているため、よりじっくりと撮影したい人は留意しておきたい。ファインダーが外付けだと、ぶつけた時の破損が心配な人もいるだろう。実勢価格は16万3000円前後。
また、新開発の積層型CMOSセンサーにより、高速シャッターや約14コマ/秒の連写、フルHD動画と1700万画素の静止画同時撮影など、幅広いシーンでシャッターチャンスを逃さず撮影するための機能が充実した。
こちらも防塵防滴仕様なので、海や山でも頼りになるカメラだ。4K動画撮影機能(最長29分程度)も備えるため、美しいボケ味を生かした動画を残すこともできる。なお、スローモーション撮影も可能だ。
【4K動画が撮れる万能型なら「パナソニック ルミックス FZ1000」】
●25-400mm相当F2.8-4.0ズームレンズ
●4K動画から約800万画素の静止画を切り出せる
●バリアングル液晶モニターでアングルは自由
●電子ビューファインダー内蔵
写真はもちろん、より動画を撮りたい人に向いている。4K動画撮影時は30コマ/秒で撮影するため、約800万画素の静止画を切り出せるのは便利。移動中に見かけた一瞬の風景や、人物の表情の微妙な変化なども、動画に残せば撮り漏らすことがない。実勢価格は8万円前後。
バリアングルの液晶モニターもハイアングル、ローアングルなど動画撮影時に役立つ。もちろん1.0型の大型センサーや、25-400mm相当のズームレンズなど、基本機能も十分。画質に納得し、使い勝手の良さに驚く、万能なカメラといえるだろう。
番外編 街中でのスナップに徹するなら単焦点モデルという選択肢も
最後に、旅は主に街中での散策がメインという人向けの選択肢として、単焦点レンズを搭載しているモデルも紹介したい。代表的な存在が、リコーの「GR Ⅱ」だ。実勢価格は8万7000円前後。
ズーム操作ができない分、撮影バリエーションは減るかもしれないが、レンズの構造上、やはり画質は優れる。目の前の景色を撮るなら、約28mm相当の焦点距離は扱いやすい。また、上に紹介した機種より大型の、一眼レフに使われるAPS-Cサイズセンサーの解像度は一歩上を行く。
単焦点レンズの場合、撮り方に工夫が生まれる。自分から被写体に近寄ることで、現地の人と触れ合ったり、歴史的建造物をじっくりと眺めたりと、旅の思い出を深めてくれる思わぬ効果をもたらしてくれることも。”最強のスナップシューター”といわれる機敏さが、旅先でも役立ってくれるに違いない。
(文/高橋 智)
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