【もうすぐ来ますよ!注目の輸入車】新型「レンジローバー イヴォーク」は人気のカタチを継承しつつ中身は大胆進化!

■“砂漠のロールスロイス”にも電動化の波が押し寄せた

ジャガー・ランドローバーは6月5日、電気駆動システムをBMWと共同開発すると発表した。思い起こせば、BMWは1994年にランドローバーブランドを買収。その関係で、「レンジローバー」の先代モデルは、BMW製のV8エンジンを搭載していた。その後、ランドローバーは、2000年にフォードグループへと売却され、すでにフォード傘下にあったジャガーと出合ったわけである。

ACES(Autonomous[オートノマス=自動化]、Connected[コネクテッド]、Electric[電動化]、Shared[シェアリング])を始めとする、現在、自動車産業に巻き起こっている変革に対応すべく、世界中の自動車メーカーやサプライヤーが、効率的な次世代技術の開発を目指して部分的、包括的に提携を結ぶ例が増えてきた。

そうした変革の中でも、自動車メーカーに今すぐ求められているのは、主要各国で厳格化する燃費基準をクリアすべく、電動車(エンジンの有無にかかわらず、電気モーターで駆動する機能を備えたクルマを意味する)の比率を高めることだ。

2011年の発売以来、世界各国で大ヒットした“ベイビーレンジ”ことレンジローバー イヴォークにも、ついに電動化の波が押し寄せ、この度フルモデルチェンジした新型には、MHEV(マイルドハイブリッド)および、PHEV(プラグインハイブリッド)仕様が用意されている。

今春、ギリシャで開催された新型イヴォークの国際試乗会に参加。そこで見た新型は、一見してキープコンセプトと分かるデザインだが、世にも美しい初代のスタイリングを刷新してしまうことはない、とランドローバーが考えたのだとしたら、全くの同感だ。

SUVとしては異例に低く構え、クーペのようにリアへ向かうに従って下がっていくルーフを持ち、逆に、シャープなショルダーラインはリアへ向かって上がっていくイヴォークの特徴を、新型も完全に踏襲した。

見た目とは裏腹に、内容の変更は大規模なものだ。新型は、新世代プラットフォーム“PTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)”を採用。ボディサイズは初代とほぼ変わらず、ホイールベースが20mm長くなっている。ちなみに新型は5ドアハッチバックのみで、初代にあった3ドアクーペやコンバーチブルを追加する計画は、今のところないとのこと。

新しいプラットフォームを採用した主眼は、電動化に対応するため。「2020年以降に発表するすべてのモデルにおいて、電動車を選択可能とする」というジャガー・ランドローバー社の宣言を実行すべく、新型はMHEVを設定し、追ってPHEVも加わる。

MHEVは、48Vの電源システムを採用。通常のオルタネーターの代わりに“BiSG(ベルトドライブ・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み込み、減速エネルギーを電力に変換してバッテリーに貯め、その電力を主に発進時のトルクアシストに用いる。そして、17km/h未満になるとエンジンが停止する。バッテリーを始めとするハイブリッドシステムはコンパクトにフロアへと配置。キャビンスペースを犠牲にしていないというのが彼らの自慢だ。

そんなハイブリッドシステムには、2リッターの直4ガソリンターボおよび、ディーゼルターボが、9速ATとのセットで組み合わせられる。今回試乗したのはいずれもMHEV仕様で、最高出力249馬力、最大トルク37.2kgf-mのガソリンターボ「P250」と、同240馬力、同51.0kgf-mのディーゼルターボ「D240」の2種類。

P250は、力強さこそ2リッターのガソリンターボと聞いて、通常、想像する範囲にとどまるが、全域でスムーズな印象を得た。変速時にBiSGの制御が入ることで、トルクの継ぎ目がきれいに消されているためだと思われる。ATが9速と多段なため、タコメーターを見ていると頻繁に変速を繰り返しているのが分かるが、変速ショックはほとんど感じない。

一方のD240は、最大トルクが51.0kgf-mというだけあって、全域でトルクが太く力強い印象。また、音と振動がうまく遮断されていて、車内は加速時を含め、うるさくもなければ振動も気にならない。

新しいイヴォークが採用したPTAは、電動化を可能としただけでなく、乗り心地も大幅に改善している。初代に比べると、新型は体感的な堅牢さが増したほか、コーナリングの際、初代は踏ん張るようにクリアしていたのに対し、新型はゆっくりと倒れ込むような、心地良いロールを伴ってクリアすることができた。

■クルマが透けて見える!? 世界初の機能を搭載

新しい機能である“クリアサイトグラウンドビュー”も、触れないわけにいかない新型のトピックのひとつだ。ボタンを押すと車内のモニターに、直接、目視できない車両直前の地面の映像が表示される。その映像に重ねて車両と車輪の輪郭が表示されるのだ。フロントグリルおよび左右ドアミラー下部の3カ所にカメラが設置され、撮影した映像をバーチャル処理することで、まるで車両が透けたような感覚になる。

こうした機能は、オフロード走行時に役立つのはもちろん、狭い路地で前輪を縁石に擦ってしまわぬよう目視する際にも重宝する。また、ステアリングを切れば映像内の前輪(の輪郭)の角度も連動して変わるなど手の込んだ仕掛けで、作動速度域は30km/h未満となる。

■追って上陸予定のPHEVには電動4WDを採用

とはいえ、ここに報告したP250MHEVもD240MHEVも、当初は日本市場に入ってこない。日本仕様は、ガソリンターボが最高出力200馬力の「P200」(461万円〜)、同249馬力の「P250」(646万円〜)、同300馬力の「P300MHEV」(656万円〜)の3種類で、ディーゼルは同180馬力の「D180」(523万円〜)一択となる。

ガソリンのトップモデルが、現地で試乗したP250MHEVよりパワフルなP300MHEVとなるのは楽しみだが、ディーゼルが従来モデルにも搭載されていたD180となり、MHEVも付かないのはやや残念。売れ筋であるディーゼルモデルの価格を低く抑えたい、というのと、平均速度が低い日本市場ではD180でも十分、というのが、インポーターの判断なのだろう。ただし、モデルサイクルの途中で、こうしたエンジンラインナップは変更される可能性が十分あり得る。

また、新型イヴォークには、追ってPHEV版も加わる。PHEV版は、総電力量11.3kWhのバッテリーを搭載。最高出力200馬力、最大トルク28.6kgf-mの1.5リッター直3ターボエンジンとBiSGによって前輪を、同108馬力、同26.5kgf-mのモーターによって後輪を駆動するという、プロペラシャフトを持たないタイプの4WDを採用する。

(文/塩見 智 写真/ジャガー・ランドローバー・ジャパン)


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