Siriのカスタマイズや32人同時のFaceTimeが斬新!「WWDC 2018」のココに注目

■6000人のディベロッパーに囲まれて

昨年秋のiPhone XがiPhoneの10周年という節目だったとすると、今年のWWDCはiOSの一つの節目だったのかもしれない。正確に言えば、今年の7月にiOSの「App Store」が10周年を迎える。10年前といえば、スマホにアプリをインストールして活用するなんて、考えてもいなかった。しかし、いまではアプリなしでの世界は考えられない。僕の生活の中には、いつもiPhoneがある。

WWDCといえば、オープンニングのムービーが楽しみのひとつだ。日本で中継を見ているときには、毎年眠い目をこすりながら見ていた。今年は初めて現地にて、これを体験した。いやしかし、すごい迫力だった。

▲会場の様子

オープニングは世界各国からWWDCに集まってくる「不思議な生き物(ディベロッパー)」を描いていた。筆者はプレス席に座っていたわけだが、その周囲には6000人のディベロッパーがいた。周りを見渡すと全員ディベロッパーなのだ。ムービーが流れるとともに、会場は瞬く間に熱気を帯びた。

▲オープニングのムービーで空港にディベロッパーが到着するシーン

結論を先に言うと、ネットの速報に書かれているように、事前に噂されたような新デバイスは登場しなかった(Apple Watchのバンドの素敵な新カラーはあったけど)。しかし、次期OSの新機能については、例年通りとてもボリューミーで、2時間ちょっとのキーノートでは消化しきれないものでもあった。ここでは、筆者が興味深いと感じた新機能に絞り、その概要を紹介していきたいと思う。

 

■iOS 12(前半):「手の届く未来」を感じる、実用的な機能たち

iOS 12で必ず押さえておきたいのは、「AR」「Siri」「FaceTime」に関する新機能だ。

▲ARのポイントは、AR空間を共有できて、状態を保存できること、そして3次元の物体を認識してARを重ねられること

まず「AR」については、フレームワークのバージョンが「ARKit 2」に上がる。最大の進化は、複数人でAR空間を共有できること。会場では、LEGOのデモンストレーションが行われた。

実物のLEGOで組み立てられた建物をアプリで写す。すると、周りに追加の建物や、道路、人形が表示される。iPadのカメラは、オブジェクトをしっかり認識していて、建物の中身もARで表示された。別のiPadを操作するプレーヤーが同時に同じARの世界に入り、同じ空間を楽しめる。キャラクターを動かし、ときには火事が発生して、消火・救出作業を行い、新しいアイテムをゲットしていく。

このほか、会場ではテーブル上にARで構築された積み木を狙撃するというゲームアプリも紹介された。こうした対戦型のゲームが増えることで、ARの楽しさはぐっと高まると思う。

ちなみに冒頭には、アップル純正のアプリとして「Measure(メジャー)」も紹介された。同アプリは、カメラに写したオブジェクトのサイズを測定できるというもの。サード製の類似アプリはすでに多く存在する。これが純正で登場するというのは、ひとつ段階が変わったということ意味するのかもしれない。

▲Siri用の「Shortcuts」で、Editorを使う画面

続いて、「Siri」だ。最新機能の名は「Shortcuts(ショートカット)」。簡単に言うと、Siriのボイスコマンドと、実行する操作を自身でカスタマイズできるようになる機能。カスタマイズしたコマンドはiPhoneやiPadだけでなく、HomePodや、Apple Watchでも使えるようになる。

会場のデモンストレーションでは、まずSiriに「鍵を無くした(Hey Siri, I lost my keys)」と話しかけて「Tile」アプリを連携する例が紹介された。返事は「タイルによると、鍵は近くにあります。いま音を鳴らしています。ソファーのクッションの下にないといいですね(Tile Says:”Your keys are nearby. Ringing them now... Hope they’re not under a couch cushion!”)」という流れだ。

こうしたコマンドはショートカット機能の「Editor」からカスタマイズできる。そして、実行する操作は複数をまとめることができる。キーノートのデモでは、こんな操作が行われた。「家に帰るよ(Heading Home)」というコマンドで、マップが起動して家までのナビゲーションを実行し、家族に「◯時頃(自動入力)に着くよ」とメッセージを送り、家の温度を21.1℃に設定、そしてラジオを再生する。会場からは歓声が上がった。

もちろんこれは一例だ。「行ってきます」「走るよ」「買い物」「ただいま」ーー。いろんな選択肢が想像できる。

▲「Group FaceTime」でアニ文字を使っている様子

最後に、FaceTimeの新機能について。最大32人でビデオ通話できる「Group FaceTime」が登場した。これは特にUIが秀逸だ。画面上には、複数の相手の映像が左右交互に並ぶ。そして、話したユーザーの画面が大きくなる。ダブルタップして、特定の人物を大きく表示させることもできる。

iPhone Xでは、TrueDepthカメラを利用したアニ文字も活用可能。新たに登場した4種類のキャラクターや、アニ文字用のアバターをカスタマイズして使用する「Memoji(ミー文字)」機能なども、同機能と併用できる。素顔では小恥ずかしいビデオ通話も、アニ文字ならもしかするといけるのでは…と感じるものがあった。

 

【次ページ】iOS 12(後半):人に寄り添う、でも近すぎない

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