■車両法と道交法で区分が異なる
そもそも「排気量」という指標のない電動バイクで、原付一種(50cc以下)や二種(125cc以下)といった区分はどうなるのでしょうか? 道路運送車両法ではモーターの“定格出力”によって3つの区分を設けています。
0.6kW以下…原付一種
0.6kW超1.0kW以下…原付二種
1.0kW超…軽二輪(250cc以下)
区分はこの3つだけ。いわゆるエンジンのバイクで車検が必要なのは251cc以上の小型二輪からなので、その区分のない電動バイクは、現状車検が必要な車種はありません。
クラス的には650ccクラスのスクーターと同等のBMW「Cエボリューション」も、ハーレーダビッドソンが海外で販売していて日本にも上陸予定の「LiveWire」も、現状の法規では車検なしで乗ることができます。
軽二輪までしか区分がないということは、普通自動二輪免許ですべての車種に乗れてしまいそうですが(実際に少し前まではそうでした)、実は運転免許の区分に関わる道路交通法では少し異なる規定が存在します。それは、定格出力が20kW超の電動バイクを運転するには大型自動二輪免許が必要だというもの。2019年に追加された規定ですが、車両法と道交法では異なる区分が存在しているというのが現状なのです。
■定格出力は最高出力ではない
注目したいのは、車両法も道交法も区分を決める目安が“定格出力”であるということ。この数値は電気製品が一定の条件下で安定して出力し続けられる力のことで、最高出力とは異なります。例えば、定格出力は0.58kWで原付一種に分類されるヤマハ「E-Vino」の最高出力は1.2kWと、定格出力の2倍以上にもなります。
ちなみに前出のBMW「Cエボリューション」の定格出力は19kWですが、最高出力は35kW。これは48馬力に相当するので、かなりパワフル。そうなると、定格出力が20kW超は大型自動二輪免許が必要とする法規制は必要なものだと思えてきますよね。
■充電方式に注意が必要
現状、国内メーカーから販売されている電動バイクは原付二種以下のクラスに限られており、大型免許が必要な定格出力20kW超のモデルを購入しようとすると輸入車を選ぶことになります。
そこで知っておきたいのが充電方式について。日本未発売の「LiveWire」は高速道路によくあるCHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電に対応していますが、それ以外のモデルは対応していません。
多くのモデルは200Vの普通充電には対応しているので、ツーリング先で充電する場合は普通充電器を探す必要があります。そして普通充電の場合、充電には数時間かかります。EV用の充電器はだいぶ増えてきていますが、高速道路のPAなどに設置されているのはCHAdeMO方式がほとんどなので、ツーリング途中にPAで充電しようと考えていると使えない場合があるので注意しましょう。
まだまだ発展段階の電動バイクですが、東京都では2035年までに都内で新車発売されるバイクすべてを電動化(ハイブリッドを含む)するという方針を打ち出しており、今後は冒頭で触れたカワサキ以外にも多くの車種が出てきそうな状況。どんなモデルが出てくるのか楽しみな時期でもありますので、ここで紹介した基礎を抑えつつ期待して待ちましょう。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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