この写真はアポロ15号です。真空の宇宙で撮影されているため、司令船と支援船、メインエンジンノズルの質感がシャープにわかるありがたい写真。外板が外されているのは破損ではなく、SIMベイ(Scientific Instrument Module)と呼ばれ、支援船内部に月面電磁サウンダー、赤外放射計、紫外線分光器といった観測機器が搭載されていためです。
■支援船の製作
ある意味今回のモデルの主役とも言えるのが、酸素タンクの爆発で大きなダメージを受けた支援船です。キットは支援船内部の酸素タンクや燃料タンクがパーツ化されていますが、酸素タンクの爆発(原因は酸素タンク組み立て時のネジの外し忘れでタンクが歪み、内部の配線にスパークが発生したため)によるダメージは再現されていません。
作例では、写真を参考に飛行機モデル等のジャンクパーツを利用してそれらしくダメージを再現。とはいうものの、真空中で酸素タンクが爆発したら周囲がススけるのか?とか分からないし、資料と言っても不鮮明なモノクロの画像1枚しかない。あとは、爆発したらこうなるだろうと想像力を働かせて、外板パネルが吹き飛んで、内部はジャンクパーツや配線コード等を利用して爆発のダメージを再現。エアブラシで焼け焦げた質感を塗装しています。
■アルミホイルを使ったダメージ表現
支援船内部は、真空中の太陽光線の輻射熱などから機器を保護するために耐熱シートが多く使われているので、家庭用アルミホイルをシワシワにして貼り付けることで、断熱シートの金属感を再現、爆発して吹き吹き飛ばされた部分にもちぎれたイメージでアルミホイルを使用します。プラ素材との接着には瞬間接着剤を使います。
■塗装、デカール貼り付け
支援船は司令船と違いマイラーフィルムは使われていません。通常のシルバーと白で指定通りに塗分け、デカールを貼ります。その後、後部の主エンジンノズルと機体4箇所に姿勢制御用のエンジンノズルを取り付けます。最後にエッチングパーツで再現されたハイゲインアンテナ(地球との交信に使用)を取り付けます。
■付属の専用ディスプレイスタンド
キットには専用の、アルミ材とプラを使った、質感のある展示スタンドが付属しています。ベースを黒に塗装して仕上げます。画像は塗装が完了した司令船と支援船を借り組みした状態。宇宙船の模型はデスクトップモデルが良く似合う。
★達人流製作のポイント!
①ダメージ表現はイマジネーション全開で
②アルミホイルを使って断熱シートを再現
これで司令船と支援船は完成しました、次回はアポロ13号で救命ボートとして使われた月着陸船を製作します。お楽しみに!
■模型を作りながら知って驚くアポロ計画が残したテクノロジー
NASAが開発し、アポロに搭載されていた小型の軽量浄水ユニットは、銅と銀のイオンを水中に放出してバクテリアを殺菌するというもので、大腸菌・ブドウ球菌・サルモネラ菌など多様な病原菌に対して効果がありました。この浄水システムは、現在プールや噴水、スパ、病院、個人用浄水器などで広く使われています。ちなみに宇宙にもっていった飲料水はコップ1杯で30~40万円になるそうです。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
【関連記事】
◆ジュラルミン&蛇行迷彩「飛燕I型丁」のメッキ仕様キットを製作!【達人のプラモ術<飛燕>】
◆第二次大戦時のアメリカ海軍空母“ビッグE”を洋上ジオラマで製作!【達人のプラモ術<米海軍空母エンタープライズ>】
◆カーモデル製作はボディの塗装から!【達人のプラモ術<NISSAN フェアレディ 240ZG>】
- 1
- 2