映画にもなった宇宙船「アポロ13号」の破損状態を製作!【達人のプラモ術<アポロ13号>】

■今から半世紀前は宇宙ブーム真っ盛りだった

先日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、半世紀ぶりに月着陸を目指す「アルテミス計画」で宇宙飛行士を月に送り込むのが2025年以降に延期されたと発表しました。今から52年前アポロ11号が月に初めて人類を送りこんだのは1969年、僕は11歳の小学5年生でした。

当時は宇宙ブームの真っ盛り。NHKが日本時間の午後9時45分から衛星生中継で月着陸の瞬間をライブで放送したのを覚えています。

渋谷の東急デパートではRevell社から発売されたアポロのプラモデルを販売。行列に並んで買いました。屋上には実物大の月着陸船の模型が展示され、記念撮影ができるなど、今からは考えられないほどの盛り上がりだったのを覚えています。

当時の模型業界もアポロを中心に数多くのキットが発売されていました。本物は存在しないオリジナルのアポロ探検車やアポロ回収船なんてものもありました。当時、SF好き、プラモ好き、そして宇宙好き少年だった僕はプラモを作りまくり、アポロ関連の新聞記事をスクラップ。現在でも手元に残してあります。

▲当時集めていたアポロ関連の新聞切り抜き。新聞も1面からアポロ関連の記事で埋まっていた

20年ほど前になりますが、好きが高じてアポロを打ち上げたケープ・カナベラル宇宙基地の39番発射台、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで保存されている管制センターにも行っちゃいました。

というワケで今回は、元(現?)宇宙少年として初のキット化を記念?し、アポロ計画の中にあって唯一事故で月に行けなかった『栄光ある失敗』アポロ13号を製作します。

▲これはタミヤ本社に展示されている1968年7月の週刊『ぼくらマガジン』に掲載されていたタミヤ製『アポロ1宇宙探検車』の広告。タミヤオリジナルのプラモデル。モーターライズ走行しながら3色塗り分けられた円盤が光りながら回るギミックが秀逸だったキット。残念ながら実在はしない。当時はこうした夢のあるオリジナルプラモデルがたくさん発売されていた。実際のアポロ1号はケープ・カナベラル空軍基地34番発射台上で発射の予行演習中に火災が発生、司令船が焼失して船長ガス・グリソム、副操縦士エドワード・ホワイト、飛行士ロジャー・チャフィーの3名が犠牲になった

▲こちらも1969年12月の週刊『ぼくらマガジン』に掲載されていた「1/70スケール・フライングアポロ」プラモデルの広告。スケールモデルとしても良くできたキットだったが、天井からひもで吊るすとモーターが内蔵された支援船のプロペラでクルクル回るギミックも内蔵されていた。ちなみに2009年にアポロ40周年で再販されている

 

■アポロ13号のプラモデル

アポロブームの頃は多くのメーカーからプラモが発売されていましたが、近年では香港のプラモデルメーカー、ドラゴンモデルズが「サターンVロケット」や「宇宙船」などアポロ関連のニューキットを数多くリリースしていて、元宇宙少年(まだ現役)としてはうれしいかぎりです。

今回製作のアポロ13号も同社から新たに発売されたキットで、スケールは1/72、キットは司令船/支援船とドッキングされた月着陸船を「“Houston、we've had a problem APOLLO13”(ヒューストン、問題発生!! アポロ13号宇宙船CSM(司令船/機械船)&月着陸船)」 という長い名称でキット化。支援船の酸素タンク爆発で外板が吹き飛ばされてむき出しになった内部構造が、新規パーツで再現されています。

▲キットは1/72スケール。指令船と支援船、月着離船の3点で構成され、専用の展示スタンドも付属する。何故かアポロ11号のミッションシールが付属している。価格6800円

 

■今回もフィニッシュシートが大活躍

アポロ宇宙船の司令船は、宇宙空間の太陽光線の輻射熱を防ぐためクロームメッキ状態の外板を持っています。塗装ではリアルな再現が難しいため、前回の飛燕製作でも使用したハセガワトライツールのフィニッシュシートのミラーフィニッシュを使用します。

>> チタンフィニッシュシートでメッキ飛燕をディテールアップ!【達人のプラモ術<飛燕>】

▲ハセガワトライツール・ミラーフィニッシュシートは司令船の外販再現に使用。価格1100円。ゴールドフィニッシュシートは支援船内部と月着陸戦の断熱シーと再現に使用する。価格1320円

指令船は形状が円錐なので、組み立て後に短冊状にカットしたミラーフィニッシュシートを貼りこんでいきます。シートは柔軟なので、綿棒などで圧着することでパーツの形状にも馴染ませられます。またシートの上から塗装することもできます。

▲ミラーフィニッシュシートはごく薄いPVVシート(向こう側が透けているのが分かる)で、貼るだけでメッキと同等の鏡面仕上げを再現できる

▲短冊状にカットしたミラーフィニッシュシートを貼りこんでいく

▲曲面部分はフィニッシュシートを伸ばしながら貼ることでシワが入るのを防げる

▲パーツの凹凸部分には、綿棒を使ってミラーフィニッシュシートをしっかりと密着させていく。気泡が生じた場合はデザインナイフで穴を開けて空気を押し出してやる

▲ミラーフィニッシュシートの貼りこみが完了した司令船

▲1/72スケールの司令船はこのサイズ。ちなみにこのカプセルの中で男3人が風呂なしで1週間、ひとり当たりの占有スペースは電話ボックス程度だったとのこと。当然ながらプライベートは存在しないが、無重力状態なので窮屈感はあまりなかったらしい

 

【次ページ】キットがダメージ表現されてないなら自分で作る!

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