男心くすぐる「クロノグラフ」誕生の歴史から使い方まで!【時計百識】

クロノグラフとはストップウォッチ付き時計のこと。その名称はギリシア語で「時」を意味するクロノ(chrono)と、「記録する」を意味するグラフォス(graphos)を合わせた造語であり、このことからもクロノグラフが「時間を記録する」ための機能であることが分かるだろう。

その誕生については諸説あるが、フランスの時計師ルイ・モネ(1768-1853)が1816年に開発した天体観測用の「60分の1秒計」が世界初のクロノグラフとされている。続く1821年には、同じくフランスの時計師ニコラ・リューセック(1781-1866)が、インクで時間を記録する「秒インジケーター付きクロノグラフ」を製作し、その後クロノグラフは懐中時計に搭載されていく。

クロノグラフが腕時計に搭載されるようになったのは、20世紀に入ってからのこと。そのなかでも革新性と高い技術力をアピールしたブランドのひとつが、ブライトリングだ。1915年、同社はリューズの上部に独立したプッシュボタンを備えた腕時計クロノグラフをリリース。その後、ツープッシャー・クロノグラフ搭載懐中時計の特許を取得し、1934年には世界初となるツープッシャーの腕時計クロノグラフを発表する。

▲1915年に発表された腕時計クロノグラフ。ケース2時位置に独立したプッシュボタンを備え、操作性を大きく向上させた

▲1934年のツープッシャー・クロノグラフの広告。当時はスポーツ用としても推奨していた

その後、ブライトリングはオンボードクロックや飛行士用クロノグラフの開発を契機に軍事パイロットからの注目を集め、第二次世界大戦前には英国王立空軍からクロノグラフを大量受注。このころからブライトリングは航空界との結びつきを強めていき、1952年、ブランドのアイコニックモデルとなる航空計算尺搭載クロノグラフ「ナビタイマー」を発表するのだ。

また、クロノグラフの名機とされるオメガの「スピードマスター」がリリースされたのは1957年のこと。そして1969年には各社が自動巻きクロノグラフを開発。ゼニスは「エル・プリメロ」を、ブライトリングはホイヤー、ハミルトン・ビューレンとの連合で「クロノマチック」を発表する。セイコーが日本初のクロノグラフ「ファイブスポーツ スピードタイマー」を発売したのもこの年で、以後、クロノグラフは急速に広まっていく。

▲1952年に誕生した初代「ナビタイマー」。モデル名は「航行・航海」を意味するナビゲーション(navigation)と「計時」を意味するタイマー(timer)を掛け合わせたもの

 

■クロノグラフの基本構成と使い方

今ではすっかり一般的になったクロノグラフにはいくつかの種類があるが、下の写真のように、3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンド(小秒針)を配したものが一般的。このインダイアルをはじめ、センターには時分針ともう1本細い針を備えている。

これがクロノグラフ秒針で、2時位置のスタート/ストップボタンを押すことによってこの針が回り時間を計測。計時後は4時位置のリセットボタンを押すことで、クロノグラフ秒針が帰零する仕組みだ。

クロノグラフ針は通常の秒針とは違い、スタートボタンを押さなければクロノグラフ秒針は止まったままなので、パッと見では時計が動いているかどうか分からない。スモールセコンドはそのためにも有用で、これが動いていることで時計が作動していることを示すわけだ。

また、機械式クロノグラフの場合、計時中にリセットボタンを押すような操作はNG。というのも、クロノグラフは最も一般的な“複雑時計”。三針モデルと比べても部品点数が多く、構造も複雑なので操作を誤れば故障につながる(ゆえに修理代も三針モデルなどと比べて高くなる)ことは覚えておきたい。

▲1952年に誕生したモデルを範とする「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」(97万円+税)。初代モデルより継承される航空用回転計算尺付きの双方向回転式ベゼルを装備しつつ、ムーブメントはメインテナンス性にも優れた自社製のキャリバー01を搭載し、安定した性能を誇る

▲1984年の初代クロノマットから2004年にリリースされた“エボリューション”まで採用された、ライダータブ付きベゼルを装備した日本限定モデル「クロノマット JSP ローマン インデックス リミテッド」(90万円+税)。ローマンインデックスを組み合わせることで、マッシブなルックスに仕上げている

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(取材・ 文/竹石祐三 写真協力/ブライトリング)

<プロフィール>
竹石祐三(たけいし・ゆうぞう)
モノ情報誌の編集スタッフを経て、2017年よりフリーランスの時計ライターに。現在は時計専門メディアやライフスタイル誌を中心に、編集・執筆している。

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