プラモ塗装の必携ツール「エアブラシ」の種類と選び方【達人のプラモ術<エアブラシ編>】

【達人のプラモ術】
ホビーの達人流HowTo
<エアブラシ編>
01/03

さて今回の達人のプラモ術は、プラモ製作ではなく模型塗装では欠かせない存在とも言えるツール“エアブラシ”について解説していこうと思います。

達人の模型塗装でも必ずと言っていいほど登場するエアブラシは、プラモ塗装のクオリティと表現の幅を広げるのに欠かせない塗装ツールです。現在では塗装用途に応じて多くのバリエーションモデルがあり入手しやすくもなりました。

プラモ塗装をより楽しみたい、よりクオリティの高い塗装に仕上げたいとなれば必携ツールとなっていると言って良いでしょう。

そこで今回は、達人的エアブラシの選び方、使い方、メンテナンス等といったHowToを3回連続で紹介していきます。使って見たいと考えている方、エアブラシの購入を考えている方必見ですよ!(全3回の1回目)

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■意外と知れていないエアブラシの歴史

エアブラシはもともと模型塗装用ツールではなく、写真の修整やアートの分野で使われていたものです。歴史は意外に古く、1876年に塗料を霧にして吹き付けるツールとして特許が所得されてるんですね。知らんかった(爆)。

圧縮した空気を使うことで塗料を霧状に噴霧できるエアブラシ。缶スプレーと違うのは、塗料の吹き付け量をコントールできる、色を入れ替えられる、といった点です。

ムラのない塗装面、筆や刷毛では得られない極細線のボカシやグラデーションなど、多彩な表現ができる塗装ツールとして改良進化。現在ではホビーのペイントをはじめ、ファインアート・ネイルアート・メイクなど広い分野で使われています。

 

■プラモデル塗装ツールとしてのエアブラシの原点

国内でプラモデル塗装用としてエアブラシが広く使われるようになったのは1970年代の後半だったと記憶しています。

当時、プラモデルの塗装は筆塗りが当たり前。模型用の缶スプレー塗料だってまだまだ登場したばかりの時代ですから、筆でペタペタプラモデルを塗っていた中学生に、自在に塗装をこなせるエアブラシの存在は衝撃でした。

とは言うものの、達人は当時まだ中学生。プラモデルが50〜500円、塗料も50円(レベルカラー)で購入できた時代です。そんな時代にエアブラシの価格は1万5000円前後と、とてもじゃないけれど中学生に手ができるものではありませんでした。

しかしそこに救いの手が登場しました。国内でエアブラシの製造販売をしていたオリンポス(※1)から、安価なエアブラシ「ピースコン・ヤング」が発売されたのであります。

多くの模型店で販売され、ホビーシーンでエアブラシ普及に大貢献した名機です。価格は確か5000円でした。アート用のエアブラシと比べて安いとは言っても100円のプラモデルを買うのに1時間悩む中学生にとって5000円ってのは超高価アイテムだったことは言うまでもありません。

今でこそ、さまざまなモデルがあり、価格もこなれて、選択肢も多いエアブラシですが、当時のモデラー的には、ほとんどコレ一択。この「ピースコン・ヤング」でエアブラシデビューを果たしたという人は多いはずです。かく言う達人も清水の舞台から岩を抱えて飛び降りる決意で、小遣いを貯めて「ピースコン・ヤング」を購入しました。

「ピースコン・ヤング」はシングルアクション(※2)で、塗料を入れるカップは右側に設けられたサイドカップ式。エアブラシ本体を専用のエアボンベに直接取り付けて使用するタイプでした。塗料の噴出量はニードル後端のノブを回して調整します。別売りのジョイントを使えばホースをコンプレッサーに繋ぐことができましたが、当時はコンプレッサーも高価(4万円前後)で、当然ながら中学生に買えるものではありませんでした。

基本は圧縮エア(フロンガス)を使った専用のエア缶を繋いで使ってました。購入時に1本付属。しかしこれがすぐになくなってしまうんですよ。塗装だけでなく、塗料を変える際の洗浄でもエアは使います。まぁ当時、塗装の腕もなくロスも多かっとはいえ、付属の420ml缶では1/72スケールの飛行機を一機塗ることもできませんでした。

もちろんエア缶は単体で購入できましたが、当時で700円前後とそれなりに高価だったんですねぇ(おバカ中学生だった達人は、缶を逆さまにして吹くと出る生ガスで『冷線砲発射!』などと遊んでいたので、肝心の塗装時にはガスが足りなくなりました)。

また連続してエア缶を使っていると、気化熱で缶が霜が付くくらい冷たくなり、エア圧が低下してしまうのにも泣かされました。それでも、筆塗りに比べて塗装がキレイに仕上がるエアブラシは手放せない存在になりました。

エアブラシは基本的なメンテナス(摩耗するOリングの定期的な交換などを含む)をしっかりとやっていれば、10〜20年は問題なく使い続けることができるツールです。

▲「ピースコン・ヤング」は多くのモデラーに愛され、改良されつつ長期わたって販売されたロングセラーモデルだった。のちに「ヤング88」とネーミングも代わり、写真はさらに改良され名称も「ピースコン・ヤング8」となった最後期の頃のモデル。価格も8500円と高くなった

▲ヤングシリーズにはボンベが1本付属したが、容量が少なく、1本では1/72スケールの飛行機も塗り上げることができず、エアブラシの清掃なども考えると最低でも3本は必要だった

▲このデッサン風のパッケージイラストに郷愁を覚えるモデラーは多いだろう

▲塗料の吹き出し量は、本体後端のダイヤルを回すことで調整できた。使用後に締め忘れるてノズルから塗料が全部垂れ出ててしまった経験を持つモデラーは多いはず

(※1)オリンポス社
国内の老舗エアブラシメーカー。2008年、オリンポス社は営業活動を停止。2014年3月末に会社も廃業している。現在は同社の元スタッフにより通販サイトが運営されており、在庫がある製品は現在でも入手可能となっている。

>> オリンポスエアーブラシオンラインショップ

(※2)シングルアクション
ボタンを押すだけでエアーと塗料が同時に出るタイプのエアブラシ。塗料の噴出量は後端のダイヤル状のノブを左右に回すことで調整できる。構造がシンプルなので扱いやすいが、吹いた後に吐出量調整ノブを閉め忘れるとノズルから塗料が垂れてしまうという弱点がある。

 

■エアブラシの現在

国内では、タミヤ、GSIクレオス、エアテックス、アネスト岩田、ウエーブをはじめ9社がホビー用の高品質なエアブラシを発売しています。基本的にはどのメーカーを選んでも大丈夫。模型用塗料に対応した設計となっていて、ホースや水抜きフィルターを接続するためのジョイントの口径も規格が統一されている(一部簡易モデルを除く)ので共用も可能ですし、各メーカーとも修理対応や、ニードルやノズルといったパーツ単体での販売にも対応しています。

近年は海外製の安価なエアブラシも数多く流通しており、通販サイトなどで販売されています。エアブラシの敷居を下げたという点では、こうした安価モデルもありがたいのですが、一部では精度の悪さ、保障やパーツの販売がないためにトラブルになった、壊れたらそれまで、といった問題も起きているようです。

長期的な使用を考えたら、高価であってもアフターサービスがしっかりとしている国内ブランドをオススメします。使い込むとエアブラシには愛着も湧いてきますしね。

 

【次ページ】大まかに3タイプに分かれるエアブラシそれぞれの特徴とは

この記事のタイトルとURLをコピーする