■ウェザリングパステルとスミ入れ塗料を使った汚し塗装
車体のデカールが乾燥したら、いよいよ汚しを入れていきます。今回使用したのはMr.ホビーの「ウェザリングパステルセット」とタミヤの「スミ入れ塗料」3色、「リアルタッチマーカー」の3アイテムです。
ウェザリングパステルは、パステルの微粉末で、錆の表現に“ラストオレンジ”、煤や排気汚れの再現に“チャコールブラック”、ホコリっぽい汚れに“ライトグレー”を使います。使用方法はそのまま、あるいは水性アクリル塗料のつや消しクリアーで溶いて使用します。
タミヤスミ入れ塗料はエナメル塗料なので、ウォッシング塗装(※1)の際にも、車体の塗装に使用しているラッカー塗料を侵しません。なので車体全体のウォッシング、ウェザリングパステルと併用して、錆やエンジン周りの煤汚れの再現に使っています。
(※1)ウォッシング塗装
ウェザリング塗装に、ウォッシングという技法があります。ウォッシング(washing)とは洗浄、洗うという意味ですが、ウェザリングの場合は、塗装面全体に薄めたエナメル塗料を塗り込んでから、エナメル溶剤で洗う(拭き取る)技法のことを言います(※水性アクリル塗料で塗装している場合、エナメル塗料でのウォッシングは不可。またエナメル塗料はABS素材を侵すので同じく使用できない)。
■ウェザリング実践
作業はまずスミ入れ塗料のダークブラウンで車体全体をウォシング。この際にスミ入れ塗料は攪拌せず、あえて上澄みを使うのがポイントです。攪拌してしまうと濃くなりすぎるので後の拭き取りが大変になってしまいます。
乾燥後にエナメル溶剤を含ませた綿棒でダークブラウンをふき取っていきますが、パーツの凹凸部部には塗料が残るので、立体感が強調され、またダークブラウンを使ったことで土の汚れ感が出てきます。
ウェザリングパステルは水性アクリルのつや消しクリアーで溶いたものを面相筆で塗布します。ラストオレンジをボルトや溶接部分に塗ることで、赤錆が表現できます。濃い目に溶いたものを塗るとサビでグズグズになった感じも表現できますよ。
エキゾースト周りはチャコールブラックを溶いたものを使い、煤けた感じを再現します。同時にエンジン全体はスミ入れ塗料のブラウンでウォッシングすることでオイルの汚れ感が出せます。
タイヤにはウェザリングパステルのライトグレーを粉のまま塗布して、ホコリっぽい褪せた感じを表現できます。ただし粉のままのウェザリングパステルは定着しないので、軽く艶消しクリアーでオーバーコートしておく必要があります。
最後にリアルタッチマーカーのグレー3(黒)を使い、塗装が剥げたチッピング(※2)を描き入れていきます。チッピングは均一にならないようにランダムな傷、」スクラッチ状の傷を表現できます。工事現場のブルドーザーやトラックの汚れや塗装のハゲチョロが参考になりますよ。
(※2)チッピング
チッピングは「欠ける」という意味。模型のウェザリング塗装では硬いものぶつかったり、擦れたことで塗装が剥げて下地塗装や金属地肌が露出してしまった状態を再現した塗装のこと。
■ウェザリングを失敗しないコツ
ウェザリングを施すことで作品のイメージは大きく変わるので、楽しいディテールアップ塗装といえます。実際作業でもウェザリングを進めると作品の表情がみるみる変わっていくので、ついついもう少し、もうちょっと汚すか〜となるのですが、気をつけないといけないのが汚し過ぎです。
気がついたらウェザリングをやり過ぎて、スクラップ見たいな仕上がりになってしまった…なんてことがままあります(経験者)。なのでウェザリングはどういうシチュエーションで仕上げるかなど、しっかりした目標をもって作業を進めること。そして「う〜んこんなもんかな」と全体のバランスを見ながら控えめな仕上げがちょうど良い塩梅になると思います。
* * *
ということで、ウェザリング塗装が完了、オンボロウィリスMBが完成しました。
次回はこれにサーフボードを積んで60年代サーファー仕様に仕上げていきましょう。さらにせっかくなので簡単なベースを制作、以前紹介したポルコロッソやブガッティ100Pのようなビネットとして仕上げようと考えています。
さてロングボードをどんなデザインで塗りましょう? 次回、ウィリスMB60sサーファー仕様 完成編をお楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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