■たかが張り線されど張り線
今回制作したS.55は複葉機(主翼が2枚上下に設けられた機体)ではありませんが、胴体ブームや尾翼には多くの補強用ワイヤーが張られています。
1920年代の複葉機といえば翼は布張り、機体は木製で強度がありませんでした(正直エンジンがついた凧みたいなもの)。その上、エンジンも非力だったので、揚力を稼ぐためには翼面積を大きくする必要があったのですが、なにせ布と木でできた機体では大きな翼を支える強度が保てなかったんですね。そこで小さめの翼を2枚上下に配置して翼面積を確保、さらにその間にワイヤーをめぐらすことで強度を持たせたワケです。
しかしワイヤーは細くても抵抗が大きく、速度低下の原因にもなっていたそうです。また飛行中ワイヤーの風切り音も大きいのだそう。
模型的には、古き良き時代の複葉機や今回のS.55 のような機体では、補強のために張り巡らされた張り線は避けては通れない必須工作です。
まぁそこはそれ、自由に作ってこそのプラモですから、必ず張り線を付けなければいけないというワケではありませんが、リアルな完成度を目指すのならばチャレンジあるのみです。
ちなみにキットには張り線の取り付け位置は指定されていますが、付属はしていないので自身で用意する必要があります。
■真ちゅう線を使った理由
張り線の再現ですが、木綿糸やテグス(釣り糸)などがよく使われています。髪の毛を使ったという作品もありました。近年では張り線を再現する専用アイテム(メタルリギング、ストレッチリギング)等があるので、よりリアルに再現できるようになりました。
張り線はキットのスケールによって変わるので、太さの違うものが何種類か揃っています。また使われている部位によっても太さが違う、英国機では平板状のワイヤーが使われている、さらにこだわるならばターンバックル(後で解説)の工作も必要等々、なかなか奥が深いのです。
今回、S.55では、太さ0.2ミリの真ちゅう線を使って胴体後部と尾翼に集中している張り線を再現しました。また動翼類の作動索も同じく真ちゅう線を使用しています。
S.55は、イモ付けだった尾翼類は真ちゅう線で補強したとはいえ、強度がありません。糸やリギングを使った場合、どうしてもパーツにテンション(引っ張る力)がかかってしまうので、曲がってしまったり破損する恐れがあります。真ちゅう線を各部位に合わせて長さをカットし接着することで、パーツにテンションをかけずに済みます。ちなみにターンバックルの再現はスケールも考慮して省略しています。
※ターンバックルとは、ワイヤーの張りを調整するための道具で、複葉機では、張り線の基部に取り付けられています。