仕上げの「クリアー塗装」をあえてやらないという選択も【達人のプラモ術<NISSAN フェアレディ 240ZG>】

■仕上げの前に…ボディのクリアー塗装について考える

ボディ塗装ですが、今回は缶スプレーを使用してマルーンに仕上げました。一般的なカーモデルのボディ塗装手順では、塗装面のさらなる光沢アップ、デカールの保護等を目的として、ボディカラーの上からクリアーをオーバーコート塗装して仕上げることが多いです。しかし、今回のフェアレディ240ZGではクリアーのオーバーコート塗装をしていませんが、それは何故だと思いますか?

■知っておきたいクリアー塗装のメリットとデメリット

クリアーによる塗装は、先に書いたようにボディの光沢アップ、そしてボディに貼ったデカールの保護が目的です。場合によってはさらにクリアーの塗装面を研ぎだすことで鏡面仕上げを目指します。しかし、今回ボディは缶スプレー塗装のみで十分な鏡面仕上げとなっています。

▲タミヤスプレー「TS-11 マルーン」だけでも、塗装面が鏡面に仕上がっているのであれば、敢えてクリアーでのオーバーコート塗装は不要

また、GTカーのモデルと違って大判のデカールも使用していません。ならば、クリアーによるリスクを避けて、オーバーコートはしなくても良いという判断です。クリアー塗装も、塗装が厚くなる、ボディのエッジがダルくなる、デカールが侵されるといったトラブルの要因になることがあります。さらに、クリアー面を研磨する研ぎ出しでは、慣れていないとエッジ部分で塗装の下地が出てしまうというトラブルの可能性もあります。

さらに、長期的にはクリアー塗膜の黄変というリスクもあります。もちろん、さらなる光沢を求めたい、塗装面の保護という観点からクリアー塗装を否定するものではありません。要はケースバイケースでクリアーによるオーバーコート塗装を判断しましょう、ということなのです。

 

■テールランプの製作

POINT1:クリアパーツの塗装は表裏両方から

ウインカーやテールランプ類は透明パーツで成型されています。これを「タミヤカラー X-27 クリヤーレッド」と「タミヤカラー X-26 クリヤーオレンジ」で塗装します。塗装は、パーツの裏と表の両面からおこないます。裏側だけ塗装した場合、プラの厚み分奥まった不自然な仕上がりになってしまいます。逆に表側だけの塗装だと、クリア―塗料が凹部分に溜まりやすく、仕上がりにムラができてしまう原因になるため、両面塗装です。また、パーツが小さいので、塗装はランナーにつけたまま行い、乾燥後に切り離します。

▲クリアパーツは、「タミヤアクリルカラー」を使うことで筆塗りのムラが出にくくなる

▲塗装が完了したテールランプをリアガーニッシュにはめ込んだ状態。ベースパーツがメッキパーツなので、リアルな仕上がりが得られる

 

POINT2:インレットシールは直接貼り付ける

リアガーニッシュは、塗装したテールレンズ周囲のメッキをインレットシール(転写シール)で再現します。貼り付ける部分が細く凸になっているので、ピンセットで台紙からはがして貼りつけた方が貼りやすくなります。

▲テールランプ周囲の形状に凹凸が多いのでインレットシールは台紙からはがしてピンセットで直接貼ると作業が楽になる

 

■フロントとバンパーの取り付け

フロント下側パーツおよびバンパーをボディに組付けます。フロントパーツは仮組取り付け位置を確認してしっかりと接着乾燥させます。

▲フロント下回りのパーツはウインカーパーツを取り付けたのち、車体に取りつける。ボディ側に接着剤がはみ出さないように注意

▲リアバンパーは細いパーツがあるので破損に注意しながらボディに接着

 

■オーバーフェンダーの接着

240ZGの特徴でもある前後のオーバーフェンダーは、事前に「LP-20 ライトガンメタル」で塗装し、車体に取り付けます。ボディ側に取りつけピンの穴が開けてありますが、ボディを塗装した際に塗料の厚みで穴が埋まっている場合があるので、ピンバイスで軽く穴をさらっておくと取りつけやすくなります。

取り付けは、接着剤がはみ出さないように慎重に。はみ出すとボディの塗装が溶けて汚れてしまいます。自信がなければ、若干接着強度は落ちますが塗装を侵さないクリアーボンドでもOKです。

▲オーバーフェンダーは事前にライトガンメタルで。リベットはシルバーで塗装

▲接着剤がはみ出さないよう、慎重にボディにオーバーフェンダーを接着。取り付け後は接着剤がしっかり乾燥するまで(少なくとも2時間以上触れないこと

 

■ボディ磨き

オーバーフェンダーやバンパー等の接着がしっかりと乾燥したら、いよいよ完成が見えてきます。あとはバックミラーやワイパーなどの取り付けを残すのみとなりました。しかし、ここで焦らず、まずはケミカル剤を使いずボディを磨き上げましょう。ワイパーやバックミラーを先に取りつけてしまうと、磨きの際に破損しやすいので後に取り付けます。

POINT3:コーティング剤を使って皮脂や汚れを落とし、さらに光沢をアップ!

