■サボイア マルケッティ S.55
飛行艇とはいえ、S.55はかなり独創的なスタイル。キットは記録機仕様ですが、本来はイタリア空軍の爆撃機です。双胴の艇体と分厚く全幅が24メートルにもなる主翼を持ち、操縦席は主翼前縁部分にあります。主翼上部にエンジン用のやぐらが組まれ、12気筒500馬力のエンジンをプッシュプル方式(縦に並べて搭載)で2基搭載。尾翼は艇体から後ろに伸びたブームの先端に配されています。
初飛行は1923年(大正12年!)8月。こんなスタイルながら安定した性能で、爆弾や魚雷を積んで最高速度279km/hで3500キロを飛ぶことができました。
1931年と1933年、当時のイタリア政権は、自国の工業力を誇示する目的で、空軍大臣イタロ・バルボに率いられたS.55の24機編隊をイタリアのオルベテッロからアメリカ合衆国のシカゴまで飛行させています。また大西洋航路では民間タイプのS.55が最大10人の乗客を運べる旅客飛行艇として運航されていました。
第二次世界大戦が始まると軍用型が実戦に投入されましたが、時代遅れですぐに退役させられています。
にしても、むき出しのフィアットA.22Rエンジンとオープンコクピット。時代を感じさせますが、パイロットの頭上でプロペラが回っているのって、緊急脱出時とかすごく危なそうな配置ですよね(当時はこうしたエンジン配置の機体が多い)。
■サボイアっつったら赤い機体でしょ!
今回製作したのは軍用機仕様ではなく、記録機仕様のS.55です。作例は、1927年ブラジルの名パイロット、ジョアン・リベイロ・デ・バロスが大西洋横断で使用した赤いS.55ジャウー号をチョイスしました。「サボイアっつったら赤しかないでしょう!」という編集部からのリクエストで赤い塗装に決定(笑)。
キットには1927年2月13日~6月16日にかけて、セネガルのダカールから大西洋を越えて南北アメリカ大陸の飛行を行ったサンタ・マリア号のデカール(銀塗装の機体)も付属しています。
■キットの製作
1/72スケールで翼幅が33cmにもなるサイズなのですが、箱が意外に小さい。開けてみたら主翼は3分割、艇体も三面合わせで組むなど見事にバラバラ。エンジンはレジン製で、細部までよく再現されています。これにエッチングパーツを組み合わせることで、細部まで精密再現を果たしています。
キットは、組みにくくはないのですが、エッチングパーツの処理など、一定の工作スキルは必要になります。第1回となる今回はエンジンと左右の艇体を製作しました。
* * *
さて次回はいよいよ主翼を製作。今回製作した艇体と組み合わせて、機体の完成を目指します。昨今、自分の腹を見るたびに『飛べない豚はただの豚』なんだよなぁと痛感しております。お楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
【関連記事】
◆科学×プラモ=男のロマン!? バンダイ「1/48 しんかい6500」をジオラマ化!【達人のプラモ術<しんかい6500>】
◆映画にもなった宇宙船「アポロ13号」の破損状態を製作!【達人のプラモ術<アポロ13号>】
◆なんと1957年製!古き良きアメリカのプラモデルを作る【達人のプラモ術<パイパー・トライペーサー>】
- 1
- 2