■キャビンの仕上げ
前回はD9Rの特徴的なキャビンを製作しました。キットは車体、キャビン、足回り、さらにドーザー部分がそれぞれブロック化されており、独立して組めます。複雑な形状の車体ですが、思いのほか組みやすいのがありがたいですね。
足回りが完成したら、インスト(説明書)に従って、さらにキャビンの外側の装甲板や外装パーツを取り付けていきます。
車体やドアの各部にはコの字型の手すりが多数付きますが、細く折れやすいので注意が必要です。
車体左側のジェリ缶(予備燃料)のステーはエッチングパーツ折り曲げて製作します。車体下側には後部のリッパーを作動させる油圧パイプが軟質素材で再現されています。
■天板は接着しない
天井パーツは1枚で再現されていますが、接着してしまうとせっかくリアルに塗装して仕上げたキャビン内部がほとんど見えなくなってしまうので、あえて接着せず、外して内部のディテールが見えるようにしました。
■フリウルモデルとは
フリウルモデルはハンガリーのAFVモデル用アフターパーツメーカーで、タミヤをはじめ各社から発売されている1/35、1/48の戦車の金属製の履帯を発売しています。履帯はホワイトメタルを鋳造して1枚ずつ成型されており、組み上げると実物の戦車と同じリアルなディテールを再現できます。
昔の戦車モデルといえば、ゴム製あるいは軟質樹脂製の履帯が使われていました。当時、戦車の模型はモーターライズでの走行が当たり前でした。しかし走行性能を重視して履帯に常にテンションがかかった状態なので、本物の戦車に見られるような自重で垂れ下がった履帯を再現するには無理があったんですね。
近年のキットでは、ディテール重視でプラスチックの連結履帯、あるいは一体成型でも履帯のうねりまで再現したりと、足回りのリアルさが増しています。
しかし「戦車のアイデンティティといったら履帯だろ! そこにこだわらずになんとする!」「より実物に近いディテール再現したい!」「重量感を出したい!」というモデラーに愛用されているのがフリウルモデルの金属製連結履帯です。
本物と同じように金属ピンでホワイトメタルの履帯を1枚ずつ繋いでいく構造なので、手間はかかるのと、いささか高価ではありますが、よりリアルな戦車の履帯を再現できます。
さて足回り完成しました! 金属履帯もリアルで雰囲気もアップ。ここまでくるとモチベーションもぐっと上がりますね。
次回はブルドーザーの顔でもあるドーザーブレードを組んで、車体の完成を目指します。お楽しみに!
【戦車模型豆知識】戦車模型はなぜ1/35なのか?
プラモデルがブームとなった1960年代に発売されていた戦車のプラモデルは、1/20、1/24、1/21などメーカーごとでスケールがバラバラでした。これらのキットは全てモーターライズで、“走らせて遊ぶ”プラモデルでした(当時は走らないと売れなかった)。
こうした中、タミヤが1962年に発売した1/35スケールの「パンサータンク」が大ヒット。もちろんも電動走行する製品でした。
1/35という縮尺は、モーターと単2電池を内蔵するためにちょうどいいサイズだったことから採用されたといわれています。
その後もタミヤは1/35スケールで数々のモーターライズの戦車キットを発売。これらが人気を集めたことから、他社の戦車モデルも1/35スケールに統一されていきました。
1969年にはタミヤがミリタリーミニチュア(MM)シリーズを発売。ドイツ歩兵セットをはじめ、兵士たちのフィギュアが発売されるようになり、AFVモデルというジャンルを確立。戦車モデルもディテールが重視されるようになり、徐々にモータライズモデルは姿を消していったのです。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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