最新モデルとなる「AirPods(第3世代)」は、オリジナルのAirPodsに近い開放型の完全ワイヤレスイヤホンです。“空間オーディオ”とダイナミックヘッドトラッキングに対応し、耳の形に応じて音質を調整するアダプティブイコライゼーション(Adaptive EQ)も搭載しています。
完全ワイヤレスイヤホンをただ音楽を聴くデバイスでなく、インテリジェントなデバイスへと進化させているところが、Apple独自の取り組みです。再生時間も最大6時間、充電ケース込み30時間になります。
iPadで“空間オーディオ”を利用するには、「AirPods(第3世代)」をペアリングを完了してから、「設定」の「Bluetooth」から「AirPods」を選んで、「空間オーディオ」をタップ。
“空間オーディオ”に対応しているコンテンツは、「AppleTV+」「Apple Music」、そして9月よりApple以外のサービスとして「Netflix」も追加されています。
まずは「AppleTV+」で11月5日に配信開始されたばかりのトム・ハンクス主演の『フィンチ』を視聴してみると…衝撃的な音の臨場感! なんですか、この効果!
冒頭の砂嵐のシーン、完全にその空間に立っているように左右に音が抜けていくし、セリフの音声も目の前の空間からクリアに聞こえます。効果音が聞こえる位置も、耳の横、後ろ、斜め上にスピーカーがあると疑うくらいで、音の移動も完璧。響きを付けるようなごまかしの3D効果ではなく、人の声もハッキリとリアル。そして低音の轟音までもスゴいんです。「AirPods(第3世代)」は低音の再現に不利な開放型のイヤホンであることも考えると、なおさらスゴい。
ちなみに“空間オーディオ”にはヘッドトラッキングという効果があり、iPadの画面に対して顔を横に向けると、音の聞こえる位置も横にズレます。これは映画の没入感に対して不要では? と思ってオフにしてもみましたが、オンのままの方が音の空間上の定位がハッキリします。人間の知覚特性として、頭をわずかでも動かした時の定位の移動で音の位置を認識していると以前習ったことを思い出しました。
じゃあ、Apple以外のコンテンツではどれだけ有効に働くのかと、Netflixで配信中のオリジナル作品『イカゲーム』も視聴。エピソード1の“だるまさんがころんだ”のシーン。ゲームの参加者達の声は前方位置、会場内を流れるアナウンスは頭上の高い位置、参加者のどよめきは首の後ろ。そして会場内に響き渡る銃声は、頭を取り巻くような高い位置から無数に…。“空間オーディオ”の効果、Netflixでも完璧です。
Netflixではオリジナル作品の多くがDolby Atmosで配信中のため、“空間オーディオ”も完全対応。オリジナルではない作品、特に日本のアニメ等はステレオ音源も多いのですが、それらの作品では前方ワイドな位置でセリフ等が広がります。ヘッドトラッキングも効果アリです。
イヤホンやヘッドホンには、これまでもサラウンドや3Dといった名前の付く製品は多数ありました。ただそれらは、音に響きを付ける簡易的な処理だったり、高額な製品だとしてもサラウンド効果はあるが空間の広さを再現する、といったもの中心でした。
「AirPods(第3世代)」の“空間オーディオ”は、Apple製品同士の連携でしか実現できない正規の再現方法。その効果は予想をはるかに上回り、音の広がりだけでなく、作品の空間に真っ只中にいるような個々の音が際立つリアルな臨場感を再現します。ちなみに、“空間オーディオ”は「AirPods Pro」でも体験できるのですが、効果はほぼ同じか、むしろ「AirPods(第3世代)」の方ができが良いと感じてしまいました。
iPad+「AirPods(第3世代)」の“空間オーディオ”の組み合わせは、まさに家庭の映画鑑賞として最上級の体験を届けてくれます。「Apple TV+」、そして「Netflix」のユーザーはぜひとも体験してみてください。驚きますよ。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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