ウォッシングで戦車の重厚感を表現する【達人のプラモ術<タイガーⅠ編>】

POINT1:エアブラシ塗装は塗料の濃度に気を遣う

タイガーⅠの迷彩塗装は、数多くのバリエーションが存在します。今回製作の初期型の場合、ジャーマングレー(やや青味ががった灰色)がよく知られているのですが、今回は「LP-55 ダークイエロー2」「LP-56 ダークグリーン2」「LP-57 レッドブラウン2」を使ったドイツ戦車の代表的な3色迷彩で仕上げています。

▲今回使用するタミヤラッカー塗料

塗料は、私が使い慣れているラッカー系塗料(タミヤラッカー塗料)を使っています。もちろん水性系アクリル塗料でもドイツ戦車の専用色は出ているので、好みに合わせて塗料を選んでも問題ありません。

▲使用しているのはGSIクレオス製エアブラシ「PS289プロコンBOY WAプラチナ0.3 Ver.2」

エアブラシ塗装で、「上手く迷彩が塗れない」「塗料に粒がとんでしまい仕上がりが粗くなってしまう」など、どうしたらいいのかという相談をよく受けます。塗装が荒れる、粒が飛ぶといったトラブルは、大抵の場合塗料の希釈不足が原因です。

ラッカー系塗料を使ったエアブラシ塗装では、一般的に1:1で希釈(塗料1に対して薄め液1)するといわれています。ですが、今回のようにいかにもスプレーガンで塗りました的な “境目がボケたイメージの迷彩” を再現する場合、塗料の濃度が濃すぎてどうしても色の境目で粒子が目立つ粗い仕上がりになってしまいます。

粒子飛びを防ぐには、少なくとも塗料4:溶剤6まで希釈する必要があります。ただし、塗料の種類によって希釈率は変わります(タミヤ水性アクリルの場合は溶剤4対塗料6)。

▲左側が塗料の希釈が足りないため、色の境目に塗料の粒がとんでザラついた仕上がりになってしまった状態。右側が適正な希釈(塗料4:薄め液6)したことで、色の境目に自然なグラーデ―ションに仕上がった状態

 

POINT2:リアルタッチマーカーで下描きをする

迷彩塗装は、インスト(説明書)の塗装図を見ながら進めていきますが、迷彩のパターンはなかなか複雑で、マスキングして塗分けるのもなかなか大変です。そこで、作例では「リアルタッチマーカー リアルタッチグレー3」を使い、車体に迷彩パターンを下描きしています。これで塗装がグッと楽になります。下描きには、色鉛筆も使えます。逆に、油性マーカーと鉛筆は塗装の表面に染み出してきてしまうので使用できません。

▲インストの塗装図を参考に迷彩パターンをリアルタッチマーカーで描いていく。迷彩パターンは複雑だが下描きはあくまでもガイドなのでざっくりでかまわない

 

POINT3:塗装は明るい色から暗い色の順で重ねる

エアブラシ塗装では基本、明るい色から暗い色の順番で色を重ねていきます。暗い色の上に明るい色を重ねた場合、どうしても明度が暗くなるため、車体の基本色の明るいダークイエロー、そこにレッドブラウン→ダークグリーンの順で塗装を重ねていきます。

▲溶剤6対塗料4まで希釈したレッドブラウンで下描きをガイドに塗装していく。慣れていても迷彩のパターンを描くのはなかなか難しいもの。このあと、ダークグリーンを塗装した後に修正塗装をするので、この時点では下描きからのはみ出しやズレが出ても気にしなくて大丈夫

▲レッドブラウンの塗装が完了! 迷彩のパターンは不定形ながら砲塔と車体で繋がっているので、砲塔を載せてパターンがずれないように注意しながら描いていく

▲レッドブラウンに続いてダークグリーンを重ねた状態。このあとさらに塗装図を参考にしながらダークイエロー、レッドブラウンを使い、はみ出しや塗装のズレを納得がいくまで修正していく

 

POINT4:デカールはつや消しクリアーでオーバーコートする

迷彩塗装が完了したらデカールを貼っていきます。といっても車体番号とバルケンクロイツ(ドイツ国防軍の標章)9枚しかありませんが…。デカールが乾燥したら、つや消しクリアーをオーバーコート、デカールフィルムの光沢を抑えて塗装とのツヤを揃えます。

