8Kの普及は進むのか?最新製品から紐解く近未来の映像トレンド5選【CES 2019】

■薄型テレビの未来系!? LGの“ロール式”有機ELテレビ

CES 2019の映像関連で最も注目を集めたアイテムが、韓国LGによる“ロール式”の有機EL「LG Signatures OLED TV R」です。まず、そのスタイルがあまりに未来的です。家具のような本体に65型の有機ELパネルが巻き取った形で収納されていて、テレビ視聴時にはチェストから画面がせり上がる、SFチックなスタイルです。

▲プレスカンファレンスの発表で拍手まで巻き起こした「LG Signatures OLED TV R」

▲LGの“ロール式”の有機EL「LG Signatures OLED TV R」

▲テレビを視聴しない時には完全に画面の収納が可能です

驚くべきことに「LG Signatures OLED TV R」は、プロトタイプではなく、きちんと2019年の下半期に発売予定のプロダクトとして発表されています。長らく“黒くて四角いモノ”だった薄型テレビのスタイルが変わっていく、2019年はそんな時代の始まりと言えそうです。

 

■高画質テレビのトップエンドは「8K」に

薄型テレビの高画質化は、「4K」の次世代、「8K」が重要なテーマです。日本では昨年12月に8K放送がスタートしていますが、海外でも「8K」熱が高まっています。

トレンドを牽引しているのは世界1位の薄型テレビメーカーの韓国サムスン。そして世界2位の薄型テレビメーカーの韓国LGです。サムスンは昨年秋から8Kテレビを発売しているし、LGは8K液晶だけでなく、8K有機ELまで2019年下半期の発売も発表しました。

日本メーカーでは、ソニーが8K液晶「Z9G」の98/85型の米国向け発売を発表しました。ソニーは自社開発の8K対応映像プロセッサー「X1 Ultimate」を8Kデータベース仕様で搭載、独自のバックライト技術「Backlight Master Drive」、視野角を拡大する「X-Wide Angle」搭載と自社技術を多数採用しています。

▲世界トップメーカーのサムスンは「QLED 8K」を北米でも展開

▲日本メーカーでは8K液晶「Z9G」の98/85型を発表

ソニーの8K液晶はサイズ展開が98/85型と超巨大なので日本市場向きではありませんが、2019年以降は、薄型テレビメーカーなら8Kテレビはラインナップとして持っていて当たり前の時代になっていくでしょう。

 

■有機ELは「8K」と「カスタム」で差別化が進む

高画質テレビの最先端は有機ELテレビにも注目です。

まず、「8K」のトレンドでも紹介したLGは、遂に8K有機ELテレビの88型モデル「Z9」を発売予定モデルとして正式発表しました。米国、そして日本でも発売を予定するモデルで価格は3万ドル程度になる見込みです。

従来は「8K」を選ぶなら液晶、黒の表現やコントラストを選ぶなら有機ELと棲み分けされていましたが、1台で両方を備える8K有機ELテレビ「Z9」の登場で、トップエンドの座がハッキリとしてきました。

▲LGのよる8K有機ELテレビ「Z9」も2019年下半期発売

有機ELのもうひとつの注目株がパナソニックが発表した4K有機ELテレビの「TX-65GZ2000」「TX-55GZ2000」です。4K有機ELテレビとなると既に特別な存在ではなくなっていますが、この2モデルは、パナソニックがパネルを購入してカスタマイズした有機ELパネルを採用することで、他社にない画面輝度のアップと高画質化を果たしています。

2019年に現実に購入可能な価格で登場する高画質モデルとして、4K有機ELテレビに引き続き注目です。

▲パナソニックプレスカンファレンスで発表された有機ELテレビの2019年欧州モデル「TX-65GZ2000」「TX-55GZ2000」

 

■高画質は映像クリエイターとの繋がりがテーマに

CES 2019で目立ったユニークな取り組みが、薄型テレビメーカーが映画クリエイターや業界との連携を前面に押し出し始めた事です。

ソニーの発売した8K液晶の「Z9G」、そして4K有機EL「A9G」。日本でも発表済みの映像モードで、Netflixと共同開発した「Netflix画質モード」のほか、新たに映画技術を提供するIMAXとに連携による「IMAX Enhanced」にも対応。ソニーが標準で提供する“カスタム”の映像モードが、「IMAX Enhanced」の推奨する条件を満たしている認定テレビと発表されています。

▲ソニーは新たに「IMAX Enhanced」にも対応

パナソニックも、4K有機ELテレビの「TX-65GZ2000」「TX-55GZ2000」の画質を、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『ジュラシックワールド』のクリエイターとして知られるStefan Sonnenfeld氏とコラボレーションし、チューニングを施しています。薄型テレビの高画質化は日進月歩進んでいますが、高画質の証として映像クリエイターとの連携を深める事がこれからのトレンドです。

▲ハリウッド画質を打ち出すパナソニックの4K有機ELテレビ

 

■「ドルビーアトモス」の採用が拡大中

薄型テレビで高画質と共に進化が進んでいるのが高音質。CES 2019では映画でも用いられている立体音響技術「ドルビーアトモス」対応モデルが増えています。

特に注目は、パナソニックの4K有機ELテレビの「TX-65GZ2000」「TX-55GZ2000」。本体上部に上向きのスピーカーまで内蔵し、「ドルビーアトモス」による立体音響も完全に再現。映画だけでなくサッカースタジアムの音響までも再現したデモンストレーションを行っていました。また、映像技術「ドルビービジョン」の採用もパナソニックとしては初の試みです。

ソニーもCES 2019で披露した8K液晶の「Z9G」、4K 有機EL「A9G」は従来から進めていた「ドルビービジョン」対応に加えて、新たに「ドルビーアトモス」(アップデート対応)の採用が発表されました。

▲パナソニックの有機ELは新たに「ドルビービジョン」「ドルビーアトモス」対応

▲テレビ本体の上部に上方向の音を再現するスピーカーを内蔵

薄型テレビ世界2位のブランド、LGエレクトロニクスも「ドルビービジョン」「ドルビーアトモス」と映像もサウンドもドルビー社の技術を採用。CES 2019で日系メーカーの全面的な賛同を得たことで、映像、音響ともに、スタンダードの座を固めていると言えるでしょう。

 


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(取材・文/折原一也)

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