【運転上手への道③】燃費にも同乗者にも優しいアクセル操作とは?

【ポイント①】急なアクセル操作は避ける

トヨタの交通安全センター「モビリタ」には、氷や雪の路面を再現したグリップの低い低μ路(滑りやすい道路)が設けられており、体験者はそのような道でアクセルやブレーキ、ハンドルを操作するとどんなことが起こるのかを体験できる。グリップの低い路面で、急にハンドルを切ったり、強くアクセルを踏み込んだりすると、いとも簡単にタイヤはグリップを失う。普段、アスファルトの上を走っているだけでは、なかなか味わうことができない挙動だ。

急なアクセル操作はグリップの低い路面で車体の挙動を乱すだけでなく、同乗者の乗り物酔いや燃費の低下なども招く。普段、グリップの良い路面を走っているときから雑にアクセルを踏み込むような操作は控え、できるだけ繊細に踏み込むような操作を心がけたい。

 

【ポイント②】安全にも燃費にも効く“ふんわり加速”

急なアクセル操作による加速が安全面でも燃費の面でも良くないことはわかった。では、具体的にはどのような加速を意識すれば良いのだろうか? AT車にはアクセルを踏まなくても停止状態からブレーキを緩めるだけで前に進む“クリープ”と呼ばれる現象があるが、モビリタでは発進時にクルマ1台分は、このクリープ現象で進むことを推奨している。

クルマは停止時から動き出す際に多くのエネルギーを消費する。ハイブリッド車の燃費が優れているのも、この動き出しの際にモーターによるアシストを活用しているためだ。この時、あまりアクセルを踏み込まず、クリープ現象を積極的に活用することで燃費も向上させることが可能だ。

 

【ポイント③】車体の動きをイメージして乗り物酔いを防ぐ

クリープ現象を使って進み始めても、その後に雑にアクセルを踏み込んでしまってはせっかくの燃費効果も台無しだ。アクセルもブレーキと同様、ゆっくりと優しく踏み込むようにしたい。ここで意識すべきなのは、ブレーキ操作と同じく同乗者の頭の動きだ。急にアクセルを踏み込むと、クルマの挙動を予測できない同乗者の頭は後方に振られてしまう。こうした挙動は乗り物酔いの原因にもなる。同乗者にいつアクセルを踏み始めたのかさとられないくらい繊細な操作を心がけよう。

その際もブレーキ操作の時と同じくサスペンションを介してタイヤの上に乗っている車体の姿勢をイメージしてみよう。アクセルを踏み込むと、まず車体の重心が後ろに移動し後輪に荷重がかかる。そして後輪駆動(FR)や4輪駆動(4WD)のクルマであれば後ろのタイヤが地面を蹴るようにして車体が加速するのだ。この荷重の移動が急に起こると、同乗者の頭や体が後方に振られ、乗り物酔いを起こしやすい子どもなどは気分が悪くなったりする。アクセルの踏み始めは緩やかに荷重が後方に移動し、リアのサスペンションがゆっくりと沈み込むような動きをイメージしたい。ゆったりとした加速は、燃費や安全性の向上に効果的なだけでなく、同乗者にも優しいメリットの多い運転方法なのだ。

▼取材協力:トヨタ 交通安全センター モビリタ

▲インストラクターの大塚哲史さん(写真右)と芹沢一徹さん

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(取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍)

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