▲デカールは質も良く貼りやすいものが付属

▲つや消しクリアーでオーバーコートしたことでデカールの光沢が抑えられて、貼った感がなくなった

▲オーバーコート塗装に使用したのはタミヤ缶スプレーの「TS-80 フラットクリヤー(ラッカー系つや消しクリアー)」。迷彩塗装に水性系アクリルの塗料を使用した場合は、同じ水性のトップコートのつや消しクリアーを使用する

 

POINT5:装備品は筆塗りで仕上げる

タイガーⅠは、車体各部に牽引用ワイヤーや主砲のクリーニングロッドをはじめ、大型ハンマーや斧といった工具を多数搭載しています。こうした装備品は、筆塗りで塗装することで、迷彩塗装の中でワンポイントとなり密度感が向上します。

▲牽引用のワイヤーやスコップ等はメタリックグレーで、柄の部分や車体前部に搭載されている工具箱はウッドブラウンで塗装

 

POINT6:エナメル塗料でウォッシングをかける

迷彩塗装の明度と彩度の調整をするため、筆を使い「スミ入れ塗料のブラウン」を塗装面に塗り重ねていきます。サラサラなスミ入れ塗料は、モールド(彫刻)の凹に溜まることで暗くなり、スミ入れと同じような効果が得られます。平面部分にも薄く塗膜ができるため、車体塗装のトーンが暗くなると同時に、迷彩の色調が整い、落ち着いた色合いになります。

全体に塗料を塗れたら、綿棒を使ってスミ入れ塗料が乗りすぎてしまった箇所などを拭き取っていきます。拭き取り作業をすることで、意識的な塗装の明度差が生まれ、ディテールを強調できます。スミ入れ塗料は、乾燥してしまったらエナメル溶剤を含ませた綿棒などで擦れば拭き取れるので、納得のいくまでウォッシング作業を進めます。

▲タミヤから発売されているスミ入れ塗料を使うことで手軽にウォッシング塗装ができる。今回使用したのはブラウンだが、塗装や部位に合わせてブラックやダークブラウンなどを使い分けていく。また、最近発売されたオレンジブラウンを使うとリアルな錆の表現も可能だ

▲ウォシングでは、スミ入れ塗料の上澄みを使うと濃くなりすぎるのを防げる。一気に車体全体に塗るのではなく、部分単位で塗布していくと作業が楽になる。「スミ入れ塗料」はエナメル塗料なので、下地のラッカー塗装を溶かすことはないが、塗装が水性アクリ塗料の場合、溶かしてしまう場合があるので注意が必要

▲スミ入れ塗料(ブラウン)によるウォッシングを施す前の状態

▲ウォッシングを施した状態。溶接跡やパーツの付け根にブラウンのスポットができて使い込んだ状態のように見える

▲車体だけでなく、転輪や履帯にもウォッシングを入れて仕上げた状態

 

【達人流!エアブラシ塗装のポイント】

エアブラシ使った迷彩塗装は正直慣れが必要です。でも習うより慣れろという格言がありますが、塗装に失敗しても焦ることなくリカバリーすれば良いのです。使い続けることがエアブラシ塗装上達の早道です。

 

【プラモ製作で知っておきたいアイテム使いこなし術】

●ステックヤスリを使いこなそう!
プラモ製作でパーティングラインやゲートの研磨処理に欠かせないアイテムといえばヤスリです。金属製の棒ヤスリや紙ヤスリ(フィニッシングペーパー)などが一般的ですが、近年ではプラモ用ステックヤスリが広く使われるようになりました。

簡単に言うと紙ヤスリをスティック状にしたもので、目の粗さも豊富でソフトタイプやハードタイプがあり、またサイズもいろいろ揃っています。ステックヤスリは板状なので、手に持ってしっかりとパーツのゲート跡の処理ができます、また正確な面だしにも便利なアイテムです。近年では100円ショップなどでも模型用のステックヤスリを販売しています。フィニッシングペーパーと組み合わせて使用することで研磨作業が楽になりますよ。

*  *  *

次回はタイガーⅠ編の最終回。ウエザリング(汚し塗装)とフィニッシュワーク編です。乞うご期待!

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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