■時計の動力源「ムーブメント」は、ゼンマイ式か電池式かに別れる
答えは…そう、“A”のクオーツ式腕時計です。「えっ!?」と思われた方もいるでしょう。
一見すると摩訶不思議なこの現象は、時計の内側に入っている機構「ムーブメント」の種類に起因します。
ムーブメントには大きく分けて「クオーツ式」と「機械式」の二種類に大別できます。1000円前後の腕時計には例外なくクオーツのムーブメントが積まれていますが、数十万〜数百万円するような高級腕時計には、機械式のムーブメントが積まれていることがほとんどです。
まず「クオーツ式」は、ボタン電池を使用するタイプやソーラー発電タイプなどの“電力”が動力源になっています。水晶に電圧をかけると振動する、という特性を利用して針を調速しています。電波を受信して自動で時刻調整をする電波時計なども、調速機構には水晶振動を用いているのでクオーツに分類されます。
一方の「機械式」は、ムーブメント内部の“ゼンマイ”が巻き上げられ、それをほどく力を歯車に伝えて針を動かします。つまり、電源を必要としないのが特徴です。
その中でもさらに、動力源であるゼンマイの巻き方が、時刻調整をする際などに動かす「リューズ」を回してゼンマイを巻いていく「手巻き」タイプ。また、腕を振るといった日々の動作の中でゼンマイが勝手に巻かれる「自動巻き」タイプ、の二種類に分類されます。
■精度の高さは振動数の多さで決まる
この“振動”というのがひとつのキーワードで、機械式は1秒間に8回振動(ムーブメントによっては5振動、6振動、10振動なども)して時を刻んでいきます。
この振動数が言わば時計を動かすための最小単位で、細ければ細かいほど正確な時を刻むことが可能になります。そんな中、クオーツの振動数はなんと3万2768振動!
機械式とは文字通り桁違いの振動数の多さで、一般的に機械式が月差±300〜900秒(日差±10〜30秒)に対して、クオーツは月差±20秒。両者の間には圧倒的な精度の差があります。
しかし、高級腕時計の機械式ムーブメントは、パーツの研磨や新機構の開発、素材選びなど、あらゆるところにコストを惜しまずに作られています。
それに対して、クオーツ式ムーブメントは約50年ほど前に市場に登場し、当初は機械式よりも高価な存在でしたが、技術革新によって大量生産が可能となり、基本的には求めやすい価格になりました。まあ、数十万円する高級クオーツや、機械式とクオーツ時計の長所を組み合わせたセイコーの「スプリングドライブ」という特殊な機構も存在しますが。