パワフルな電動ドライバドリルで外壁に穴開け【DIYでウッドデッキ自作顛末記⑦】

▲HiKOKI「マルチボルト(36V)コードレスドライバドリル DS36DA(2XP)」(7万5600円/税別)/全長204mmと18V製品と同一のコンパクトサイズながら、リチウムイオン電池を36Vに高電圧化。モータ部の温度上昇を抑えられるため、連続作業性能が大幅に向上。22段クラッチ付きで最大トルク138N・m。急速充電器(冷却機能付)・ケース・予備電池・電池カバー・サイドハンドルが付属する。サイズ:全長204×全高262×全幅78mm、重量2.3kg。ドリルビットは、コンクリ・モルタル用を使用

取り出したのは、36vバッテリーを使う強力な電動ドライバドリルHiKOKI製「DS36DA」とコンクリ・モルタル用ドリル刃。
材木などよりはるかに硬いモルタルの壁に穴を開けるのはかなり大変。

▲左が小型の10.8Vのコードレスドライバドリルで、右が今回使用した36V仕様のドライバドリル。締め付けトルクが約3倍違う

「小型電動ドリルでもネジ穴程度なら開けられるんですが、今回必要な穴は20ヶ所もあるんですよ」

「そんなに多いのか!?」

作業量が多い時、電動工具のパワーは大きい方が、体力的にはやはり楽。

「そのぶん大型の工具は重くて取り回しが大変なので、自分のやりたい作業に合わせて用意できるといいですね」

「どんな道具も適材適所ってわけだな」

「今回は2cm厚程度のモルタルなのでこれでなんとかなりますが、さらに厚い時には振動ドリルやハンマドリルってのもあるんですよ」

「そいつは凄そうだ! それはそうとさ、なんのための穴を開けるんだ?」

「そっからですか…」

屋根付きウッドデッキを作るとき、問題となるのは屋根を支える柱の位置だ。プロが使う特殊な建材や技法が使えない素人の日曜大工で最もシンプルなのは、ウッドデッキの四隅に柱を立てる工法。

「でも、これだと柱と窓が重なって、使い勝手が悪いんですよ」

「確かに出入りがしにくいし、見栄えも悪いな」

「そこで屋根の母屋側は、新規の柱でなく母屋に直接くっつけてしまおうってことです」

母屋の外壁にネジ穴を開け、屋根を支える材木を取り付けるわけだ。

「それでドリルかー! よし早速、穴を開けよう」

「ちょーっと、待ってください! 壁のどこでもいいってわけじゃないんですよ!!」

日曜大工で既存の建物を改造する「セルフリノベーション」が流行って久しい。インターネット上には華やかな成功例の写真が並ぶが、その影には数多の失敗例もあるわけだ。

「失敗原因の代表格が、壁の中の仕組みを理解しないで工事をしたことです」

「壁の中? 壁の中には木が入ってるんじゃないのか??」

木造住宅の構造材は木であるのは当然だ。ではその木は壁の中でどのように組み合わされているのか? これを理解できないで工事をはじめ、その過程で大切な構造材を切断したりする事故が多いのだ。

「今回の工事で重要なのは、穴を開けた場所の内側に材木があるかどうかです」

「外れの場所があるということか?」

「そうです。建築中の家を見るとわかると思いますが、木造の骨組みは結構間があいているでしょ」

「そこには何もなくってスカスカなわけね」

「通常は断熱材が入っているだけです。そこにネジを打っても、重たい屋根を支えることはできません」

ホームセンターに行けば、壁の中の柱を探る道具も売っているが、使い方が難しい上、素人が買える値段のものでは正確性にも欠ける。

「じゃあ、どうやって柱の位置を見つけるんだよ」

「知識と経験、そして勘ですね。編集長、尺貫法って知ってますか?」

「バカにするなよ、俺は編集者だぞ。昔の日本の単位だろ」

正確には中国発祥の東アジア伝統の単位。メートル法が定着した我が国だが、住宅建築の現場ではまだ、慣例的に尺貫法が使われている。

「日曜大工で覚えておきたいのは、一寸=約3.03cm、一尺=約30.3cm、半間=約90.9cm。この3つです」

「半間が畳の短辺で、一間がその倍で畳の長辺だろ」

「さすがですね。そして日本の住宅の多くが、この単位を基準に作られています」

特に昭和中期に建てられた編集長の自宅なら、まず間違いはない。

「試しにこの掃き出し窓の両端を測ってみましょう」

ウッドデッキに面した、母屋の窓の両端を測ってみると…

「ざっと、350cm弱ってとこか?」

「そうですね。そして一般住宅の柱の多くは、太さ10.5cm(三寸五分)です」

「じゃあ、それを足すと…約360cm?」

「窓サッシの両端は壁の裏側に入ってますから、正確な数字は分解しないとわからないですが…」

「この場所の柱と柱の間は二間(364cm)ってことか!」

この計算でまず間違いはないだろう。

▲壁の内側の間柱を想定してネジ位置を決める。尺貫法にのっとって計算すれば、算出できる。とはいえ、パッと計算できるようになるまではある程度尺貫法に馴染んでる必要がある