白や黄色など明るい色のボディカラーでは目立ちませんが、今回のマルーンあるいはブラックといった暗い色だと皮脂による塗装のくすみが目立ちます。せっかくキレイに塗装ができていても、塗装後はなるべく素手で触らないに越したことがないボディですが、作業で触るためどうしても皮脂汚れは避けられません。なので、ボディをクリーニングしておきましょう。

▲コーティングポリマーを含ませたクロスでボディを磨き上げていく。コート→乾燥→コート→乾燥と重ねることで光沢感が高くなり、また塗装面の磨き傷等を目立たなくしてくれる効果も

皮脂による塗装面の曇りはクロスで拭いても、伸びるだけでなかなかとれません。そこで、コーティング剤を使い皮脂や汚れを落とし、さらに光沢をアップさせます。実際のクルマでもコート剤で塗装を保護、光沢アップさせるケミカル剤がありますよね、模型でも理屈は同じです。

今回使用したのはハセガワトライツールの「コーティングポリマー」です。塗装面の光沢アップ、同時にフロントウインドウなどクリアパーツのつや出し、さらに磨き傷も目立たなくしてくれるスグレ物です。コーティング剤は専用のクロス(今回は「タミヤコンパウンド用クロス」)を使いました。

▲模型用の塗装コート剤は今回使用した「コーティングポリマー」のほかにも各メーカーから発売されている。Mr.ホビーから発売されている「Mr.クリアーコーティング光沢(UVカット)」はつや出しだけではなく、耐UVで塗装の色褪せや黄変を防ぐ効果があるとのこと

▲使用した「タミヤコンパウンド用クロス」。コンパウンド(研磨剤)用だが、コート剤の塗布と磨き上げに効果が高いクロス。大判で3枚入りなのもポイント

ちなみに、ティッシュでボディを磨くのは、塗装面に細かいヘアライン状の磨き傷をつけてしまうのでNGです。逆にメガネ拭き用のクロスならば使えます。コーティングポリマーは皮脂を落とす効果もありますが、コーティング後も素手でボディを触っていると、やはり皮脂による曇りが出てしまいます。コーティング後はなるべく素手でボディの塗装面を触らないようにします。

上のサンプルはボディと同様にマルーンを缶スプレーで塗装したもの。右側は塗装したたままの状態。左側が指で触って皮脂をつけた状態。皮脂で塗装面の光沢がなくなり曇ってしまっているのが分かります。皮脂は拭いたくらいではなかなか取れないので、コート剤とクロスの組み合わせで落とし、コーティングした後のボディもなるべく素手で触らないようにしたいところ。完成後はホコリ除けにもなるケースに保管するのがベストです。

 

■インレットシールの貼り付け

コーティングポリマーでのボディ磨きが完了したら、ボディ両側やテールにインレッシールを貼っていきます。コーティングポリマーが乾いていないと貼りにくいので要注意です。軽く湿らせた綿棒で貼り付ける部位を拭いておくと良いでしょう。

▲ルームミラーやバックミラーの鏡面もインレットシールでリアルな仕上がりが得らる

▲ボディの両サイド、テールウイングの飾り文字もインレットシールで立体的に再現。ここはシールをフィルムごと押し付けて転写するのが正解。一度貼った後の位置修正は困難なので慎重に一位置決めをしてから貼る

 

■ミラー、ワイパー、ナンバープレートを取り付けて完成!

最後にバックミラー、ワイパー、ナンバープレートといったパーツを、それぞれ塗装してボディに接着すればフェアレディ240ZGの完成です!

▲バックミラーやワイパーもクリアーボンドで接着するとボディの塗装を接着剤で汚してしまうトラブルを防げる。ナンバープレートはデカールで再現されている

 

■達人流!フェアレディ 240ZGの完成!

完成しました! フェアレディ240ZG。今回は缶スプレーの塗装のみで、あえてクリアーによるオーバーコート塗装をおこなわないで完成させています。それでも十分に鑑賞に堪える光沢のあるカーモデルに仕上がったと思っていますがいかがでしょうか? コート剤を上手く使うことで、クリアーオーバーコート塗装に負けないよりキレイな仕上がりを得ることができました。

タミヤ最新のカーモデルということもあって、組み立てには修正工作といったストレスがありません。パーツはカッチリと組み合わせられるので、カーモデルビギナーにもオススメの良キットです。組み立てにストレスがないということは、塗装に集中することができるワケです。記事を参考に、缶スプレーによる鏡面仕上げのボディ塗装、リアルに再現されたエンジン、レザーの雰囲気を纏ったシートを備えたインテリアなど、それぞれ質感を再現する塗装に、ぜひチャレンジしてみてはどうでしょうか?

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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