■ノーヘルで乗ってもOK?
「無免許で、しかもノーヘルで乗れる」と言われることの多い特定小型原付ですが、運転者にはヘルメット着用の努力義務が課されています。自転車でもヘルメットの着用は努力義務とされていますから、20km/hで走る電動キックボードで着用すべきなのは考えてみれば当たり前。警察庁でも「自分の命を守るため、乗車用ヘルメットを着用しましょう」と呼びかけています。
着用するヘルメットはバイク用ではなく自転車用のもので大丈夫。通気性の良いものが多いですし、近年はおしゃれなデザインのものも増えているので、電動キックボードに乗る際はヘルメットを着用しましょう。ちなみに、原付一種扱いの電動キックボードはバイク用のヘルメットが義務で、罰則もあります。
■歩道を走れる?
歩道を走れるようになったのも法改正のポイントですが、歩道走行が許されているのは特例特定小型原付という“特例”が付いたモデルだけ。“特例”に当てはまらない特定小型原付は歩道を走ることができませんので注意しましょう。
特例特定小型原付は、6km/h以下で走行するモードを備えており、同モード時は最高速度表示灯を点滅させていることが条件になります。歩道を走行する際には、モードを切り替えて6km/hを超える速度で走れないようにしなければなりません。アクセル操作で6km/h以下に調整する、では歩道は走行できません。
また、特例特定小型原付が走行できる歩道にも規定があります。走行可能なのは「普通自転車等及び歩行者等専用」の標識や路面表示が設置されている歩道、もしくは歩道側に設置された自転車道になります。“特例”特定小型原付であり、走行可能な歩道、というふたつの条件が揃っている場合のみ歩道の走行が許されています。また、歩道を通行するときは、その歩道の中央から車道寄りの部分か、普通自転車通行指定部分を通行する必要があり、歩行者優先で、歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならないと規定されています。
今回新設された特定小型原付をまとめると以下になります。
特定小型原付=最高速度20km/h、性能等確認シール付き、免許不要、ヘルメット着用努力義務
特例特定小型原付=特定小型原付に「6km/h+ライト点滅」の歩道モードが付いたもの
■では、どこを走ればいい?
前述のように特例特定小型原付は、普通自転車の通行が許されている歩道を6km/h以下で走ることができるのですが、基本的には「車道を走る」とされています。
車道では左端に寄って走行することとされていて、右側を走ることはできません。また車道の左端に自転車専用通行帯(自転車レーン)や自転車ナビラインが設けられていることがありますが、そこを走ることは可能。また、自転車道の走行も認められています。
道路の左側に設けられた路側帯の中も走ることができますが、歩行者専用路側帯(2本線になっている路側帯)の中は走行することができないので注意しましょう。歩道の側に自転車道が設けられているいわゆる自歩道の自転車道部分は歩道走行モードで走行できますが、歩道部分を走るのは違反になります。
■交差点はどう曲がればいい?
交差点を左折する場合、手前30mからウィンカーで左折の合図を出し、できるだけ道路の左端に沿って十分に速度を落として曲がるものとされています。その際には、横断中の歩行者の通行を妨げないように注意して曲がらなければなりません。
注意が必要なのは右折。特定小型原付は青信号で交差点の向こう側まで直進し、その地点で止まって右に向きを変え、前方の信号が青になってから進む、いわゆる「二段階右折」をしなければなりません。以前行われていた特定小型原付の実証実験(電動キックボードのレンタル事業)では、二段階右折は禁止となっていましたが、今回の法改正では信号のある交差点での二段階右折が義務となっています。
■保険はどうすればいい?
特定小型原付には一般の原付などと同じく自賠責保険の加入が義務付けられています。現状では、一般の原付と同じ保険料が適用されますが、2024年4月以降は特定小型原付のための新しい保険料が適用される予定。その新しい保険料が、原付の保険料より安くなる場合については、相応の差額が返還される見込みです。
■そのほかの注意すべき違反行為は?
一般の原付や自転車などと同じく、スマホを操作しながらの走行や飲酒運転は当然違反となります。また、2人乗りも禁止されているので、ステップボードの部分に子どもを乗せたりすることも違反です。通行止めや車両進入禁止、一方通行、指定方向外進行禁止の標識にも従う必要があるので注意しましょう。ただし、「自転車を除く」の補助標識がある場合は特定小型原付も通ることができます。
■違反をしてしまった場合はどうなる?
ここまで紹介してきた法令に違反した場合、ヘルメットの着用を除いて罰則が設けられています。
例えば、車道通行の原則に反した場合の罰則は「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金等」とされています。ただし、今回の法改正で特定小型原付の運転者による道路交通法違反も交通反則通告制度の対象とされました。
この制度は、道路交通法に違反する行為のうち、比較的軽微なものについて反則金を納付すれば裁判所の審判を受けないで事件が処理されるというもの。いわゆる青キップのでの処理です。反則金は罰金に比べても安く、例えば通行区分違反であれば6000円です。
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特定小型原付に分類される電動キックボードについての法改正について書いてきましたが、走行ルールについては概ね自転車に近いと考えればいいでしょう。走行できる歩道は限られますが、実はそれは自転車も同様。電動キックボードに乗らない人も、この機会に道交法について確認しておくといいかもしれません。
【2023年7月18日15:55更新】二段階右折および走行可能な歩道に関する記述について修正および追記しました。
<取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍 協力/長谷川工業>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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