2017年「WRC シーズン報告会」で実感。2018年のトヨタはもっと強くなる!

■往年の名ドライバーを信じた豊田章男社長とトヨタ

報告会には、報道関係者のほか、1000名を超える応募の中から選ばれた約30名のファンが参加。冒頭、トヨタ自動車の専務役員で、GAZOO Racing Companyプレジデントの友山茂樹氏があいさつに立ちました。

チーム監督を務めるトミ・マキネン氏との出会いについて「2014年にマキネン氏がつくったクルマを“モリゾー”こと豊田章男社長がドライブしました。問題があればその場で直し、また走らせるという姿に、トヨタが忘れていた何かを思い出させられたのです。フィンランドから帰国した豊田社長は、WRC参戦を決定しました」と振り返り、マキネン氏との出会いがWRC参戦のきっかけになったことを明らかにしました。

参戦が発表された当時は、トヨタ側とマキネン側のどちらがイニシアチブを取るかについて決まっておらず、ぶつかることも多かったとのことですが、豊田社長の「マキネンを信頼せよ」という言葉で、マキネン氏をチーム代表とし、トヨタはエンジン開発を担当するという分担が決まりました。

「そこから参戦開始までの1年間は、クルマを走らせては壊し、現場で直してカイゼンし、また走らせるというプロセスを繰り返しました。その中で、トヨタとマキネンは一心同体となっていったのです」と友山氏は振り返り、それが、シーズン開幕戦モンテカルロラリーでの2位表彰台、第2戦スウェディッシュラリーでの優勝という「できすぎ」(友山氏)の結果につながったといいます。

2018年シーズンは、これまでのヤリ-マティ・ラトバラ選手、エサペッカ・ラッピ選手に加え、新たにオット・タナック選手を迎え、3台体制にチームを強化するトヨタ。友山氏は「シリーズチャンピオン、そしてマニュファクチャラーズタイトルを狙います」と熱く語ります。

一方、友山氏は、WRC参戦で得られたものについて「WRCは年間全13戦。それぞれ平均20のステージを走るので、1年間で260回の車両開発実験を行っているようなものです。そこでの経験は、GAZOO Racingの手掛けるスポーツモデル『GRシリーズ』などの商品にもフィードバックされています」といいます。

市販車をベースとしたマシンで戦うWRCは、ヨーロッパでは市販車セールスに与える影響が大きく、7月のフィンランドラリーで優勝した翌月のヤリスの販売台数は、前年同月比で160%になったとのこと。また、同じレースでも、ハイブリッド技術といった先端技術の実戦テストという位置づけのWEC(世界耐久選手権)に対し、WRCは「人を育てる場」にもなっていると友山氏はアピールされました。

続いて、チームメンバーによるトークセッションが行われ、チーム代表のマキネン氏、ドライバーのラトバラ選手とラッピ選手、コ・ドライバーのミーカ・アンティラ選手、ヤンネ・フェルム選手が登壇。2017年シーズンを振り返りました。

マキネン氏は「2017年は学びの年だった」としながらも「我々のホームテリトリーであるスウェーデンとフィンランドで優勝という結果を残せました。データも十分に集められたことも大きいです」とし、2018年シーズンに向け、良い感触をつかんだ様子。

ラトバラ選手も「シーズンが始まる前は勝てるとは思っていませんでした。スウェーデンは得意の高速ステージで、テストもできていたのでチャンスはあると思っていましたが、勝てた時は本当にうれしかったです。トミが『行け!』と背中を押してくれたのがよかったですね」と述懐しました。

フィンランドラリーで自身初のWRC優勝を果たしたラッピ選手は「地元で勝利することは、WRCドライバーになった時からの目標。ミスはあったけれど、チームがすぐ対処してくれたことで勝つことができました」と述べ、「2018年も同じ場所で2連勝を狙いたいです!」と意気込みを語りました。

コ・ドライバーのアンティラ選手は「シーズン前半のメキシコラリーでは、高地への対応など課題があったのですが、後半戦で同じようなシーンがあった時には解決されていました。それがこのチームの強みだと思います」と振り返り、同じくフェルム選手は「チームの皆が同じゴールに向かって動いています。2018年はさらに良くなるでしょう」と語りました。

その後、2018年シーズンからチームに加わる、ドライバーのオット・タナック選手と、コ・ドライバーのマルティン・ヤルヴェオヤ選手がサプライズで登場。同コンビが、メキシコラリーでクルマごと湖に水没し、表彰式に水中メガネを装着して登場したことにちなみ、ふたりにはTOYOTA GAZOO Racingのロゴが入ったゴーグルが贈られました。

2017年は、イタリアとドイツのラリーで優勝し、ドライバーズランキング3位、ファンの選ぶドライバー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたタナック選手。今回の報告会では「トヨタに加入したので、チャンピオンを目指したいです」と意気込みを語るなど、同チームの強力な戦力になりそうです。

その後、ファンの皆さんから、2018年シーズンの活躍を祈願した“だるま”が贈られ、報告会は終了。その後、報道陣との質疑応答が行われました。

「2017年に学んだことは?」という質問に対し、友山氏は「コースについてのデータもないまま挑んだのですが、多くのデータを収集することができました。チームワークが強まったことも何よりの収穫です。2018年は期待していて下さい」と回答。マキネン氏も「データを解析するに当たっては、マイクロソフトをはじめとするパートナーからのサポートが大いに役立ちました。そうしたパートナーとの協力関係が深まったことも重要なことですね」と述べました。

また、マキネン氏は、2017年の課題と2018年の見通しについて、「ヤリスのコンパクトなパッケージングは大きな武器。サスペンションや電装系に課題がありましたが、それらを解決することで、2018年はもっと速くなると思います」と強くアピールしていました。

2018年のトヨタは、さらなる飛躍・活躍が期待できそうです。

(文&写真/増谷茂樹)


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