■FF車ベースとなってキャビンと荷室が拡大
間もなく上陸する3代目1シリーズの最大のトピックといえば、従来までのFR車ベースからFF車ベースのクルマへと大変身を遂げたこと。もちろん、プラットフォームは全面的に刷新され、これまでの2代目モデルと比較して、ホイールベースは20mm短い2670mmに、全幅は34mm幅広くなっています(数値は欧州仕様のもの)。
FF化による最大のメリットは、キャビンとラゲッジスペースを拡大できること。家族や仲間がリアシートに乗る機会が多いという人にとって気になる、後席のヒザ回りスペースは33mm、後席乗員のヘッドスペースは19mmそれぞれ拡大されています。
また、ラゲッジスペースの容量も、380Lと2代目モデル比で20L拡大。さらにリアシートの背もたれを前方へ倒せば、荷室は1200Lまで広げることができます。SUVも顔負けの容量なので、キャンプを始めとする趣味のアシにも使えるのではないでしょうか。ちなみに新型には、シリーズ初となる電動リアゲートも採用されています。
エクステリアでは、大型化されて迫力が増したBMW独自の“キドニーグリル”と、ワイドなフォルムが目を引きます。実は、全高も1447mmと、2代目モデル比で13mm高くなっているのですが、腰高感を全く感じさせないのは、FF化によってエンジンフードが短くなったことが効いているのかもしれません。
また、リアウインドウが寝ていて、後方へ向かってサイドパネルが持ち上がるルックスは、ハッチバックとはいえBMWらしいスポーティなものです。
エンジンは、ガソリンが2種類、ディーゼルが3種類の計5種類が用意されています。このうち日本市場には、140馬力を発生する1.5リッター3気筒ガソリンターボを積む「118i」と、150馬力の2リッター4気筒ディーゼルターボの「118d」、そしてトップグレードとして、BMWの4気筒としては最もパワフルな、306馬力を発生する2リッターガソリンターボを積む「M135i」が用意されそうです。
ちなみにM135iは、駆動方式に“xDrive”と呼ばれるフルタイム4WDを採用し、静止状態から100km/hまで4.8秒で加速。また最高速は250km/hをマークするなど、キレのいい走りに期待が高まります。
■最新モデルらしく先進のテクノロジーも充実
新しい1シリーズにおいてもうひとつ注目したいのは、同社の電気自動車である「i3」に搭載される“ARB(アクチュエーター コンティギュアス ホイール スリップ リミテイション)”を、エンジン搭載モデルとして初めて採用していること。濡れた路面やコーナリング中などにタイヤが滑った際、スリップを制御して駆動力を確保してくれます。というと、一般的な“DSC(横滑り防止装置)”と同じようなデバイスに聞こえるかもしれませんが、ARBはタイヤの空転情報をエンジンコントロールユニットに直接入力するため、伝達速度が一般的なDSCと比べ、3倍高速化しています。
新型1シリーズにはDSCも従来通り装備されているので、双方の連携によってパワフルなFF車特有のパワーアンダーステアを抑制。FF車らしくないナチュラルなハンドリングを実現しています。FF車になって「BMWらしいスポーティなハンドリングが失われたのでは?」と危惧するファンにとっては、うれしいニュースといえるでしょう。
今や外せない、カメラやレーダー、超音波センサーなどで周辺を監視する“ADAS(先進運転支援システム)”に関しては、衝突回避・被害軽減ブレーキや車線逸脱警告システムを搭載。後者には“アクティブレーンリターン”機能も付いています。また、36km/h未満の速度で前進した際、直近50mの軌跡を自動的に記録し、必要な場合にその軌跡に沿って自動でステアリングを操作しながら最大9km/hで後退する“リバース・アシスト”機能も搭載されています。
そのほか、先行上陸した現行「3シリーズ」で初採用された、AIを活用したデジタルアシスタント機能“BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント”も新型1シリーズには装備されています。これはドライバーが、「OK、BMW(オーケー、ビーエムダブリュー)」など、あらかじめ設定したキーワードを発すると起動するシステムで、音声によって車両の設定などを操作できる仕組み。さらに、スマートフォンをキーの代わりとして使える“BMWデジタルキー”も搭載されていて、対応するスマホを携行しておけば、カギを持ち歩く必要がなくなります。
先進機能を駆使することで“駆け抜ける歓び”を具現するだけでなく、使い勝手も飛躍的に高めた新型1シリーズ。BMWファンならずとも、要注目のモデルといえるでしょう。
(文/増谷茂樹 写真/ビー・エム・ダブリュー)
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