【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
1/144 SR-71A ブラックバード
01/03
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。
今回からは、アメリカ空軍の戦略偵察機として20世紀後半に活躍したSR-71“ブラックバード”の製作に入ります。キットはいたってシンプルなのですが、だからこそいかにリアルに再現するかがポイントになります。まずはブラックバードという飛行機がどういうものだったのかの解説から。
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■SR-71ブラックバードをデスクトップモデルで製作
★達人流製作のポイント!★
①組みやすいキットなので組み立てはストレートでOK
②デスクトップモデルにするためスタンドを追加する
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
■マッハ3で飛ぶ規格外な戦略偵察機
現用戦闘機の最高速度を見てみると、F-15はマッハ2.5、ロシアのSu-27がマッハ2.5と、マッハ2級の機体が多いですね。でもアメリカ海軍のF/A-18スーパーホーネットはマッハ1.6、航空自衛隊が採用した最新鋭のF-35Aの最高速度もマッハ1.6にとどまっています。最高速度は実戦ではあまり意味がないということです。
1976年に亡命のために函館空港に飛来したことで有名なソ連のミグ25は、マッハ3で飛行できると言われていました。しかし実際は、マッハ2.8(時速約3000km)が限界だったそうです。また、有人航空機を最高速度だけで見ると、1964年にNASAの高高度極超音速実験機X-15が1967年に樹立したマッハ6.7(時速7274km)が最速で、これは現在でも破られていません。
こうした中にあって、1960年代にロッキード社に開発され1999年まで第一線で活躍した戦略偵察機SR-71は、高度2万5000メートルをマッハ3で飛行可能な航空機でした。
それまでの航空機の常識を超えた速度域での飛行を実現するために、機体は一般的な航空機に使われているアルミ合金ではなく、全体の93%がチタン合金で作られていました(マッハ3で飛行すると機体表面温度が300℃を超え、部分的には700℃以上になり、アルミ合金では強度が維持できないため)。
これ以外にも、
・地上では機体外板が隙間だらけで燃料が漏れまくるため(機体温度が上昇して膨張することで隙間が塞がる)離陸時には最低限の燃料のみで、離陸後機体温度が上昇してから空中給油で燃料を満たす。
・オイルは常温では固体になってしまうので、過熱してから補給しなくてならない。
・通常の航空機用燃料が使えないため、引火点が高いJP-7(毒性がある)という特殊燃料を使用する。
・パイロットは宇宙服に似た高高度用与圧服を着なくてはならない。
・マッハ3での最小旋回半径は100km以上必要。
・着陸前には、基地の周囲を低速で旋回して機体温度が下げてからでないと着陸できない
などなど、高度2万5000mをマッハ3で超音速巡行しようとすると何もかもが規格外になるようです。
なおSR-71は1998年まで実戦配備、その後1999年までNASAで高高度気象観測などに使用され、現在は全機退役しています。
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