総額約125万円!iPad + Apple Musicでハイエンド・オーディオ構築に挑戦!

■USBからハイレゾロスレスをデジタル出力

今回のハイエンド・オーディオ環境は「iPad ProからApple Musicのハイレゾロスレスをデジタル出力してオーディオ機器とつなぐ」というコンセプトになります。

ハイレゾ流行以降のハイエンド・オーディオはMac/PCをプレイヤーにするパターンが多かったのですが、音楽サブスクのApple Musicがハイレゾロスレス(最大24bit/192kHz)対応となった今では、音源は最上級の条件を満たしているApple Music、デバイスはタッチ操作ができるのでMac/PCより選曲しやすいiPadでいいのではないかと。

そしてオーディオ側はiPad Proの音声出力を受けるUSB DAC、そしてスピーカーを駆動するアンプ、スピーカーが必須になります。

今回は接続用の据え置きUSB DACにティアック「UD-701N」(実勢価格約38万2000円)、パワーアンプに同じくティアック「AP-701」(実勢価格約32万7000円)と、ハイエンド級の機器をお借りしました。

▲ティアック「UD-701N」&「AP-701」。合計で70万9000円

スピーカーは英国スピーカーの名門、Bowers & Wilkins「607 S2 Anniversary Edition 607S2AE」(実勢価格約9万9000円)を用意。ブックシェルフ型のパッシブスピーカーとしては小型サイズです。

▲オーディオマニア的には定番のBowers & Wilkinsの入門モデル「607 S2 Anniversary Edition 607S2AE」を用意

この時点で約81万円。ティアック「UD-701N」&「AP-701」がちょっと高額過ぎましたね。これを発売直後のティアック「AI-301DA-Z」(直販価格5万2800円)に置き換えると約16万円と現実的なお値段に収まったりします…。

そもそも、iPad Proとハイエンド・オーディオのUSB DACってどうやってつながるの? と疑問に思う人もいるかもしれませんが、iPad ProのUSB type-C出力は、一般的なPC接続可能なUSBオーディオデバイスと接続可能な仕様。ティアックのDAC「UD-701N」のUSB入力端子はUSB B端子なので、USB type-C to USB Bのケーブルを用意すれば直結できます。USBのデジタル信号で伝送して、「UD-701N」でアナログの音楽信号に変換するのが理想という考え方です。

▲USB type-C to USB Bケーブルで接続。オーディオ用ではなくPCとプリンタを接続するケーブルと同じです

iPad Pro側は、システムとしての特別な設定は必要なく、ケーブルを挿すだけで自動認識。なお、最大24bit/192kHzのハイレゾ音質で楽しむためには、Apple Musicの設定から、ストリーミング設定を「ハイレゾロスレス」に切り替えておくことを忘れずに。ちなみに、実際の音源は24bit/96kHzまでがほとんどです。

▲Apple Musicのオーディオ品質を「ハイレゾロスレス」に設定

今回はApple Musicのアプリで再生していますが、Amazon Musicも正しくハイレゾ出力で動作します。再生画面で「UltraHD」のアイコンをタップすると、システム上きちんとハイレゾで接続できているかを表示してくれるので親切です。

▲Amazon Musicのアプリで接続状態を確認

ティアック「UD-701N」&「AP-701」のケーブル接続や入力選択など基本的なセットアップを終えると…あとは手元のiPadのApple Musicアプリで音楽を再生するのみ。Apple Musicなら全ての曲をロスレス以上で配信しています。

▲接続が完了したらiPadのAppleMusicのアプリから操作

完成したハイエンド・オーディオで音楽を聞くと…もう、ため息が出ちゃうくらいに高音質。

例えば、ダイアナ・クラール『夢のカリフォルニア』は、2本のスピーカーの中央に浮かぶ艶やかな歌声から絶品。超高解像ながら圧倒的な空間再現に、ウッドベースの低音も空間をゆったり満たすボリューム感と、これぞジャズ・クラブのような音。エド・シーラン『Shape of You』は歌声の空間まで感じる徹底的な再現力に、アコースティックな音の生々しさも最高。現代的な音源でYOASOBI『群青』を聞いても、鮮明で伸びやかな歌声は息遣いまで聞こえるし、歌声の背後に楽器が広がる立体感もスゴイ。リズムの刻みも最高に気持ちいい。さすが、総額約81万円もするシステム。音質も桁違いにイイ。

▲iPad Pro、ティアック「UD-701N」&「AP-701」、Bowers & Wilkins「607 S2 Anniversary Edition 607S2AE」のハイエンド・オーディオ

個人的に、高音質で音楽を聴けるシステムと出会うとワクワクしちゃって、過去に聴いてきたアルバムもひと通り聴き直してみたくなるんですよね。そんな時も、iPad ProのApple Musicで再生している今回のシステムなら、サブスクで約9000万曲をロスレスで聴き放題。便利過ぎです。

▲昔よく聞いていたスピッツがいい音過ぎてグッときました…

もしかすると、iPad Proからティアック「UD-701N」をつなぐ有線のUSBケーブルはどうにかならないものかと思うかもしれません。一応Bluetoothのワイヤレス接続も可能です。しかも「UD-701N」はAndroid系ならハイレゾワイヤレス対応なので試してみたのですが、iPadのBluetoothはAACコーデックの不可逆圧縮、音質の技術的限界が低く情報量が落ちて残念な結果に…。オーディオマニアなら、USBケーブルで有線接続する今回の方式がベストです。

▲Bluetooth接続も可能だが、音質面では非推奨

iPadから再生してスピーカーで音楽を効くハイエンド・オーディオは、ひとまず完成。でも、現代的なハイエンド・オーディオって、ヘッドホンによる音楽リスニングという頂点も存在するんですよね。ティアック「UD-701N」はヘッドホン出力用のアンプとしても優秀なので、ヘッドホンリスニングの両立も目指してみましょう。

そこで用意したヘッドホンは…かなりガチ系なヘッドホンメーカーfinalの最上位有線ヘッドホン「D8000 Pro Edition FI-D8PPAL」(実勢価格43万8000円)。これで総額は約125万円に到達してしまいました。

▲final「D8000 Pro Edition FI-D8PPAL」でヘッドホン環境もハイエンドに挑戦

▲ティアック「UD-701N」とヘッドホンは、伝送ロスの最も小さいバランスのXLR端子で接続

さっそくfinal「D8000 Pro Edition FI-D8PPAL」で聴いてみると、音空間の広がりと透明感を追求した究極のナチュラルサウンド。どんなジャンルの楽曲でも聴けます。例えば、エド・シーラン『Shape of You』ではコーラスが入った際のサウンドフィールドの広さ、立体感がとんでもない。思い切り音量を上げてもいい音で聴けるヘッドホンなので、音楽への没入感抜群です。

▲ヘッドホンによるハイエンド・オーディオ環境も構築

本来の目論見は、僕の手持ちの「11インチiPad Pro(第3世代)」(2021年モデル)から20万円くらいの予算で高音質化のつもりで考えていたのですが…どこで何を間違えたのか、総額約125万円のとんでもないシステムを構築してしましました。でも、ハイエンド・オーディオの世界って、値段と音質が比例しているところもあって、だからこそオーディオマニアは高額なオーディオ機器に手を出す沼にハマっていくんです。

そんな総額約125万円のシステムでプレイヤーという重要なシステムの一端を担えるiPadって、正直安すぎじゃありません? 「ロスレスオーディオ」のApple Music個人月額980円も、これだけ活用すればお得過ぎますね。

>> 【iPadで始めるAV環境最強化計画】

 

<取材・文/折原一也

折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長

 

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