■まずはYouTubeを使って動画での遅延をチェック
オーディオのレイテンシなどと呼ばれる音声遅延は根深い問題です。ワイヤレスやオーディオ出力の遅延が原因と思いきや、システムやアプリのバッファに由来する部分もあるし、iPad内蔵スピーカーでも音声遅延はあります。そこで実際にYouTubeの動画とゲームで、実際に映像と音声のズレを測定してみした。遅延の数字はミリ秒(ms)を用いるため、例えば100msなら0.1秒遅れているということです。
まず、テストしたのはYouTubeを使った動画による遅延の比較。遅延テスト用の動画が複数公開されていますが、今回はゲーミングデバイスで有名なRAZERによる『Razer Hammerhead True Wireless Earbuds | Audio Latency Test』(https://youtu.be/ZPaJ3SrUhLU)で検証。音が出た瞬間に一時停止すれば音声遅延をテストできる仕組みです。
YouTubeのプレイヤーは音が正確に一時停止しないため写真は参考値ですが、同じテストを何十回と繰り返しているとデバイス毎の違いは見えてきます。
▼iPad内蔵スピーカーの遅延…約31ms(0.031秒)
▼AirPods Proの遅延…約81ms(0.081秒)
▼Ankerのアダプタを使ったUSBイヤホンジャック変換の遅延…約31ms(0.031秒)
▼オーディオテクニカのUSBイヤホンの遅延…約31ms(0.031秒)
▼SOUNDPEATS「Air3」の非ゲームモード…約69ms(0.069秒)
▼SOUNDPEATS「Air3」のゲームモード…約31ms(0.031秒)
iPad内蔵スピーカー、USBイヤホンジャック変換、Type-Cイヤホン、ワイヤレスのゲームモードが約31ms(0.031秒)で横並び。ここで数字がぴったりと揃うのは、この測定方法の限界です。ワイヤレスの非ゲームモードは約69ms(0.069秒)、ちなみにAirPods Proは約81ms(0.081秒)で最も遅延がありました。
このYouTubeの遅延テストの結果を受けて、体感的にどれだけ一般的な動画で遅延が気になるのかというと…。最も遅延の大きかったAirPods Proの約81ms(0.081秒)でYouTubeの日本語ニュース番組を見ても、口の動きに対するズレは意識して見てもほとんど分かりません。動画視聴用では、よほど遅延の大きなイヤホンでなければ、気にしなくても良さそうです。
■次にアクションゲームで遅延をチェック
次にゲームです。普段楽しんでいる『原神』というアクションRPG。画面にある攻撃ボタンをタップして、ストップウォッチで剣を振る風切音が聞こえ始めるまでの遅延を測定。ゲームの音声なので基準は0秒ではありませんが、同じ『原神』のPS5版で測定したところ約35ms(0.035秒)だったので、この数字を目安にします。
▼iPad内蔵スピーカーの遅延…約33ms(0.033秒)
▼AirPods Proの遅延…約73ms(0.073秒)
▼Ankerのアダプタを使ったUSBイヤホンジャック変換の遅延…約44ms(0.044秒)
▼オーディオテクニカのUSBイヤホンの遅延…約44ms(0.044秒)
▼SOUNDPEATS「Air3」の非ゲームモード…約76ms(0.073秒)
▼SOUNDPEATS「Air3」のゲームモード…約50ms(0.050秒)
iPad内蔵スピーカーが約33ms(0.033秒)で最速。有線接続であるUSBイヤホンジャック変換とType-Cイヤホンが約43ms(0.044秒)。ワイヤレスの非ゲームモードは約73ms(0.073秒)、ワイヤレスのゲームモードが約50ms(0.05秒)、AirPods Proも約73ms(0.073秒)の遅延がありました。
では実際に体感としてどれだけ気になるのかですが、『原神』の場合は内蔵スピーカーや有線イヤホンでは遅延は全く気づきません。ワイヤレスのゲームモードで約50ms(0.05秒)という数字も実用性アリ。約70ms(0.07秒)までいくと、ゲームをプレイしていても若干の遅延を感じます。でも、プレイできますけどね。
YouTube動画、ゲームと比べてみると、内蔵スピーカーが1位で、イヤホンを使うなら、USBイヤホンジャック変換とType-Cイヤホンがベター。ただワイヤレスイヤホンの低遅延ゲームモードも実用レベルで健闘していることも分かりました。動画やゲームの遅延が気になる人は参考にしてみてくださいね。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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