「でも問題はその柱と柱の間にある壁だよな」

「この家を建てた大工さんがよほどの変人でない限り、その間には一尺五寸(45.5cm)間隔で細い柱を入れてるはずです。これを間柱といいます」

間柱とは柱と柱の間に立て、壁板の下地となる材木のこと。通常は幅一寸の杉材が使われる。

「幅が一寸ってことは3cmか。正確に見つけないとネジが外れるな」

「その通りですね。この家を建てた大工さんと、編集長の息が合うかどうかですよ」

「大工さんがきっちりした人だったならいいんだが」

「そっちの心配ですか…。心配するなら、大工さんより編集長の腕でしょ(笑)」

今回、屋根の支持材として母屋側に取り付けるのは、デッキ材に使ったのと同じ2x4材。これに柱の位置をマークし、材木用ドリルビットで穴を開ける。次にこの材を壁に押し当て、穴越しにドリルを突っ込んで壁表面に傷をつける。

「これで壁に開ける穴の位置決めができました」

「では、ひと思いに開けちまうか」

「思い切りの良いところは、尊敬しますよ」

▲間柱の位置を計算したら、よく分かるように印を付け、一気に穴を開けていく。ドリルが水平になるように開けていくが、ハンドルが邪魔になる場合はハンドルを横に向けて使用する

モルタルの厚さは定番通りの2cmだったようだ。

「ぐぐぐ。これは硬いなー」

「斜めにならず、しっかり垂直に刃を入れてくださいよ」

「お、ズボッといったぞ!」

「木くずは? 木くずは出ましたか?!」

正確に柱の位置に穴を開ければ、モルタルの粉に混じって、裏にある間柱から木くずがでるはず。

「おう、出たぞ。黄色い木くずが」

「よかったー」

45.5cm間隔で開けた壁の穴全てから木くずが出たので、我々の予想は当たっていたようだ。

「大工さんの施工はセオリー通り、正確だったってことだな」

「当然ですよプロなんだから。さっ、開けた穴にこれを入れてください」

▲ガラスやサッシまわり、目地、突合わせ、各種隙間のシールに使われるシリコン製のコーキング剤。防水性、耐候性、耐熱性、耐寒性などに優れているものを選びたい

▲ドライバドリルで穴を開けたら、建物内部へ水が浸入しないようにコーキング剤を揷入する

続いて俺が取り出したのは、シリコン製のコーキング剤。外壁からの水染みは構造材へのダメージが大きい。ネジ穴を伝って入る水をこれでブロックするわけだ。

「ベトベトして、量の調整が難しいぞ」

「どうせ上に材木を張り付けるんですから、気にしないで一杯付けてください」

コーキングが終われば、屋根を支持する材木をコーススレッドで取り付ける。材木の厚さ38mmにモルタルの厚さを考え、ホームセンターで通常販売されている中では最長の120mmのコーススレッドを使うことに。

▲屋根を支持する木材はおなじみの2×4材。モルタルの厚さと2×材の38mmも考えてコーススレッドの長さを120mmに

「長いから、打つのが難しいな」

「前に教えた通りですよ。ねじの先とお尻、インパクトドライバーをまっすぐに」

「わかっているよ!」

▲水準器を当てて水平を取り、間柱の位置にずれないようにしっかりと固定していく

大量のデッキ材施工で、インパクトドライバーを使う編集長の腕もかなり上達していた。36vバッテリーの強力なインパクトドライバーWH36DAのおかげで、グイグイとネジは打ち込まれていく。

「取り付けた支持材と壁の隙間もコーキング材で埋めてくださいね」

▲板を取り付けたら、壁との隙間にもコーキング剤を塗布。見えない場所なので、水の浸入を防ぐためにたっぷりと塗りたい

これで母屋への工事は終了。次回からいよいよ屋根の新築工事が始まる。

>>HiKOKI「マルチボルト(36V)コードレスドライバドリル DS36DA」

 

>> 連載 [DIYでウッドデッキ自作顛末記]

(写真・文/阪口克

旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。


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