■「アプリ」がお財布の代わりになる
現金を入れる財布には、いろいろなタイプがありますよね。クレジットカードなどをまとめて収納できる長財布があれば、硬貨や折りたたんだ紙幣が入るだけの小銭入れもあります。
スマホ決済で「財布」に相当するアプリにも、いろいろな種類があります。いろいろな決済サービスをまとめて管理できるアプリもあれば、ひとつの決済アプリのために設計された専用のアプリも当然あります。
例えば、iPhoneでは標準で「Wallet(ウォレット)」アプリがインストールされています。このアプリには、Suicaのような電子マネーカードや、登録したクレジットカード、ポイントカードなどを登録できます。文字通り、スマートフォンのアプリとして、ウォレット=財布の役割を果たすのです。この場合、決済時には、支払いに使うのがSuicaなのか、クレジットカードなのか選ぶ必要があります。Androidでは、「おサイフケータイ」や「Google Pay」などがこのタイプです。
一方、「PayPay(ペイペイ)」のような決済サービス専用のアプリでは、PayPayのサービスで使えるお金を保存しておき、対応のお店などで決済を行うといった機能が、その基本になります。
そして、こうした決済サービス専用アプリから仮想のクレジットカードやプリペイドカードなどを発行した場合、前述の長財布的な機能を備えたアプリ(「Wallet」や「おサイフケータイ」など)で管理するようになります。この連携の存在こそ、入門者にとってスマホ決済が分かりにくく感じる原因のひとつかもしれません。
■支払い方法は大きく3つある
さて、現金で決済をする場合は、店頭のレジなどで紙幣や硬貨を店員に手渡すだけとシンプルです。
しかし、スマートフォンのアプリに入れておいた“お金”を使って決済を行う場合は、複数の支払い方法が出てきます。ここでは、主要な3つの支払い方法について大まかに理解しておきましょう。
1つ目は、非接触決済です。これは、駅の改札でSuicaをかざして決済する仕組みと同じです。店頭のレジなどに設置された専用の読み取り機器(リーダー)に対して、スマートフォンをかざすことで支払いが実行されます。ただし、非接触決済は、専用のチップを搭載した対応スマートフォンでないと利用できません。
2つ目は、オンライン決済としての利用です。スマートフォンはインターネットに繋がっているので、支払いをする相手が必ずしも目の前に居なくても大丈夫なのです。例えば、ECサイトなどの決済画面で、支払い方法としてスマホ決済を選択すると、スマホ決済の残高を使用して支払いが行えます。感覚的にはクレジットカードなどと同じですね。
3つ目は、コード決済です。厳密には2通りの使い方があります。
まずは店頭に設置された二次元コードを、スマートフォンのカメラを使って読み取って、決済を実行する方法です(ユーザー読み取り方式・ユーザースキャン式、MPM方式)。この手順では、買い物で支払う合計金額をユーザー自身がアプリに入力して、レジの店員に目視で確認してもらう必要があります。
もうひとつはスマートフォンのアプリの画面に表示されるバーコードを、レジのバーコードリーダーで読み取ってもらって、決済を実行する方法です(店舗読み取り方式・ストアスキャン式、CPM方式)。
なお、上記のような支払い方法の流れが同じでも、店舗やサービス側の導入状況によって、使用できるスマホ決済のブランドは変わってきます。例えば、喫茶店でPayPayのコード決済(ユーザースキャン式)が使えたとしても、ほかのブランドのコード決済も同じように使えるとは限りません。店舗の場合には、入口やレジ横などにどのブランドのロゴが表示されている場合が多いので、これらを確認しておく必要があることを知っておきましょう。
■どうしてスマホ決済が普及したのか
どうして「スマホ決済」がここ数年でこれほど勢いを増したのか、理由を考えてみます。
そもそも、電子マネーや携帯端末を使った決済サービス自体は、新しい概念ではありません。
例えば、JR東日本が交通系電子マネーの「Suica」を提供したのは2001年のこと。20年以上も昔のことです。NTTドコモが「おサイフケータイ」を提供しはじめたのも2004年でした。
スマートフォン登場後は、2015年の前後くらいからコード決済サービスも徐々に登場していました。老舗では「LINE Pay(ラインペイ)」が2014年末から提供開始。現在はメルペイに買収されサービスを終了していますが「Origami Pay(オリガミペイ)」なども2016年から提供されていました。
また、この頃から非接触決済のバリエーションも増えていきます。2016年には、iPhone 7/7 Plusが「Apple Pay(アップルペイ)」でSuicaを使えるようになりました。「Google Pay(旧Android Pay)」の日本上陸も2016年のことでした。
しかし、スマホ決済が爆発的に注目されたのは、2018〜2019年頃のことです。この頃には「キャッシュレス元年」や「コード決済元年」のような表現が多用されました。
実際、「d払い」や「PayPay」の提供が始まったのは2018年で、旧「au Wallet」が「au PAY」へとリブラディングされたのも2019年。「メルペイ」が提供されたのも2019年でした。
その背景には、日本政府がキャッシュレス化の推進を支援したことが大きく影響しています。2025年までにキャッシュレス決済率を40%まで上げる目標が掲げられたのです。施策としての目的は複数ありましたが、特にインバウンド需要の増加が見込まれていたこともあり、中国ですでに普及していた二次元コード(いわゆるQRコード)決済の普及が急務だったことが、市場での強い推進力になったと言えるでしょう。
こうした背景のもと、コード決済サービスを開始した各社は、シェアを獲得するために資本を注ぎ込み、大規模なポイント還元のキャンペーンを実施しました。黎明期には、抽選で約10万円分の買い物が実質無料になるような還元もあり、とても注目されたのです。
昨今は、こうした大規模な還元キャンペーンはほぼ無くなりましたが、それでも還元率が高めのキャンペーンが実施されたり、クーポンが配布されたりすることはまだあります。そして、サービス自体の普及が進んだことで、非接触決済用の読み取り端末がないようなお店でも、コード決済は導入されていることが増え、純粋に「スマートフォンで決済が行える便利な手段」としての認知度も高まりました。
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第2回は、本稿では割愛した「プリペイド式/ポストペイ式」の違いや決済サービスの具体的なブランドなどについて、深掘りしていきます。
<文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter
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