■5Gは、いつから利用できるの?
5Gは、2018年6月に国際的な標準仕様が決まりました(現在のLTEと連携するノンスタンドアローンの仕様が2017年12月に決まっていた)。それまでは、どういう仕様になるかを推測で進めていた研究開発が一気に実用化に向けて加速したわけです。
実は、アメリカではすでに5Gの商用サービスが始まっています。
先陣を切ったのは、ベライゾンという通信事業者で、家庭向けのブロードバンドサービスとして提供。今まで有線で行なっていたサービスを無線に置き換えた形です。続いて、12月にAT&Tがサービスを開始し、スプリント、T-モバイルも近くサービスを開始する見通しです。なお、スプリントは5Gサービス開始に合わせて、LGエレクトロニクス製の5Gスマホ「LG V50 ThinQ 5G」を発売することを発表しています。
ヨーロッパでは、国によっては今年上半期に5Gの商用サービスが始まる見通しで、夏以降、主要な通信事業者が追随すると見られています。アジアは、韓国が今春から、中国は今秋以降。そのほかの国・地域は、一歩遅れて2020年以降になりそうです。
さて、日本ですが、今年の9月20日から開催される「ラグビーワールドカップ2019」の開催に合わせて、NTTドコモがプレサービスを開始する予定です。商用サービスは、来年の東京オリンピック・パラリンピックの開幕に先駆けて、2020年春から始まることを発表しています。au(KDDI)、ソフトバンクもこれに追随し、今年の10月から携帯電話事業に参入する楽天も2020年の5Gサービスを開始する予定です。
4月10日には、5Gに使う周波数が通信事業者に割り当てられる予定です。それにより、各社の基地局設営や端末開発など、5Gに向けた準備が加速化することでしょう。欧米や韓国に比べると遅れているという印象は否めませんが、5Gは徐々にエリアが拡大し、通信速度が速くなり、サービスや対応機種が充実していくサービスです。来年、オリンピックが開催される頃に、多くの人が5Gの恩恵を受けられるようになっていることを期待しましょう。
■多彩な用途が想定されている5G。MWCで注目されたのは?
MWCを取材していて、あちこちで耳にしたのが「5Gの主役はスマホではない」ということ。これまでの3G、4Gは、あくまでもモバイル機器のための通信方式でした。かつてと比べると速くなったとはいえ、より高速かつ安定した通信が必要な場合は、有線ネットワークが必要でした。しかし、5Gが普及すると、もはや有線のネットワークは必要ではなくなる可能性もあります。5Gはスマホだけでなく、いろいろな用途に用いられ、むしろスマホ向けのサービスは脇役になってしまうかもしれません。
MWCでは、5Gを活用するサービスのデモンストレーションも行われていました。その中で、近い将来、実用化されるであろう事例として、わかりやすかったのがNTTドコモの出展。ブースに設けられたメインステージでは、違う場所にいる演奏者が、あたかも同じ場所で演奏しているように見えるライブセッションが行われました。離れた場所で演奏する人の映像と音声を5Gでリアルタイムで伝送するデモンストレーションです。
東京女子医科大学と共同で進めている「SCOT(スマート治療室)」という展示も興味深かったです。これは、5Gによる高画質映像のリアルタイム伝送によって、医師が離れた場所にいても、手術の指示などを行えるというもの。5Gは、人命救助にもつながる新しい社会インフラとなりそうです。
ちなみに、MWCは、昨年までは「Mobile World Congress」が正式名称でした。今年からは「MWC」が正式名称となり、「Mobile」というキーワードは消えてしまいました。改称の理由については調べていませんが、おそらくは、5Gがモバイルだけのものではなくなったからでしょう。2019年は、通信の歴史が大きく変わる記念すべき年になるかもしれません。
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(取材・文/村元正剛)
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。