■複葉機の張り線
お待たせしました! 複葉機製作のキモ! 翼間張り線の取り付けです。
複葉機は翼を2枚重ねることで、エンジンが非力でも機体を飛ばすのに必要な揚力を確保でき、また運動性も良かったんですね(小回りが利いて格闘戦が得意)。第一次世界大戦で活躍した複葉機の多くは、翼が布張り、機体は木製だったこともあり、大きな翼は強度が保てない。そこで短い翼を上下に配置して、翼間や機体各部にワイヤーをめぐらすことで、機体の強度を保ちながら翼面積を確保していました。例外的に張り線のない機体もありましたが、張り線は複葉機を象徴する存在でもありました。
しかし翼間に張られたワイヤーは、空気抵抗が非常に大きく、飛行機の速度が向上するにつれてその存在が問題になりました。その後、製造技術の向上に伴う翼の強度向上で単葉機が登場。複葉機はその座を譲ることになります。
ちなみに現代の複葉機は機体強度が高いこともあり、張り線は使われていません。
■しかしやっぱり複葉機といえば張り線!
今回製作のブリストル・ブルドッグは、ガッツリ張り線がある機体です。しかし最新の複葉機キットということもあり、組みやすく精度も高いので、初めて複葉機を作る方にもオススメの機体です。
張り線に関しても、取り付け位置にガイドとなる凹穴がモールドされています。
またほとんどの複葉機のキットには、張り線で使用する糸やワイヤーなどは含まれていないので、制作者自身で用意しなくてはなりません。最近では第2回で紹介したメタルリギングやストレッチリギングといった複葉機の張り線に特化したアイテムも発売されています。
■0.2mmピアノ線のメリットとデメリット
今回の作例では、メタルリギングやストレッチリギングではなく0.2mmのピアノ線を使用しています。リギングのように張るのではなく、ワイヤーが張られている部位に合わせて、ピアノ線をカットしてはめ込んでいます。
張り線に使用できる細い金属線としては、真ちゅう線や洋白線などもありますが、真ちゅう線は0.2mmともなると簡単に曲がってしまうという難点があります、洋白線は真ちゅう線よりわずかに硬く使い勝手は良いのですが、真ちゅう線ともども、張り線として使用する場合は塗装をしなくてはいけません。
ピアノ線は硬い金属なので、切断には金属線用のニッパーが必要になります。しかし硬く剛性があるので、はめ込みで多少たわませても曲がることがありません、また初めから黒く染められているので塗装の必要ありません。接着固定には瞬間接着剤を使用します。
■瞬間接着剤とプライマー
今回張り線に使用しているピアノ線は、瞬間接着剤で固定しています。使用しているのはアルテコ「瞬間接着剤731(耐衝撃用)」です。
張り線の接着剤は点付けになるので、衝撃に強いタイプの瞬間接着剤をオススメします。また硬化促進剤を併用することで、よりしっかりと固定できます。
* * *
というワケで今回はここまで! 次回第5回も引き続き張り線の取りつけ、そして機体のデカール貼りを進めます。お楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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