■キャノピーこそ飛行機モデルの要
飛行機モデルのキモともいえるのがキャノピー(クリアパーツ)です。どんなに機体塗装がリアルに仕上がっていてもキャノピーの塗装がはみ出していたり、透けていたりすると台無しです。逆にキャノピーの塗装がシャープに仕上がっていると、完成度が高く見えるのです。
キットのキャノピーは、閉状態のワンピースパーツと4分割された開状態のパーツが2種類セットされています。機体のプロポーションを重視するなら閉状態を、コクピットのディテールを見せるならば開状態を選ぶとよいでしょう。作例では精密再現されたコクピットを見せるために開状態で製作していきます。
POINT1:マスキングテープは細かく重ね貼りする
キャノピーは機体の迷彩に合わせて塗装する必要があります。細くモールド(彫刻)されているフレームに合わせてマスキングテープをカバーして塗装するのですが、マスキングが甘いと塗料のはみ出しの原因になってしまいます。
マスキングは、一枚のマスキングテープでカバーするとなると、キャノピーは曲面部分もあるためシワが入りやすく、塗料のはみ出しの原因になります。マスキングで隙間を作らないためには、短冊状にカットしたテープをパッチワークのように細かく重ね貼りしていくことです。これにより、シワや隙間ができにくくなり、塗料の入り込みを防いでくれます。
▼もし塗料がはみ出したら…
ラッカー塗装は24時間以上経つと溶剤が揮発して塗膜が硬くなります。はみ出しの修正を考慮してキャノピーの塗装後、15分程度でマスキングを剥がします。その際に塗料がはみ出ていても、まだ完全に硬化していないので、つまようじ(木製のつまようじはキャノピーに傷をつけません)で簡単に削りとれます。
■デカールは指では扱わない!
機体の塗装、組み立てが完了したら、国籍マークや機体のコーションマーク(注意書き)、また機首に描かれたシャークティース(鮫口)のデカール(水転写シール)を貼っていきます。デカールは薄いフィルムで破れやすくなっているため、小さなコーションマークなどは指で扱うのはNGです。デカールの台紙からフィルムを機体に移すにはピンセットを使い、指定の位置に貼っていきます。
POINT2:デカールを貼ったら24時間は乾燥させる
デカールは、1枚ずつ台紙ごとカットして水に5秒ほど浸します。水分をいきわたらせたら水から引き揚げて1分ほど置くことで、糊が溶けてフィルムを剥がせるようになります。貼る位置決めたらティッシュなどで水分を吸い取ることで、デカールはパーツ表面に定着します。可能ならデカールを完全乾燥させるため最低24時間は置きたいところです。ヘアドライヤーの温風などで乾燥時間を早めても良いでしょう。
キットのデカールは、実機のマーキングやコーションマークを精密に再現しているので、200枚近い枚数を貼っていく必要があります、乾燥定着後のデカールの修正は難しいので、焦らず時間をかけて作業を進めます。
デカールを貼る際のお役立ちアイテムとして、「マークセッター」(デカールの軟化、接着剤)、「マークソフター」(軟化剤)といったケミカル剤があります。小さなサイズのデカールは糊が弱く乾燥後に剥がれてしまうことがあります。マークセッターを使うことでデカールフィルムを軟化させ、パーツ表面への接着力をアップさせられます。デカールは、貼り付けが甘いとシルバリング(デカールとパーツ表面との間に空気が入ってしまいフィルムが白くなってしまう現象)を起こすことも。マークセッターを使うことでシルバリングを抑えられます。
■別売りのウェポンセットでリアルなファントムに
ベトナム戦争でのファントムと言えば、機首に装備した20ミリバルカン砲やサイドワインダー、スパローといったAAM(空対空ミサイル)、さらには爆弾など多彩な武装を搭載しており、それがファントムの魅力でもあります。
ちなみにF-4ファントムは、アメリカ軍のジェット戦闘機としては初めて機関砲や機銃を排して武装はミサイルのみとなった戦闘機でした。しかし、ベトナム戦争当時はミサイルの信頼性が低く、北ベトナム空軍のミグ戦闘機との戦闘で苦戦を強いられたことから、E型は固定武装を再装備。機首に20ミリバルカン砲を搭載したのです(海軍仕様のF-4はミサイルのみで機関砲を搭載していません)。
キットにはドロップタンク(切り離し可能な燃料タンク)が3本付属していますが、ミサイルや爆弾といった武装は別売のウェポンセットを購入する必要があります。
今回は、同じファインモールドから発売されている「現用アメリカ軍航空機用ミサイルセット」を使い、固定装備の「AIM-7スパロー」(レーダー誘導の中距離射程のミサイル)×4発と追加装備の「AIM-9サイドワインダー」(赤外線追尾のミサイル)×4発をチョイスした対空戦闘仕様にしていきます。
ミサイルセットのインスト(説明書)の指示に合わせて塗装し、専用のデカールを貼って仕上げていきます。サイドワインダーはキット付属のパイロン(懸架装置)に接着し、翼下に取り付けたらいよいよ完成です。
■これが長谷川迷人流「1/72スケール F-4Eベトナム・ウォー」
一昔前のプラモデルではパーツの継ぎ目を消すためにパテが必要だったり、隙間や段差の修正が当たり前で、製作には手間とスキルが必要でした。それだけに「スケールモデルは難しい」と敬遠していた人も多いのではないかと思います。ですが、精度が格段に向上した最新のキットでは、こうした修正工作もほとんど必要なくなり、またエアブラシの普及や塗料の充実なども含めて、リアルなスケールモデルがより身近な存在になったといえるでしょう。
今回は最新の「1/72スケール F-4Eベトナム・ウォー」製作とエアブラシを使っての迷彩塗装のポイントなどを4回にわたって解説してきました。飛行機モデルの製作は難しいものではありません。製作のポイントさえ掴んでしまえば誰でもリアルなファントムを完成させられます。記事を参考にぜひチャレンジしてみてください。
>> 達人のプラモ術
<写真・文/長谷川迷人>
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