さよなら「Hey Siri」よろしく「通知」! watchOS 5で激変するApple Watch 6つの習慣

4)より手軽なコミュニケーション手段が登場

従来、Apple Watchで能動的にコミュニケーションを取る手段には、「電話」と「SMS」があった。通話はウォッチを手首につけた状態で利用でき、本体のスピーカーから通話相手の声が出る仕組み。SMSは定型文を選択したり、音声入力でテキストを送信することが可能だ。

そのほか「LINE」や「Facebook Messanger」などのサードパーティ製アプリでは、未読のメッセージを確認したり、スタンプで受動的なリアクションを取ったりできる。これだけでも、さほど不自由はない。

しかし、watchOS 5では、新たに「トランシーバー」というアプリが登場する。その名の通り、画面に表示されるボタンを押してからしゃべった言葉を、ボイスメッセージとして送信可能。「トランシーバー」という名前こそついているものの、音声データはモバイルネットワーク上でやり取りされるので、ノイズは発生しない。

一方、受信側としては、急に腕時計から声が聞こえだしたら困るわけだが、ここを解消する設定ももちろんある。同アプリの画面を上から下にスワイプすると、受信可能かどうかを選択するスイッチが現れる。ここをオフを選択しておくことで、相手からの急な連絡を防げる。

アジア圏では、スマホのコミュニケーションアプリでもボイスメッセージが頻繁に使われている印象がある(文字の変換が面倒なのかもしれない)。トランシーバー機能は、こういった文化圏で非常にウケるのではないだろうか。もちろん、日本でもアウトドアシーンや、日常のちょっとした場面で、トランシーバー機能が大活躍しそうだ。

例えば、2階で洗濯ものを干しながら、「お昼のドラマ録画しておいて」なんて、1階にいるパートナーへ連絡する。しばらくすると「了解」と返事が来るなんてシーンが容易に想像できる。わざわざ電話をかける場面じゃない。けれど、トランシーバーなら気軽に使えそうだ。

 

5)さよなら「Hey Siri」

Siriに関するアップデートにも期待が高まる。これはApple Watchだけに限ったことだが、watchOS 5では、Siriを使う際に以前のように「Hey Siri」と声をかけなくてよくなる。なぜなら、腕を持ち上げて口元に寄せた時点でSiriが起動するから。

従来もデジタルクラウンを長押しすることで、Siriを起動させられたが、それ以上に便利だ。筆者個人は、おそらくSiriを使う頻度が倍増すると思う。

また、Siriの文字盤に関してもアップデートが予定されている。そもそもSiriの文字盤にはさまざまなカードが並び、デジタルクラウンを回すことで、それをめくって確認できるデザインになっている。カレンダーに記入された情報をベースに、当日の気温や、日の入りなどの時間、「呼吸」「アクティビティ」のレコメンドなどが時系列に表示される。

watchOS 5では、こうしたデザインはそのままに、表示されるショートカットが増える。例えば、応援しているスポーツチームの試合結果を表示させたり、位置情報に基づいて通勤時間を表示させたりすることも可能だ。iPhoneで作ったSiriのショートカットも表示される。また、サードパーティ製のアプリを操作するコンテンツも使えるようになる。何が表示されるかは、ユーザーの行動傾向を蓄積して、動的に変化していく。

きっと、毎朝「Nike+ Run Club」アプリを使ってジョギングしていると、朝にランニングを開始できるようなカードが表示されるようになるのだろう。どういったアプリが対象になるのか、リリース後にじっくりと検証してみたい。

 

6)通知

そして、おそらく将来的に最も重要になるのが「インタラクティブな通知」だ

おそらく半分以上の読者が「ぽかーん」となっていることだろう。ここでいう「インタラクティブ」は、“対話のようなスタイルで操作できる”という意味だと思っておけばいい。簡単に言えば、通知に「はい/いいえ」と書いてあって、どちらかすぐに操作できるというイメージ。従来は通知をタップ→Apple Watchでアプリが起動→アプリ画面を操作、という手順だった。しかし、これからは通知で直接操作できるようになり、アプリが起動する待ち時間や手間がなくなっていくに違いない。

例えば、「オンラインチェックインできるけど、ウォレットアプリに搭乗券追加する?」という内容が表示されて「はい/いいえ」を選ぶ(正確な表示は少し違うけど)。ほかにも「Yelpアプリで予約した時間と席、変更する?」って出てきて変更できる。キーノートではこのように解説された。

こうした通知を出すためには、Apple Watch側に専用のアプリ(例えばYelpのwatchOS版)のインストールが必要なのかなと思った。しかし、どうやらそうではないらしい。iPhoneアプリの通知がApple Watchに転送された場合にも、こうした通知が表示できるという。

もしこれが多くのアプリで対応するなら、アプリ側の戦略も変わるだろう。今後は”より良い通知”で素早く操作できる工夫が、重要になってくると思われる。

「Apple Watchのアプリを開発するのは大変だけど、通知だけ整えるならやろうじゃないか」。そんなことを考えるサービスが増えたとしても、ユーザーメリットは大きい。

ちなみに、SMSでURLが送られてきたときには、それをタップして直接ウェブサイトを開けるようにもなる。こちらも、ユーザーエクスペリエンスを向上させるだろう。

*  *  *

「トランシーバー」のキャッチーさに目が行きがちだが、watchOS 5の真髄は「Siri」と「通知」にあると思う。OSが新たにデザインされることで、一気に便利になる瞬間は、いつ見ても本当にワクワクするものだ。どちらも早く正式版を使い込んでみたい。

なお、watchOS 5が対応するのは、Apple Watch Series 1/2/3となる。それより前の機種では利用できないので留意しよう。

>> Apple「Apple Watch」

>> Apple「watchOS 5」

 


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(取材・文/井上 晃

いのうえあきら/ライター

いのうえあきら/ライター

スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。

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