■ミッションは、畳4枚分のウッドデッキを作ること
編集長のビンテージ一軒家には、南向きで10坪くらいの芝生の庭がある。今回のミッションは、ここに畳4枚分のウッドデッキを作ること。
「それで、何から始めるのよ?」
「まずは、現地の測量と基礎工事ですね。ここが一番肝心で大変なところですよ」
基礎とは建物の一番下、地面と接する部分のことで、ウッドデッキの場合ここにはコンクリート製の「束石(つかいし)」を設置するのが定番だ。
「D.I.Yでウッドデッキを作る初心者が、まず初めにつまずくのがこの工事なんですよ」
「確かに、地面には何も目印がないのだから、素人ではお手上げだよな」
建築のプロが木杭と水糸を使い、施工現場に三次元で線を引いていくのを見たことがある人もいるだろう。しかしこれはプロだからできることで、素人には敷居が高すぎる。
「そこで編集長のためにアイデアを考えてきましたよ。これです」
「おーBBQか。気が早いが腹ごしらえは重要だな。よしよしビールも開けるか」
「違いますよ! まだ午前中ですよ」
俺が取り出したのは、束石の大きさに切ったBBQ網と数本の材木。
「BBQ網と薪なんか出すから」
「これは薪じゃないです! さぁ編集長、まずは木工の練習がてら三角定規を作ってもらいますよ」
「さんかくじょうぎーーー?」
■工事前の下準備。電動工具を使って直角三角定規作り
古来より、大工さんが現場で直角を見るときに使う「三四五(さんしご=直角三角定規)」。直角三角形の3辺の長さを3:4:5にすることで、一つの角の角度が90度になるという、ピタゴラスの定理を使ったこの定規の歴史は古く、古代エジプトやバビロニアの建築現場でも活用されていたとか…。
「さ、これを使って、直角三角定規の形に組み立ててください」
「お! 早速、電動工具の登場か。かっこいいじゃん!」
本当に呑気なものだ。取り出したのはHiKOKI(ハイコーキ)の「電動ドライバドリル DS36DA」。先端部を付け替えることで穴あけドリルとしても、ビス締めドライバーとしても使える、木工では欠かせない電動工具だ。はっきりいって、三角定規くらい俺が作った方が早いのだが、ワイングラスより重いものは持ったことがないとうそぶく編集長に、いきなりウッドデッキ本体のビス打ちをさせるわけにもいくまい。ここは廃材利用の三角定規で、電動工具の練習をしてもらおうという、俺の深い考えがあるわけなのだ。
「おい、早く作り方を教えてよ!」
俺の思惑など関係なく、編集長がドライバドリルを振り回す。
「ではピタゴラスの定理にしたがって、60cm、80cm、100cmの長さで組み立てましょう」
廃材の表面に印を付け、三角形の形を作ったら、まずはドリルの刃を付けてビスの下穴を開ける。
「手間を省いて下穴なしでビスを打つと、材木が割れるんですよね」
「急がば回れってやつだな」
下穴が開いたら、ドライバドリルの先端をプラスドライバビットに替え、今度はビス打ち。初心者は強く打ち込みすぎて失敗するので、トルク調整機能をうまく使って締め込む強さを加減しよう。
「ふー、初めての電動工具は緊張するな。ほれ、定規が完成したぞ」
「電動工具は便利ですが、ケガが怖いですからね。それでは、これを使って測量を開始しましょう」
■作った直角三角定規でいよいよ測量
測量といっても、素人のウッドデッキ作り。そこまで大層なものではない。
庭の地面を製図板に見立て、お手製のでかい三角定規で家からの直角と距離を測り、そこにBBQ網を置いて白スプレーで束石の配置図を描いていくだけだ。
もどかしさが募るが、編集長は初めての作業。手を出したいのをグッとこらえ、ようやく工事の前段階が完成。
次回は、いよいよ基礎づくり。
>>>HiKOKI マルチボルトコードレスドライバドリル DS36DA
(写真・文/阪口克)
旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。
https://twitter.com/katumi_sakaguti
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