■随一の個性派ミニバン“50年の歩み”
1970年代生まれの筆者にとって、三菱「デリカ」といえば本格RVゆずりの走破力、そして、昨今のミニバンにも通じる快適性を備えた3世代目「デリカ スターワゴン」が強く印象に残っています。
もちろん、世代によって「これぞデリカ!」というモデルは異なると思いますので、ここでデリカのヒストリーを簡単に振り返ってみましょう。
●1964年4月:デリカ バン/コーチ誕生
デリカというネーミングは“デリバリーカー(Delivery Car)”に由来しますが、その先陣を切って1968年にデビューを飾ったのは、キャブオーバータイプの600kg積みトラックでした。このモデルは、58馬力を発生する1.1リッターエンジンを搭載。カーブドガラスを採用した愛らしいスタイルのトラックでした。
翌1969年4月にバンボディが追加され、500kg積みのライトバンやルートバン、そして、サードシートを備える9人乗りの「コーチ」が追加されました。現在のD:5の源流といえるモデルの誕生です。その後’71年には、最高出力86馬力の1.4リッターエンジンを搭載する「デリカ 75」も追加されました。
そして’72年には、デリカ75にポップアップルーフを備えた「デリカ キャンピングバン」が発売されます。上段ベッドやハンモック、カーテンを標準装備としたほか、オプションとしてキッチン台セットなども設定されていました。
●1979年6月、2世代目へと進化。スターワゴン登場
ボクシーなスタイルが特徴の2世代目デリカ。初代同様、ワゴンのほか、バンやトラックも用意されました。乗用モデルには新たに、スターワゴンのサブネームが与えられたほか、5速MTや4速ATなども追加で設定されました。
さらに’82年10月には、小型キャブオーバー車としては日本初となる4WD仕様をラインナップ。4WDシステムは、初代「パジェロ」に搭載されたハイレンジ/ローレンジの切り換えが可能なトランスファー採用のパートタイム方式で、フリーホイールハブや電動ウインチをオプション設定するなど、本格RVと同等のメカニズムが与えられていました。
乗用モデルのエンジンは、当初1.6リッターのガソリンでしたが、後に1.8リッターや2リッターのガソリン、2.3リッターのディーゼルターボが搭載されました。また、スキー向けの特別仕様車「シャモニー」が初めて設定されたのも、スターワゴンでした。
●1986年6月:正常進化を果たした3世代目
2世代目モデルのヒットを受けて、4WDワゴン=デリカというイメージが定着。3世代目モデルではセミキャブオーバー型への変身も検討されましたが、2世代目と同様、スペース効率に優れるキャブオーバースタイルを継承します。一方、車体はフレーム式からモノコックに改められるなどの進化を遂げました。また、従来モデル同様、商用バンなども設定されています。
乗用モデルのスターワゴンは、従来どおり、2WD車と4WD車を設定。4WD車は高い車高やワイドタイヤなど、オフロードを意識した装備が与えられ、本格的なクロスカントリー車にも匹敵する走破力を有するモデルとして高い人気を知名度と誇りました。また2WDには、後席ルーフの左右をガラス窓としたクリスタルライトルーフを設定するなど、新たな試みにもチャレンジ。このクリスタルライトルーフは、追って4WD車にも採用されています。
このほか、スターワゴンは回転式セカンドシートによる多彩なシートアレンジを可能としたこと、また、快適装備の充実などにより大ヒットとなりました。’93年には、フィールドレジャーを意識した特別仕様車「ジャスパー」も登場。この3世代目モデルは、発売から8年を経て、4世代目がデビューした後も販売が継続されるなど、根強い人気を誇りました。
●1994年5月:新サブネームを採用した「スペースギア」デビュー
丸みを帯びたデザインが特徴の4世代目は、エンジン搭載位置をフロントシート下からフロントノーズ部へと移動。ボディはラダーフレームをモノコックボディと一体化することで、オフロード性能と安全性、実用性を両立しました。
乗用モデルには新たに、スペースギアというネーミングが与えられ、室内はウォークスルー構造を採用したほか、2列目、3列目シートは多彩なアレンジを可能としました。エンジンは3リッターV6ガソリンのほか、2.8リッターのディーゼルターボなど4種類を設定。4WDシステムには、2世代目パジェロの流れを汲むスーパーセレクト4WDを採用するなど、走破力にも磨きを掛けています。
また、この4世代目モデルをベースとする商用モデル、デリカカーゴも用意されました。
●2007年1月:現行モデルのデリカD:5が登場
「ミニバンの優しさ」と「SUVの力強さ」の融合、を開発テーマに掲げた現行モデル。オールラウンドSUVの機動性と信頼性、そして、優れた居住性を併せ持つSUVテイストのミニバンへと進化を遂げました。
ボディは、本格SUVに匹敵する地上高や走破力を確保。乗員をしっかり保護するための構造として、環状骨格構造の“リブボーンフレーム”を新たに採用しています。エンジンは、ガソリンが2.4リッターのMIVEC、4WDシステムは前後輪に最適なトルク配分を行う電子制御4WDとするなど、走行性能の向上を図っています。さらに2013年には、2.2リッターのクリーンディーゼルエンジン搭載モデルも追加されました。