複数の黒塗料を使い分けてリアルなエンジンを再現【達人のプラモ術<TZR250編>】

■ヤマハTZR250(1KT)とは

1983年に登場したスズキのRG250Γは、過激なまでのスタイルと高スペックで人気を博し、レーサーレプリカブームの火付け役となりました。84年にはホンダからNS250Rが、カワサキからKR250が登場。最後発となったヤマハからは1985年にTZR250が登場し、発売と同時に圧倒的な人気を誇りました。

アルミ合金製のデルタボックスフレームとスイングアームを採用し、前後17インチタイヤ、リヤリンクサスに大径フロントフォーク、320mm大径ディスクブレーキなど、ヤマハの市販レーサーTZ250の公道仕様とも言えるハイスペックなモデルとなっています。

TZR250(1KT)は1988年に各部に改良が加えられた後期型(型式2XT)へとマイナーチェンジ(外観上はほとんど同じ)。1989年には後方排気エンジンを搭載した2代目となるTZR250(3MA)が登場、そして1991年には3代目となるV型エンジンを搭載した(3XV)となり1999年に発売を終了しています。しかし今でもTZR250(1KT)は高い人気を持つレーサーレプリカであることは間違いありません。

■特徴的なスタイルとエンジンのディテールも精密再現した「1/12 TZR250(1KT)」

「1/12 TZR250(1KT)」は、バイクモデルでは定評のあるハセガワが創業80年記念キットとして2021年3月に発売した完全新金型の精密キットです。キットは、徹底した実車取材によりTZR250の特徴的なスタイルとエンジンのディテールも精密再現。またカウルを外した状態での製作も可能となっています。ヘッドライト内部とミラーはメッキパーツを採用。白×赤のストロボカラーはデカールで再現しています。

 

POINT1:小さいパーツはランナーから切り離さずに塗装する

▲インストの指示で各パーツを接着塗装していく

バイクモデルは、エンジンの組み立て、フレーム作り、フレームにエンジンを載せたら足回り、カウルなど外装の取り付け、といった手順で製作を進めていくので、ある意味実車を組み立てるような楽しさがあります。まずは、インスト(説明書)に沿ってエンジンを組んでいきましょう。

▲組み立てたエンジン本体とキャブレター。小さいパーツが多いので接着剤のはみだしを防ぐために流し込み接着剤を使う

はじめに、エンジン本体にキャブレターやクランクケースカバー等を組みつけていきます。プラグ等も別パーツでリアルに再現されていますが、非常に小さいパーツなので、ランナーから切り離す際には折損させないように注意が必要です。

▲プラグも別パーツで再現されている。小さなパーツなのでランナーから切り離す前に塗装する。ゲート部分は後からタッチアップ塗装すればOK

エンジン本体に接着するシリンダーや小さな補機類パーツは、接着してからエアブラシで塗装していきます。色の違う細部は筆で色を重ねることで、接着剤のはみ出しによる塗装の汚れを防ぎます。また、プラグなど小さなパーツは切り離してしまうと塗装が大変になるので、ランナーから切り離す前に塗装してから取り付けるようにします。

■アンダーゲートってなに?

▲ランナーから切り離した際に凸状に出っ張っているのがアンダーゲート部分。パーツの接着面なのが分かる

本キットではアンダーゲートが多用されています。一般的なプラモデルでは、ランナー(枠の部分)とパーツをつなぐゲートがパーツの側面で繋がっています。このゲートをニッパーで切り離すわけですが、その際にパーツ側が傷ついたり、クリアパーツでは細かいクラック(ひび割れ)が入ったりして、白くなってしまうことがあります。

▲アンダーゲートの凸部分研磨してやらないと、パーツが正しく接着できなくなる

▲アンダーゲートの凸部をヤスリで研磨し、パーツが正しく接着できるようしておく

アンダーゲートとは、そうしたパーツ表面の傷つきを防ぐために、ゲートがパーツ接着面に設けられたものをいいます。これにより、パーツを切り離した際に、表面に傷がつきにくくなっているのです。近年、多くのプラモデルメーカーで採用されており、ありがたい配慮ではあるのですが、切り離したゲートが凸となって切断面に残るため、必ず平滑に研磨しなければいけません。これを忘れるとパーツ組み立ての際に隙間が生じてしまうので注意が必要です。

 

POINT2:塗装でリアルなエンジンを再現する

▲エンジン本体は、Mr.カラー「C92 セミグロスブラック」で、オイルパン部分とキャブレターは「C8 シルバー」で塗装

バイクモデルは、エンジンや足回りなどを精密に再現されたメカが魅力です。キットは、TZRの特徴でもあるデルタボックスフレームやエンジン、足回り等を塗装で再現していくわけですが、エンジンは「セミグロスブラック」、部分的に「ツヤあり黒」や「シルバー」など細かな塗装指定がされています。

▲エンジンの塗装では、Mr.カラーから発売されている黒系塗料を使い分ける

また、エアクリーナーボックスのプラスチックやラジエーターホースゴムといった材質そのものの黒などは、同じ黒でも微妙な色の違いがあるため、Mr.カラーであれば、「C33 つや消しブラック」やゴムの質感を再現できる「C137 タイヤブラック」といった別の黒系塗料を使い分けることで、よりリアルに仕上げられます。

■パイピングのコツ

▲キャブレターに繋がるアクセルワイヤーやプラグコードなどを付属の樹脂チューブをカットして瞬間接着剤で取り付けていく

エンジンのアクセルケーブルやプラグコードなどの再現のため、キットには極細の樹脂チューブが用意されています。このチューブをインストの指示にそって指定の長さにカットして取り付けますが、チューブが細いためピンにうまく差し込めません。そこで、爪楊枝をチューブの切り口に差し込んで、穴を広げてやるとスムーズにパーツに差し込めます。また接着には瞬間接着剤を使用します。

▲ケーブルを取りつける際には、パーツ側の差し込みピンを折らないように注意

【次ページ】エンジンの金属感を出すテクニック

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